店舗やネット通販で見かけるクレジットカードのロゴ、客の無意識のうちに購入金額に影響?
クレジットカードは、現金が手元に十分にないときや海外で現地通貨を持っていないときでも、買い物などができる利便性の高い決済手段です。現金払いで買い物するときは財布に入っている現金を意識しながら買い物しますが、カード払いで買い物するときはより大きな金額(預金額など)を意識しながら買い物するので、消費者行動は両者で異なってきます。このため、クレジットカードの使用に関する研究は古くから行われてきています。
クレジットカードが使用可能な店では、入り口付近にカード会社のロゴを提示していることが多く、消費者は、入店する前にカード払いを前提とした買い物をするかどうかを決めることができます。消費者行動研究では、このロゴがもたらす消費者行動への影響を「クレジットカード効果(credit card effect)」と呼び、研究対象にしてきました。今回はこの効果に着目したいと思います。
クレジットカード効果とは
クレジットカード効果とは、フェインバーグというマーケティング研究者が1986年に提唱したもので、カード会社のロゴが近くにあるだけで、商品に対する消費者の支払意思額(どのくらい支払いたいか)が上昇するという現象のことをいいます【註1】。フェインバーグはまず、この効果を確認するために、地元のレストランでチップ額を調べる調査を行い、現金よりもクレジットカードで支払いをした顧客のほうがチップ額は多かったことを明らかにしました。平均チップ率は、カード払いでは飲食代の17%、現金払いでは15%でした。
ただし、この結果には同伴者や人目などが影響した可能性があるので、次に実験を行っています。実験では、被験者に洋服、セーター、テントなど7つの商品の写真を見せ、それらの支払意思額を回答してもらいました。このとき、商品写真が掲載された冊子が置かれたテーブルの左上隅にMastercardのロゴをつけた状況とつけない状況のどちらかに被験者を割り当てました。その結果、支払意思額はすべての商品において、ロゴのある状況のほうがない状況に比べて高くなりました。また、別の実験では支払意思額を決めるまでの時間を測定しており、12商品の内、10商品において、ロゴのある状況のほうがない状況よりも意思決定時間が短くなったことを明らかにしています。カード会社のロゴの存在は、出費の可能性や出費額を高めると同時に、出費の意思決定時間を短縮させる効果があることになります。