ビジネスジャーナル > ライフニュース > クレカのロゴ、購入金額に影響?  > 3ページ目
NEW
白井美由里「消費者行動のインサイト」

店舗やネット通販で見かけるクレジットカードのロゴ、客の無意識のうちに購入金額に影響?

文=白井美由里/慶應義塾大学商学部教授

 実験では「1000ドルの爆買い懸賞に当選」「クリスマスシーズン目前」といった状況を被験者に想定してもらい、高額の買い物を意識させましたが、7つの商品に対する支払意思額の合計値は、高額の買い物意識の有無、ならびにVISAのロゴの有無の影響を受けないという結果になりました。したがって、クレジットカード効果は凶器効果でも説明できないことになります。

 ほかに可能性のある説明として、クレジットカードは消費者を出費抑制から解放し、より多く支払えるように感じさせてしまうことを挙げていますが、これは検証していません。

ネガティブなクレジットカード効果

 クレジット効果は多くの研究者の注意を引き、その再現性が検証されてきましたが、再現できた研究もあればできなかった研究もあり、結果はミックスしています【註2、註3】。

 他方で、カード会社のロゴが出費を抑制するというネガティブな効果を示したライらの研究もあります【註3】。ライらは、実験に紙ベースとパソコンの2つの方法を採用し、12の商品の支払意思額を測定しました。紙ベースの実験ではVISAとMastercardのロゴをカタログの置かれたテーブルの左上隅に、パソコンを用いた実験では4社のロゴを画面の左下隅に示しました。その結果、紙ベースの実験では全商品、パソコンを用いた実験では10商品において、ロゴを示したほうが示さなかった場合よりも商品の支払意思額が低くなったのです。また、ロゴを示した状況では、カードの使用経験がない被験者のほうがある被験者よりも支払意思額が低くなったことから、未経験者はカードに対する態度が否定的なため、出費の抑制効果が働いたと説明しています。実際に使用し、メリットとデメリットのどちらをより強く感じるかによって変わる可能性があります。

 以上見てきたように、カード会社のロゴは、消費者の出費に対する判断に影響を与える手がかりとなります。そのメカニズムはまだ解明されていませんが、購買意欲が高いときには出費を促進し、低いときには抑制すると考えられます。売り手は、カタログやネットショップで、消費マインドが上向きのときにはロゴの掲示を増やし、下向きのときは減らすなど露出頻度を変えると、ポジティブなクレジットカード効果を生み出せる可能性が示唆されています。
(文=白井美由里/慶應義塾大学商学部教授) 

参考文献
【註1】Feinberg, R. A. (1986), “Credit Cards as Spending Facilitating Stimuli: A Conditioning Interpretation,” Journal of Consumer Research, 13 (3), pp. 348-356.
【註2】Shimp, T. A. and M. P. Moody (2000), “In Search of a Theoretical Explanation for the Credit Card Effect,” Journal of Business Research, 48 (1), pp. 17-23.
【註3】Lie, C., M. Hunt, H. L. Peters, B. Veliu and D. Harper (2010), “The “Negative Credit Card Effect: Credit Cards as Spending-limiting Stimuli in New Zealand,” The Psychological Record, 60, pp. 399-412.

白井美由里/慶應義塾大学商学部教授

白井美由里/慶應義塾大学商学部教授

学部
カリフォルニア大学サンタクルーズ校 1987年卒業
大学院
明治大学大学院経営学研究科
1993年 経営学修士
東京大学大学院経済学研究科
1998年 単位取得退学
2004年 博士(経済学)
慶応義塾大学 教員紹介 白井美由里 教授

店舗やネット通販で見かけるクレジットカードのロゴ、客の無意識のうちに購入金額に影響?のページです。ビジネスジャーナルは、ライフ、, , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!