店舗やネット通販で見かけるクレジットカードのロゴ、客の無意識のうちに購入金額に影響?
クレジットカード効果のメカニズムについて
クレジットカード効果を発見したフェインバーグは、この効果のメカニズムについて、次のように説明しました。買い物(出費)はモノの獲得であり、消費への期待からポジティブな感情を喚起します。こうした買い物をクレジットカード払いで繰り返すと、やがてカード会社のロゴを見ただけで、同様のポジティブな感情が生じるようになり、出費が促進されるようになるというものです。これは、「古典的条件づけ(classical conditioning)」と呼ばれる現象です。
ただし、のちにシンプとムーディが、クレジットカード効果は古典的条件づけでは説明できないことを実証しています【註2】。彼らの古典的条件づけの考え方は、クレジットカードにはすでに消費者の購買意欲を喚起させる条件づけが形成されており、そのカードと一緒に商品を観察させることによって、商品のみからも購買意欲が喚起されるようになるというものです。
実験では、商品カタログを見るテーブルと支払意思額を決定するテーブルを分け、ロゴを両テーブルで示す状況、カタログのあるテーブルのみに示す状況、およびどちらにも示さない状況のいずれかに被験者を割り当て、7つの商品に対する支払意思額を測定しました。ロゴはVISAで、ロゴを示す状況では、フレームをつけたVISA広告をテーブルの上に吊るすとともに、プラスチックのVISAスタンドを机の左上隅に置きました。
分析では、7つの商品に対する支払意思額の合計値を比較しており、その値は、ロゴを両テーブルで示した状況が最も高く、カタログのあるテーブルのみに示した状況が最も低くなりました。もしも古典的条件づけが生じたとすれば、カタログのあるテーブルのみに示した状況、すなわちロゴなしで支払意思額を決定する状況でも支払意思額は高くなるはずですが、そうなりませんでした。商品の好ましさも3つの状況で変わらなかったので、古典的条件づけでは説明できないことになります。
彼らはまた、「凶器効果(weapons effect)」で説明できるかどうかも検証しています。凶器効果は、凶器があるだけで、もともと攻撃的な人の攻撃的な行動が強化されることを説明する理論ですが、これをクレジットカード効果に当てはめると、カード会社のロゴがあるだけで、もともと買い物好きな消費者の出費額が増加するということになります。