「◯×カードありますか?」
店舗で買い物をすると、会計の際に必ずといっていいほど店員から聞かれる言葉だ。
コンビニエンスストア、家電量販店、ファストフード、カフェなどでは、もはや代金の一部をポイントで還元するのが当たり前となっている。簡単な手続きで持つことができ、ポイント還元などのメリットを得られるため、ポイントカードを持っている人は多いはずだ。
しかし、ファイナンシャルプランナーで税理士の犬山忠宏氏は、「ポイントをためることに執着し過ぎると、結局は消費者が損をする」と指摘する。
ポイントカードは消費者に無駄遣いさせる仕組み
まず、ポイントカードについて整理しておこう。加盟店が多く使い勝手のいい共通ポイントとして、主に次の3つが挙げられる。カルチュア・コンビニエンス・クラブの「Tポイント」、三菱商事系のロイヤリティマーケティングの「Ponta(ポンタ)」、楽天の「楽天スーパーポイント」だ。会員数はそれぞれ、約6300万人、約8000万人、約9000万人となっている。
また、矢野経済研究所が2016年9月に発表した調査結果によると、15年度の国内ポイントサービス市場規模(ポイント発行額ベース)は1兆4440億円で、20年度には2兆300億円に達すると予測されている。消費者がポイントカードを利用する機会は、今後ますます多くなるだろう。
ところが、多くの人が利用するポイントカードには、企業側による“巧妙な罠”が仕掛けられているという。
「企業側がポイントカードを導入する目的は『顧客の囲い込み』です。ポイントカードというのは、自社グループ内で継続的にお金を使ってもらうための販促ツール。同時に、他社との価格差を消費者に意識させずにリピーターになってもらうためのツールなのです」(犬山氏)
買い物で重要なのは、商品の質と価格だ。以前なら、店舗で何かを購入する際には可能な限り他店と価格を比べていたはずである。しかし、ポイントをためて「得した気分」になっていると、徐々に「どこが安いか」という価格の比較を行わなくなる。
つまり、「より安い価格で買うこと」よりも「ポイントをためること」を優先してしまい、思考停止状態に陥ってしまうのだ。
また、ポイントカードには、「ポイントをためたい」という心理を利用して「消費者の無駄使いを誘発する」という恐ろしい側面もある。
「たとえば、『◯◯円以上お買上げのお客様はポイント2倍』『ポイント3倍デー』『対象の商品はポイント5倍』というように、期間や商品が限定されるかたちでポイント還元率が高くなると、購買欲をあおられて余計な買い物をしがちです。
でも、その商品はもともと不必要なものだったはず。それがトイレットペーパーやゴミ袋など、必ず使用する日用品だったとしても同じ。大量の在庫を持つことは、ビジネス的な感覚でいえば明らかに『無駄』なのです」(同)
不必要なものを保管すると余計なコストがかかり、モノによっては時間経過による品質の劣化で使い物にならなくなるかもしれない。「ポイント還元」という言葉に釣られて余分な買い物をするのは、結局のところ損なのだ。