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バイクのヤマハが赤字企業を次々と買収している…その“壮大な野望”

文=編集部
バイクのヤマハが赤字企業を次々と買収している…その“壮大な野望”の画像1ヤマハ発動機本社(「Wikipedia」より)

 ヤマハ発動機は二輪車、マリンに次ぐ第3の柱としてロボティクス事業を強化する。

 7月をメドに東証1部上場の半導体製造装置メーカーの新川、同業で2部上場のアピックヤマダを傘下に収める。成長分野のロボティクス事業で2社の技術を取り込むのが狙いだ。

 ヤマハ発動機は新川が実施する第三者割当増資を100億円引き受け、6月下旬に子会社にする。新川はアピックヤマダの株式公開買い付け(TOB)を行い、完全子会社にする。新川はヤマハ発動機から調達した資金を、構造改革のほかアピックヤマダの買収資金に充てる。新川は会社分割を実施して新会社に事業を移し、持ち株会社に移行する。

 新川が7月1日に設立する持ち株会社の下に、事業新会社の新川とアピックヤマダが入る。ヤマハ発動機は新川の持ち株会社の株式56.63%を保有する。アピックヤマダは上場廃止になるが、新川の上場は持ち株会社が引き継ぐ。

 新川はIC(集積回路)チップと電子回路を接続する結線装置が強み。アピックヤマダはチップを樹脂で覆う装置の大手。ヤマハ発動機は電子部品を基板に取り付ける装置を製造している。半導体の製造から基板への取り付けまで一連の工程を自前で整備できる体制を築き、シェアの拡大を目指すという。

買収する上場2社は赤字が常態化

 半導体製造装置の市場は、スマートフォン(スマホ)の販売増やデータセンターの需要の拡大の恩恵を受けている。とはいえ、スマホ市場は飽和状態。米中貿易戦争の激化から、半導体メーカーが設備投資を控える傾向が強まり、製造装置メーカーには逆風が吹く。

 新川の2019年3月期の連結決算の売上高は115億円と、前期比24%減の大幅な減収。営業損益段階で29億円の赤字、最終損益は31億円の赤字となる見込み。

 アピックヤマダの19年3月期の連結決算の売上高は、前期比21%減の100億円と大幅に落ち込む。営業損益は4億4000万円の赤字、最終損益は4億6000万円の赤字が見込まれている。

 常態的に赤字が続く新川とアピックヤマダは、構造改革が必須だ。新川は09年3月期から19年3月期(見込み)まで、17年3月期を除いて営業赤字を計上している。アピックヤマダも13年3月期から19年3月期(見込み)の7期のうち、営業黒字だったのは3期だけだ。事業拠点は当面、浜松市と東京都武蔵村山市、長野県千曲市などに分散したまま。こう見てくると、3社統合のハードルは高そうだ。ヤマハ発動機には、どんな秘策があるのか。

ヤマハ発動機の新中期経営計画の柱はロボティクス

 ヤマハ発動機は18年12月、21年度(21年12月期)を最終年度とする新中期経営計画を発表した。売上高2兆円、営業利益1800億円を目標に掲げる。2兆円の壁に再度、挑むことになるわけだ。

 日高祥博社長は「2030年を見据え、既存の技術と新技術の融合を進める。必要であれば協業やM&A(合併・買収)を積極的に行う」としており、新規事業に積極的に資金を投じる方針を明らかにした。

 ヤマハ発動機の19年12月期の連結決算の売上高は前期比1.6%増の1兆7000億円と増収を見込むが、営業利益は5.5%減の1330億円、純利益は9.0%減の850億円と2期連続で減益となる見通し。

 19年12月期は中期経営計画の初年度ということもあり、日高氏は「できれば増収増益の計画を立てたかった」としながらも、「やはり足元のリスクを織り込む必要がある。為替が悪く(円高)なっても、米中のリスクがもっと増大しても最低限、上記の数字を死守する」と強調した。

 ヤマハ発動機のメイン事業は世界第2位の二輪車である。19年12月期の売上高は微増の1兆1290億円、営業利益は9%増の530億円の見込み。ヤマハの二輪車は東南アジア市場で強みを持つ。

 船外機の分野で世界首位のマリン事業の売上高は微減の3380億円、営業利益は11%減の540億円の見通しだ。

 ロボティクス事業の売上高は8%増の810億円、営業利益は7%減の155億円を予想。ロボティクス事業の連結売上高に占める割合は5%にも満たないが、営業利益率は19%を超える。収益面での寄与が大きいことからロボティクスを二輪車、マリンに次ぐ第3の柱に育てることにした。

 ロボティクス事業強化の第1弾が新川、アピックヤマダの買収による技術力の強化。第2弾は国内で高いシェアを持つ農業用無人ヘリコプター事業の育成である。

 ヤマハ発動機は3月8日、測量機器大手のトプコン、航空測量の国際航業、農業支援システムのウォーターセルの3社と提携すると発表した。ドローンや産業用無人ヘリコプターを使った農薬散布などの作業をスマホやパソコンで管理できるようにし、20年の本格稼働を目指す。スマホを使ったスマート農業でトップシェアを狙う。
(文=編集部)

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