
ヤマハ発動機は二輪車、マリンに次ぐ第3の柱としてロボティクス事業を強化する。
7月をメドに東証1部上場の半導体製造装置メーカーの新川、同業で2部上場のアピックヤマダを傘下に収める。成長分野のロボティクス事業で2社の技術を取り込むのが狙いだ。
ヤマハ発動機は新川が実施する第三者割当増資を100億円引き受け、6月下旬に子会社にする。新川はアピックヤマダの株式公開買い付け(TOB)を行い、完全子会社にする。新川はヤマハ発動機から調達した資金を、構造改革のほかアピックヤマダの買収資金に充てる。新川は会社分割を実施して新会社に事業を移し、持ち株会社に移行する。
新川が7月1日に設立する持ち株会社の下に、事業新会社の新川とアピックヤマダが入る。ヤマハ発動機は新川の持ち株会社の株式56.63%を保有する。アピックヤマダは上場廃止になるが、新川の上場は持ち株会社が引き継ぐ。
新川はIC(集積回路)チップと電子回路を接続する結線装置が強み。アピックヤマダはチップを樹脂で覆う装置の大手。ヤマハ発動機は電子部品を基板に取り付ける装置を製造している。半導体の製造から基板への取り付けまで一連の工程を自前で整備できる体制を築き、シェアの拡大を目指すという。
買収する上場2社は赤字が常態化
半導体製造装置の市場は、スマートフォン(スマホ)の販売増やデータセンターの需要の拡大の恩恵を受けている。とはいえ、スマホ市場は飽和状態。米中貿易戦争の激化から、半導体メーカーが設備投資を控える傾向が強まり、製造装置メーカーには逆風が吹く。
新川の2019年3月期の連結決算の売上高は115億円と、前期比24%減の大幅な減収。営業損益段階で29億円の赤字、最終損益は31億円の赤字となる見込み。
アピックヤマダの19年3月期の連結決算の売上高は、前期比21%減の100億円と大幅に落ち込む。営業損益は4億4000万円の赤字、最終損益は4億6000万円の赤字が見込まれている。
常態的に赤字が続く新川とアピックヤマダは、構造改革が必須だ。新川は09年3月期から19年3月期(見込み)まで、17年3月期を除いて営業赤字を計上している。アピックヤマダも13年3月期から19年3月期(見込み)の7期のうち、営業黒字だったのは3期だけだ。事業拠点は当面、浜松市と東京都武蔵村山市、長野県千曲市などに分散したまま。こう見てくると、3社統合のハードルは高そうだ。ヤマハ発動機には、どんな秘策があるのか。