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オートレース初優勝の森且行、同僚が語る本当のスゴさ…自腹の競技事情&高身長のハンデ

文=小川隆行/フリーライター
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日本選手権の表彰式で優勝杯を持つ森且行選手(写真:日刊スポーツ/アフロ)

 11月3日のSG第52回日本選手権オートレースで、森且行選手が初優勝を飾った。優勝後、森選手はテレビのインタビューで次のように語っていた。

「SG初優勝の最年長記録が39歳で、40歳を過ぎたころから(SG優勝は)無理かな、と思っていたんですけど、とにかく約束だけは守りたいと思っていました。あきらめなければチャンスが来ると」

 SMAPを脱退してオートレーサーに転身してから23年が経過。デビュー当初は、レース場にやってくる女性ファンも多かった。近年はコンスタントに上位クラスを維持していたものの、SG(スーパーグレード。競馬でいうG1レース)にはなかなか手が届かず、オートファンの間では「決勝に乗っても3着が精一杯」とみられていた。しかし、神はがんばる男を見捨てなかった。

同僚オートレーサーが語る森且行のスゴさ

「森君は、とにかくエンジンにお金をかけています。部品の交換も躊躇しませんし、練習も人一倍やっています。長いことモチベーションを保つ精神力は、本当にすごいと感じます」

 森選手と同じ川口所属の牧野貴博選手は、このように評した。

 オートレースという競技では、バイクはもちろん部品代もすべて選手の自費となる。4年前に船橋オートレース場が廃止されたのも、バブル期~2000年代に比べて車券の売り上げが落ちたためで、必然的にレースの賞金も安くなっている。そのため、多くの選手が以前ほどパーツにお金をかけにくくなっている。

 そんな状況にもかかわらず、「納得がいかなければとことんこだわる」森選手の姿勢は、ひとつの目標に向かう人たちの教訓になるような気もする。

「森君は身長が177センチありますが、背が高いのはオートレーサーにとって不利となります。風の抵抗を受けやすいですし、身長があると体重も重くなるのでスピードが遅くなります」

 牧野選手がこう語る通り、高身長も森選手の飛躍を阻んでいた一因だったのかもしれない。そんなハンデを覆して、幼き頃からの夢を実現させた森選手の情熱に、多くの人が感動したのではないだろうか。「あきらめなければ夢は叶う」のである。

「SMAPを辞めてまでオートレーサーを目指した森君は、本当にすごいと思います」と、牧野選手はしみじみ語ってくれた。

女子選手も増えているオートレース最大の魅力

 オートレース発祥の地・千葉県船橋市に生まれ育った私は、森選手の優勝が何よりもうれしかった。大好きなオートレースが地上波テレビのニュースで流れるなど、何年ぶりのことだっただろう。同じ思いのオートレース関係者も少なくなかったと感じる。

 船橋オートの廃止問題が浮上した4年前。若い頃から船橋オートに通い続けていた私は、廃止を阻止するべく、当時必死に存続を願っていた永井大介選手を取材したり、船橋市議会議員に立候補、当選を果たした現役オートレーサーの梅内幹雄選手の声を聞いた。残念ながら廃止を阻止することはできなかったが、今でも時間の許す限り、川口オートレース場や船橋競馬場にある場外車券売り場に足を運んでいる。

 時速100キロを超えるバイクを駆使する選手たちの抜きつ抜かれつの攻防はもちろん、そこにお金を賭けられるのがオートレース最大の魅力である。

 穴党の私は、100円200円で大穴を狙い続けている。今回の日本選手権は所用で車券を買えなかったが、3年前の大みそかに開催されたスーパースター選手権では28万円というビッグなお年玉を手にできた。

 迫力のあるレースを観ながら一攫千金が狙える。加えて、選手の成長を目にできる。これぞ、私が思うオートレース最大の魅力である。今は女子レーサーも増え、ナイター開催やミッドナイト開催も目にできるなど、おもしろさの幅も増している。

 最後に。11月27日から12月14日まで、そごう川口店にて「オートレーサー森且行写真展」が開催されている。森選手の訓練生時代からの道のりはもちろん、オートレース用のバイクも展示されている。入場無料なので、興味が湧いた方は足を運んでみてはいかがだろうか。

(文=小川隆行/フリーライター)

小川隆行/フリーライター

小川隆行/フリーライター

ライター・編集者。1966年生まれ。中山競馬場の近くで生まれ育ち、競馬場から徒歩5分の高校時代に競馬に目覚めて馬券買いを始め、ダイナカールに恋をする。拓殖大学卒業後、競馬雑誌編集者になり数多くの調教師、騎手、厩舎関係者、競馬予想家に取材を重ねてきた。主な著書に『アイドルホース列伝 1970ー2021』(星海社)などがある。

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