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上昌広「絶望の医療 希望の医療」

外科医、近い将来に大余剰で大半が失業…がん患者が急速に減少し始めた

文=上昌広/特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長
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「Gettyimages」より

 

「早晩、外科医の大部分は失業する。外科医を目指すなら、日本にいたらダメだ」

 外科を志す医学生や若手医師から相談を受けると、このようにアドバイスすることにしている。これは世間一般の感覚とは正反対だろう。我が国では外科医志望者が減少し、外科医の不足が深刻な問題となっているからだ。

 その理由として挙げられるのは、医学生や若手医師が過酷な勤務を嫌がることだ。昨年、不正入試が露顕した東京医科大学の幹部はメディアの取材に答え、「体力的にきつく、女性は外科医にならないし、僻地医療に行きたがらない。入試を普通にやると女性が多くなってしまう。単なる性差別の問題ではなく、日本の医学の将来に関わる問題だ」とコメントしている。

外科医、近い将来に大余剰で大半が失業…がん患者が急速に減少し始めたの画像2 掛谷英紀・筑波大学システム情報系准教授は、自著の中で「今後、数十年のうちに、日本では外科医の数が半数近くまで落ち込むことが見込まれています。なぜ外科医が劇的に減るのか。ハッキリと数字で示せる答えは『女医の増加』です。女医が増え続けている一方、外科を選ぶ女医は極めて少ないため、診療科に偏りが生じているのです」と記している。

 私は、このような主張に賛同できない。外科医志望者の減少をこのように論じている限り、問題は解決しない。私は外科医志望者の減少は、社会構造の変化を受けた合理的な対応だと思っている。本稿では、この問題について解説しよう。

 まずは、図1をご覧いただきたい。国立社会保障・人口問題研究所が発表したデータだ。年齢階級別の死亡者数の将来推計であり、医療需要を反映すると考えていい。

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図1

 

 一見して明らかなように、今後、わが国では死亡者数は急増する。ピークは2039年だ。その後、緩やかに減少し、この図には示されていないが、死亡者数が2010年のレベルに戻るのは2100年頃だ。厚生労働省は2028年には医師数は充足し、その後は過剰となり、問題は地域偏在と主張しているが、この主張は額面通りには受け取れない。

 医師不足問題に関して、厚労省は「嘘」をつき続けてきた。高度成長期から一貫して医師過剰論を唱え続けている。医師増加を嫌がる日本医師会の「圧力」など、厚労省にも同情の余地はあるが、彼らが何を言っても、もはや信頼されない。医療の将来推計は、厚労省や彼らの主張をそのまま紹介する全国紙の記事を鵜呑みにするのではなく、自分の頭で考えねばならない。外科医不足対策も同様だ。

上昌広/特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長

上昌広/特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長

1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
医療ガバナンス研究所

Twitter:@KamiMasahiro

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