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「加谷珪一の知っとくエコノミー論」

米国株、近く大暴落の可能性…米国からアジア経済圏等に資金移動か

文=加谷珪一/経済評論家
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貿易戦争の悪影響は、いずれ米国にも波及してくるが……

 多くの人が、中長期的な景気のスローダウンと、それに伴う株価下落を予想しているにもかかわらず、あえて利下げを行って相場を延命し、全員がそのババ抜きゲームに参加しているという図式だが、当然のことながら、このゲームは長くは続かない。どこかでシナリオは崩れる可能性が高いと考えられるが、その時、米国株はどう推移するのだろうか。

 一部の市場関係者は、現在の米国株は完全にバブルであり、近い将来、大幅な下落に見舞われると予想している。日本国内でもトランプ氏の経済運営について快く思わない人たちを中心に、株価下落が近いとする見方は多い。だが、これはあくまでも願望であって現実とは限らない。米国株の動向を左右するのは、やはり米中貿易交渉の行く末だろう。

 これまで米中貿易戦争は米国に有利な状況が続いてきた。米国は中国から年間約58兆円の製品を輸入しているが、中国への輸出は13兆円にすぎない。貿易収支は45兆円の赤字と、中国が圧倒的に輸出超過の状況であり、これにブレーキがかかれば、最初に打撃を受けるのは当然のことながら中国である。

 中国の消費市場は年々拡大しているものの、輸出産業が行う設備投資への依存度は高い。米国による関税発動で中国の設備投資は急減しており、景気は低迷している。

 このまま貿易戦争を続けた場合、やがて米国経済も悪化することになるが、米国企業が東南アジアなどから代替製品を調達できれば話は変わってくる。中国からの輸入が、東南アジアの輸入に切り替わるだけなので、マクロ的な影響は小さい。

 現実には、中国ほどの生産力を持つ国は他にはないので、すべての製品を切り換えることは不可能だが、実際にやってみないとわからない部分も多いので、結果を事前に予想するのは難しい。場合によっては、現在、イメージされているほどには米国経済が落ち込まない可能性についても考慮しておいたほうがよいだろう。

株価が下落した時には、もはや米国債は買えない

 しかしながら、リーマンショックを起点にすると、米国の好景気は11年目に突入しており、史上最も長い好景気のひとつとなっている。米中貿易戦争の有無にかかわらず、そろそろリセッション(景気後退)に入ってもおかしくないというのは、多くの人にとって共通認識である。

 現時点においてもFRBは利下げに積極的であることを考えると、もし米国経済にスローダウンの兆しが見えた場合には、さらに利下げを進めることになるだろう。これが効果を発揮すれば急激な景気の悪化は防げるかもしれないが、問題はその後である。

加谷珪一/経済評論家

加谷珪一/経済評論家

1969年宮城県仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に著書に『貧乏国ニッポン』(幻冬舎新書)、『億万長者への道は経済学に書いてある』(クロスメディア・パブリッシング)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)、『ポスト新産業革命』(CCCメディアハウス)、『教養として身につけたい戦争と経済の本質』(総合法令出版)、『中国経済の属国ニッポン、マスコミが言わない隣国の支配戦略』(幻冬舎新書)などがある。
加谷珪一公式サイト

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