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「相馬勝の国際情勢インテリジェンス」

中国政府がひた隠す経済&軍事“同時弱体化”…大規模軍事パレードに滲む習近平の焦り

文=相馬勝/ジャーナリスト
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中華人民共和国 建国70周年(写真:AP/アフロ)

 中国の首都・北京では1日、建国70周年を祝う軍事パレードが盛大に行われ、兵士ら約1万5000人と航空機160機あまり、戦車など580台が参加した。習近平国家主席にとって今回の軍事パレードは3回目だが、同国としては史上最大規模となった。習氏はジープに乗って閲兵し、大声を張り上げて演説。拳を振り上げたりするなどの熱演ぶりで、さぞかしご満悦のことだったろう。しかし、北京市民には極めて不評だったのは間違いない。

 パレードの舞台となった長安街は立ち入り禁止となり、周辺のコンビニエンスストアなどの商店やレストランは24時間以上の営業停止を命じられ、ホテルも長安街沿いの部屋は宿泊禁止の指示が出されるなど、商売上がったりだったからだ。

 しかも、パレード当日は国慶節(建国記念日)の大型連休の真っ最中だったこともあり、地方から大挙して観光客が押し寄せていたが、天安門広場周辺の立ち入り制限は1週間以上も前から行われており、地下鉄に乗るのも、広場や観光名所、公的な場所に入るのも厳しいセキュリティチェックを受けなければならなかった。

 その厳重ぶりについては、中国共産党機関紙「人民日報」傘下の国際問題専門紙「環球時報」の胡錫進編集長が中国版ツィッター「微博(ウェイボ)」上で苦言を呈し、「検査の範囲がとても広い。軍や党、政府の施設などを除いて、特殊でない場所でも検査をやり過ぎており、大きな疑問を抱いてしまう。これでは、多くの労力を浪費している。このような労力を社会に不満がある人々を慰めることに使えば効率的だ」と皮肉ったほどだ。

 さらに、張氏は「国慶節が近づくと、海外のインターネットの接続がますます難しくなり、これでは環球時報の編集作業にも影響が出てしまうほどだ」と述べるなど、当局による厳しいネット規制にも言及し、文句を垂れ流した。これを読んだ多くの読者がリツィートしたためか、張氏のつぶやきは2時間後に削除されてしまった。

 米政府系報道機関「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」によると、張氏は当局によるネット規制について、「(当局は)大衆を信じることが重要だ。中国社会に海外のネット空間を多く残してほしい。これは国益にも有益だ」と書き込み、当局のネット規制緩和と情報や表現の自由の重要性を強調したのだが、張氏が今後も環球時報の編集長を続けられるかどうかは極めて疑問といわざるを得ない。

相馬勝/ジャーナリスト

相馬勝/ジャーナリスト

1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。

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