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「相馬勝の国際情勢インテリジェンス」

中国政府がひた隠す経済&軍事“同時弱体化”…大規模軍事パレードに滲む習近平の焦り

文=相馬勝/ジャーナリスト

 このように中国では景気が減速している一方、物価は上昇している。アフリカ豚コレラのまん延で豚肉が高騰したからで、消費者物価指数(CPI)の上昇幅は6年ぶりの大きさだという。今年8月のCPIは前年同月比2.8%上昇し、13年11月以来の高水準で推移。これは豚肉の小売価格が47%上昇したのが原因だ。国家統計局によると、豚肉の卸売価格は値上がり幅がさらに大きく、8月末は1年前の約2倍と急上昇している。豚コレラ蔓延の影響以外に、米中貿易戦争で米国から豚肉の供給が途絶えていることも原因の1つとみられる。

「張子の虎」

 現在の中国経済の低迷は、やはり米中貿易戦争によるところが大きいといわざるを得ないだろう。実は、習氏が在任中3度目の軍事パレードを行ったのも、米国の軍事力に対抗する目的があったとみられる。

 今回のパレードには、1基に10もの核弾頭を装填し、10カ所の標的を狙うことができる新兵器の「DF-41(東風41)」や、世界で初めて公開された極超音速滑空ミサイル「DF-17(東風-17)」、さらに無人攻撃機や無人偵察機なども初めて明らかにされており、筆者も中国軍の兵器の多様さには正直驚いたが、兵器や兵隊の数と実戦における軍隊の強さは別問題である。

 ハーバード大学アジアセンター・シニアフェローで前・陸上自衛隊東部方面総監の渡部悦和氏は10月4日付「JBpress」記事で「結論的に言えば、中国の軍事パレードは壮大な無駄使いだ」としたうえで、「軍事パレードを頻繁に行う軍隊は精強ではない。実戦的訓練を重視する米軍が大規模な軍事パレードを実施しない理由がここにある」と指摘している。

 習氏が最高指導者に就任してから3度も大規模な軍事パレードを実施するのは、米軍を強く意識して中国軍を強く見せるためのデモンストレーションにすぎない。習氏が敬愛する毛沢東元主席は1946年、米国の記者アンナ・ルイズ・ストロングとの対談で、中国が当時、まだ開発していなかった原子爆弾について「張子の虎」と断じたが、今、毛沢東が生きていれば、習氏が軍事パレードで公開した多種多彩な軍事兵器についても、「長い目で見れば本当に強いのは人民の力だ。兵器は所詮、張子の虎だ」と軽くいなしていたかもしれない。

(文=相馬勝/ジャーナリスト)

相馬勝/ジャーナリスト

相馬勝/ジャーナリスト

1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。

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