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あるタクシー運転手が語る、“台風直撃”ルポ【前編】

タクシー運転手が見た台風15号の混乱…「成田空港へ行かなければ」と叫んだ台湾人観光客

文=渡瀬基樹
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2時間以上をかけて都内から成田空港へ

「ここで思い出したのが、北千葉道路(国道464号)です。自動車雑誌の編集者である友人が以前、『高速道路のようにスムーズ』『鎌ケ谷市までは不便だが、成田方面は開通した』と言っていたのです。通ったことはなかったのですが、地図を見れば確かに直線的に成田へ向かえます。幸い、鎌ケ谷までは何度か通ったことがあり、土地勘もありました。

 市川市内と鎌ケ谷市内は若干の渋滞はあったものの、北千葉道路に入ってからはガラガラ。成田市内も混雑していましたが、裏道を知っていたため13時30分には到着することができました。通常時よりははるかに時間がかかりましたが、最善は尽くせたと思います。お客様にも喜んでいただけました。

 道中でお客様から首都圏の交通状況を教えていただいていたので、成田空港の状況はある程度把握していました。JRの成田線は頻繁に止まるので仕方ないと思いましたが、京成線が動く見込みがなく、バスも運行していないのは厳しい状況だと思いましたね。成田空港はとにかく静かでした。普段はバスで混雑している空港に1台もバスがいない様子は異様でした。

 来る途中ですれ違う、東京方面へ向かうのタクシーが、のきなみ「実車」(客を乗せている状態)だったため、都内へ行きたい人が多いのかなという予想はありました。普段は、ほとんどが『回送』なんです」

成田からのタクシーがのきなみ「実車」

 タクシーには営業区域というものがあり、発地と着地のいずれも営業区域外である場合は、客を乗せてはいけない決まりがある。このドライバー氏の会社は「特別区・武三交通圏」という営業区域で、東京23区か武蔵野市、三鷹市を出発または到着する場合以外は乗せることができない。

 成田まで乗せた台湾の乗客は、東京23区内の御徒町が出発地なので、乗せることができる。しかし成田からは、東京23区・武蔵野市・三鷹市へ行く人以外は乗せられない。しかも、羽田空港には「京浜交通圏」(神奈川県の横浜市・川崎市・横須賀市・三浦市)向けのタクシー乗り場が存在するが、成田空港から都内へは料金が高額なためタクシー需要が少なく、「特別区・武三交通圏」向け乗り場が存在しないので、そもそもタクシー乗り場にはつけられない。

「通常時は、運良く迎車で東京方面へ向かう方の無線呼び出しがない限り、『回送』で都内に戻ることになります。そんな幸運は会社全体で月に1度あるかないかというレベルですので、『実車』の多さに驚いたわけです。

 交通手段を失って困っている方を助けたい気持ち、そして帰路も長距離客を獲得したいという下心もあって、お客様を降ろしたあと時間をかけて準備をしていましたが、出発レーンでタクシーに手を上げる人は見当たりません」

9月9日の売り上げは11万円

 しかたなく発車しましたが、無線呼び出しされない『回送』ではなく、『空車』で発車しました。あわよくばという気持ちがありましたので。空港を出て、成田市街へ向かおうとした時、貨物地区で手が上がりました。こちらも大きな荷物を抱えた方で、50歳くらいの欧米の男性でした。幸運でしたが、お客様にとっても幸運だったようです。

 品川のホテルに行きたいということで、営業区域の問題もOKでした。なぜ貨物地区にいらっしゃったのかと疑問に思いましたが、お話を聞いて納得しました。パイロットの方だったんです。電車が止まって困っているのは、空港で働いている方も同じだったようです。

ルートは往路とほとんど同じで、北千葉道路を進み、鎌ケ谷から京葉道路の原木ICへ向かい、首都高速で品川まで。行きは2時間ちょっとで到着しましたが、帰路は一般道の渋滞が激しく、3時間ほどかかりました。それでもお客様には非常に感謝されました。

私の場合、普段の売上は平均で7万円くらいですが、この日は11万円を超えました。そのうち、成田への往路が2万5000円、復路が3万円。売上面でとても大きかったのは確かですが、非常時に公共交通としての使命を果たせたことも嬉しかったですね」

タクシー運転手が見た台風15号の混乱…「成田空港へ行かなければ」と叫んだ台湾人観光客の画像3
成田空港の貨物地区は、一般客が通ることはほとんどないため、閑散としているエリア。中央奥は旧管制塔。

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