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有馬賢治「日本を読み解くマーケティング・パースペクティブ」

自然災害、「顧客の利便性より休業を優先」が常識化か…計画運休の是非

解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=武松佑季

在庫の確保とリスク管理の難しさ

 だが、世論というのは現金なもの。被害がたいしたことがなければないで、大げさな企業対応に非難の声が上がることも考えられる。

「予測が外れた場合には、実施側は丁寧に説明をして、理解を求めていくことが必要です。災害対応に関して企業側は消費者の非難を恐れてはいけません。ビジネスとは先がどのように展開するのかがわからないところに投資をしていくものです。勝負をして大きな投資をすることも、リスクを回避して慎重になることも同じくらい重要な決断です。したがって、避けようがない天災等のリスクのために慎重な事業運営をするのは当然だと思います。どのような施策でも批判は出るものですから、それを恐れずに被害を拡大させないリスク・マネジメントが求められているといえるでしょう」(同)

 また、今回台風上陸前に大きく報道されていたのが、養生テープや保存食、飲料水を買い求める消費者の姿。一時的に需要が急激に上がって在庫不足になり、購入できなかった顧客も少なくなかった。

「通常営業時は、在庫をできる限り少なくして売れ残りのリスクを下げることが小売業の基本ですが、養生テープや非常食、水などの商品は、緊急対応が予想される時には通常業務の例にとらわれずに、ある程度多めの在庫を確保したほうがいいことが再確認されたはずです」(同)

 しかし、流通的に短期間で各小売店がしっかり在庫を確保できるものなのだろうか。

「多くの小売業は通常卸売業者から商品を購入しますが、卸売業者にも自社倉庫にプールされた流通在庫がありますし、さらに大元のメーカーにも在庫はあるはずです。したがって、小売店側から迅速に発注できれば、ある程度の物資は各小売店へ行き渡るようになると思います」(同)

 しかし、今回店頭ではモノ不足が相次いだ。

「トヨタは『かんばん方式』(ジャストインタイム生産システム)という各工程で必要なパーツを必要な分だけ供給して在庫をスリム化する生産方式を基本としていますが、1979年の日本坂トンネルでの火災事故後、一定量の在庫をストックするようになりました。また、阪神大震災や東日本大震災で流通がストップした際、多くの企業の工場でもその影響で操業できないことがありました。これらの経験からトヨタをはじめ多くの企業で工場での在庫の考え方が見直されています。今回の災害でも、メーカーや小売業を問わず企業が在庫について考えを改める機会になったのではないでしょうか」(同)

“雨降って地固まる”という言葉のとおり、気候変動の時代だからこそ災害から多くのリスク・マネジメントを企業も学ばなければならない時代になったようだ。

(解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=武松佑季)

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