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東京モーターショー2019を勝手に総括…入場者100万人への疑問と長すぎる待ち時間

文=萩原文博/自動車ライター
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東京モーターショー2019の会場となった東京ビッグサイト。

 第46回東京モーターショー2019の12日間の会期が終わり、11月4日に閉幕した。今回のモーターショーは、「OPEN FUTURE」をテーマに業界を超えたオールインダストリーが参加し、「クルマ・バイクのワクワクドキドキ」から「未来の暮らし」「未来の街」にまで領域を広げたのが特徴であった。来場者数は、豊田章男・日本自動車工業会会長が開催前に掲げた100万人の目標を超え、前回からは倍増に近い130万900人となった。このようなうれしいニュースが届き落ち着いたところで、この第46回東京モーターショー2019を総括してみたい。

世界的に変化するモーターショーの意味

 東京モーターショー自体の地盤沈下をよく耳にする。今回も、海外メーカーはメルセデス・ベンツをはじめ3メーカー5ブランドに留まった。しかし、これは東京モーターショーだけでなく、先だって行われたフランクフルトオートショーでも同じこと。ここに日本メーカーは出展していないし、年始に開催されるデトロイトモーターショーは会期をずらし音楽イベントとのコラボレーションとなるなど、そもそも世界的に、モーターショーの姿が変わりつつあるのだ。

 そういった側面を踏まえてみれば、今回の東京モーターショーは、一歩先を行く試みを行ったといえる。有料の展示場のほかに入場無料のスペースを作ったり、開催日の前半に500機のドローンを使用したショーを開催したりするなど、これまでのクルマ中心のショーからエンターテイメント性を重視したショーへの転換が図られていたのだ。

 その最も顕著な例が、トヨタ自動車のブースだろう。豊田章男社長が「1年以内に発売するクルマはブースに置きません!」と宣言したようにトヨタブースにはクルマの展示はなく、体験型のコンテンツが並び、まるでテーマパークのようだった。こういった斬新な試みが行われていたのが今回の大きな特徴のひとつだといえる。

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プレスカンファレンスでの豊田章男・トヨタ自動車社長。東京モーターショー主催者である日本自動車工業会の会長でもある。

キッザニアとのコラボで子どもは大喜び

 こうした点を踏まえた上で、今回のモーターショーで良かったところから触れていきたい。

 まず、前回のモーターショーでは小学生以下が無料となっていたのに対し、今回は高校生まで無料となったのは非常に良い試みだった。小学生を中心に、修学旅行で東京に来たと思われる高校生の姿も多く見られた。現在の子どもたちにとって、クルマはほぼ各家庭にあるものであり、まったく珍しいモノではないだろう。しかし、最新の技術などに触れてより興味をもってもらい、将来の自動車開発に携わってくれる人材が出てくることが期待できるからだ。

 そしてもうひとつ良かったポイントは、キッザニアとのコラボだ。これは、各自動車メーカーがそれぞれの特徴を出した職業ブースを用意し、それを子どもたちが体験できるというもの。ホンダのレーサーの一日体験、スバルのレースメカニックになってのタイヤ交換体験なども興味深かったが、なかでも秀逸だったのが、マツダの金型製作体験だ。

 マツダの特徴である「魂動デザイン」は曲線を多用したボディだが、その製作のためにはベースとなる金型の精度を上げなければならず、その仕上げには人間の技術が大きく影響している。マツダの金型製作体験ではこのことを身をもって知ることができ、実にマツダらしい職人気質が際立つコンテンツだった。またそれらの体験ブースの多くでは、小さい子どもやその家族のための優先エリアが設定されており、そうした工夫も来場者増に繋がったといえるだろう。

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マツダ市販車初のピュアEV(電気自動車)として話題を集めたMX-30。

シャトルバスの長い待ち時間

 それでは、改善すべきポイントだ。

 まず、2020年に開催される東京オリンピックの影響で東京ビッグサイトの東展示場が使用できないため、今回のモーターショーはビッグサイトの西・南展示場、そして約1.5km離れた青海展示場の2カ所に分かれて開催され、この2つの展示場を無料のシャトルバスで輸送することとなっていた。

 しかし、蓋を開けてみるとこのシャトルバスが乗車30分待ちというのはまだいいほう、長い時は1時間近く待つこともあった。開催後半にはバスが増車されたが、待ち時間はあまり改善はされなかった。また、このシャトルバスのルートも良くなかったように思われる。筆者も、実際にビッグサイトから青海展示場へ行く際にシャトルバスを利用してみたが、2回も右折するルートが設定されていた。しかし、ほかにも右折するクルマが多いとそれだけ時間が多くかかってしまう。ここは、最短距離でなくても左折のみで移動できるルートにすべきだったのではないか。

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東京モーターショー2019の日産ブース外観。EVクロスオーバーコンセプトモデルである「ニッサン アリア コンセプト」などが話題となった。

自動車メーカーとサプライヤーの分離で失われるもの

 自動車メーカーとサプライヤーのブースがキレイに分けられてしまった点も、あまりよくなった。南・西展示場の1階に自動車メーカー、4階にサプライヤーのブースが設置されていたのだが、これまでのモーターショーでは自動車メーカーとサプライヤーのブースは混在しており、現在の自動車業界のキーワードであるCASE(C:コネクテッド、A:自動運転、S:シェアリング、E:電動化)に関する最先端技術にも触れやすい構造になっていたが、今回はそれが難しかった。

 モーターショーというと、どうしても自動車メーカーにばかり注目が集まるが、本来こういった最先端の技術は、各サプライヤーが支えているものである。クルマとサプライヤーが同時に見られるブース設定のほうが、CASEの理解をより深めることができたと思う。

 そのサプライヤーのブースで最も興味を持ったのが、ブリヂストンブースに展示されていたサシムという素材。ブリヂストンが独自開発した世界初のハイブリッドポリマー素材で、今後どのように使用されていくのかは非常に興味深かった。

 その一方、サプライヤーブースにはコンパニオンとして現役のレースクィーンが数多くいて、そちら方面がお好きな向きにとっては、ゆっくりと写真撮影ができてよかったのではなかろうか。

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ブリヂストンブースで展示された新素材「サシム」。

公式入場者数に疑問あり?

 改善点の最後は、来場者130万900人の数字の“根拠”の問題である。これまでは、入場者数は毎日プレスルームで発表されていたのだが、今回はそれがまったくなかったのだ。

 当初は有料入場者数だけを発表するとプレスには伝わっていたのにもかかわらず、この数字は有料だけなのか、無料も含めてなのか、結局まったくわからない。しかも今回のモーターショーは、前述の通り展示場が2カ所に分かれていて、リストバンドさえはめていれば、入場者は行き来が可能であった。すなわち、計測の仕方によってはダブルカウントされていても不思議ではないように思われる。

 目標としていた100万人を超えたことは非常に喜ばしいところだが、その点、どうもグレーな部分があるように思われ、その喜びも半減といったところだ。こういった改善すべきポイントが、2年後のモーターショーではどのように解消されるのかにも注目したい。そして、次回も「モーターショー」という名称で開催されるのであれば、引き続き、クルマとその周辺技術が主役のショーとなることを祈りたいものである。

(文=萩原文博/自動車ライター)

萩原文博/モータージャーナリスト

萩原文博/モータージャーナリスト

モータージャーナリスト。1970年生まれ。10代後半で走り屋デビューを果たし、大学在学中に中古車雑誌編集部のアルバイトに加入し、中古車業界デビュー。1995年より編集部員として本格的に携わり、2006年からフリーで活動。中古車の流通、販売の造詣が深く、新車でも多くの広報車両に乗車するなど精力的に取材を行っている。

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