「ドラクエウォーク」が1カ月で800万DL達成…意外な強みで“30~40代男性キラー”に?
ダウンロードしたものの、数回使っただけで休眠状態だったり、アンインストールしてしまったりしたアプリがある人も多いはずだ。テレビCMなどでは「数百万ダウンロード突破!」と威勢のいい言葉を聞くが、実際にどんなアプリがどの性年代にどのくらい使われ続けているのか。
本連載では、ダウンロード数だけでは見えない「アプリの利用率」をモニターの利用動向から調べるサービス「App Ape」を提供しているフラーに、四半期ごとに人気アプリの実態について聞いている。
同社のオウンドメディア「App Ape Lab」編集長の日影耕造氏に、2019年第3四半期(7~9月)を中心にアプリの動向を聞いた。
800万DLを達成した「DQウォーク」
――19年7~9月期を象徴するアプリを教えてください。
日影耕造氏(以下、日影) 期の終わりになりますが、9月12日にリリースされた「ドラゴンクエストウォーク(以下、DQウォーク)」と、9月25日にリリースされた「マリオカートツアー」ですね。
――どちらも老舗ゲームメーカーによる、おなじみのビックタイトルですよね。「DQウォーク」はリリースから約1カ月後の10月16日に800万ダウンロードを記念した特別クエストを用意しています。「マリオカートツアー」については、公式発表ではなくアプリストアの調査会社SensorTowerによる推計値ですが、配信後1日で2000万ダウンロードを突破したと報じられていました。
どちらも「リセマラ」【※1】を何度もする人もいるでしょうから、プレイヤーの実数とは異なるでしょうけれど。
日影 図1が、「App Ape」による「DQウォーク」と「マリオカートツアー」の所持者数推移になります。19年9月からなので「推移」というほど長期間のデータではありませんが。なお、比較のため「DQウォーク」と同ジャンルの位置ゲームである、16年リリースの「ポケモンGO」も入れてみました。
――こうして見ると、初動は「ポケモンGO」が圧倒的ですね。「DQウォーク」も「マリオカートツアー」も、初動は「ポケモンGO」の3分の1以下ですね。
日影 ただ、それぞれのリリース時の社会的な状況も加味する必要があります。「ポケモンGO」がリリースされた16年当時は、位置情報を利用してゲームやビジネスをやるということが、とても目新しかったですよね。
――「ポケモンGO」はリリース直後、テレビの情報番組などでも報じられ、社会現象とも言える盛り上がりを見せましたよね。ポケモンというコンテンツ自体に思い入れはないものの、ミーハー心でダウンロードした人も大勢いたでしょうね。
日影 一方、位置ゲームがもう珍しくなくなった19年リリースの「DQウォーク」はメディアで大きく報じられるということもあまりなかったですよね。そんな状況を考慮すると、よく伸びていると言える結果ではないでしょうか。
ヘビーユーザーが増えている「ポケモンGO」
――「ポケモンGO」はリリース後約3カ月で所持者数がピークに達し、その後はずいぶん減ってしまっていますね。
日影 所持者数で見ると確かに減っているのですが、「App Ape」を見ると「月に20日以上起動するユーザー数」は増えているんです。コミュニティデイなどのイベントを地道に続け、コアなユーザーが増えていく仕組みを構築し、かつそれが成功していると言えます。
つまり、「ポケモンGO」はユーザー数という観点では減ってきてはいますが、コアなユーザーが増えており、長期運営のゲームにおいてお手本のような動きをしていますね。
――「サービス終了」とならず生き残っていくには、いかにユーザーを育てていくかが大事なんですね。
日影 はい。これはゲームアプリに限ったことではありません。所持数やMAU(月に一度以上アプリを起動したユーザー数)だけを見ると全然儲かっていないように見えるアプリでも、実態は絶好調なケースはけっこうあったりするんです。
――全体のユーザー数でなく、お金を払ってくれるユーザーがいかに多いか、なんですね。
「DQウォーク」の“後発ならでは”の強み
日影 一方、「DQウォーク」には「後発の位置ゲーム」ならではの強みもあるんです。パイオニアとなった「ポケモンGO」以降、さまざまな位置ゲームが出ましたが、それらの知見がたまった段階で自分たちしかできないところを足していけるのは、後発ならではのアドバンテージですよね。
「ポケモンGO」と「DQウォーク」は、「どこかに行って、ミッションをクリアして、報酬を獲得する」という基本的な流れは似ています。ですが、「DQウォーク」は「ポケモンGO」と違い、あまり移動を伴わなくても敵と遭遇することができたり、敵をおびき寄せたりするようなこともできます。「ポケモンGO」にも似たような機能はあるのですが、「DQウォーク」のほうがより「家の中にいても進められる位置情報ゲーム」にはなっていますね。
また、「ポケモンGO」は過去のイベントでは、レアなキャラクターを手に入れるには「ゲーム側が決めた特定の場所」に行く必要があり、みなとみらいなどでもイベントが開催されました。一方、「DQウォーク」はその場所の設定もある程度は自分で決められます。
――公園の片隅にスマホを持った大人の人だかりがあって、なんだろうと思ったら「ポケモンGO」だった、というケースは今でも見ますね。「実際にそこに行かないといけない『ポケモンGO』」と「『そこ』を自分である程度設定できる『DQウォーク』」は、それぞれのカラーが出ていると言えますね。
若年層に人気の「マリオカートツアー」
――「ポケモンGO」「DQウォーク」「マリオカートツアー」のユーザーの性年代はどのようになっているのでしょうか?
日影 性年代比率は図2の通りです。ただ、「DQウォーク」「マリオカートツアー」の2作はリリースから間もない比率であり、今後変化してくるかもしれません。
――ほぼ同時期のリリースと言える2つのゲームですが、「DQウォーク」は30~40代、「マリオカートツアー」はより若年層と、特徴が出ましたね。有吉弘行さんが「DQウォーク」にハマっていると番組内などで話していますが、「有吉世代」を直撃していますね。
日影 「DQウォーク」ではオリジナルのストーリーとは別に、1986年リリースのドラクエシリーズの初代「ドラゴンクエスト」を、現在(19年10月時点)プレイできるよう開放しています。これは、まさにアラフォー世代以降に刺さるでしょうね。
――現状では、若年層において「マリオカートツアー」に比べて分が悪い「DQウォーク」ですが、もう少し若い世代になじみのある新しい「ドラクエ」のストーリーを開放するかもしれないですね。一方、今の路線を貫き、課金してくれそうな層でもある“30~40代男性キラー”としての道を究めていくのかもしれませんが。
後編も引き続き日影氏に、「消費増税」や「大型台風」など大きな出来事が起きた19年10月において、それぞれ使われたアプリについて話をうかがう。
(構成=石徹白未亜/ライター)
【※1】
リセットマラソンの略。ゲームをプレイしてすぐのガチャをした際の「引き」が悪かったらゲームアプリをアンインストールして再インストールし直す行為。
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