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木下隆之「クルマ激辛定食」

メルセデス、ドリフトモード付き市販車「AMG」日本導入…炸裂するパワーに感動

文=木下隆之/レーシングドライバー
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メルセデス、ドリフトモード付き市販車「AMG」日本導入…さくれつするパワーに感動の画像1
メルセデス「AMG A45 S4マチック+」

「市販車で、ドリフトモード付きのモデルが誕生したのをご存じですか?」

 広報担当者のその言葉の意味が、にわかには理解できなかった。競技用のマシンではなく、一般公道を走るモデルに、ドリフトを推奨するモードが備わっているなんて、すぐに信じろと言うほうが無理がある。

 だが、それは確かに真実だった。日本導入になった「AMG A45 S4マチック+」は4WDである。前後輪のすべてに駆動が伝わる。その駆動力配分加減を電子制御でコントロールすることで、ドリフト走行を可能にしたのだ。

 まずは簡単に、このクルマのキャラクターを復習しておこう。

メルセデス、ドリフトモード付き市販車「AMG」日本導入…さくれつするパワーに感動の画像2

 メルセデス最小のコンパクト5ドアハッチバックであり、エンジンは2リッターの直列4気筒ターボ。炸裂させるパワーは恐ろしく、最高出力が「421ps」に達する。最大トルクは「500Nm」という、2リッターとしては途方もない数値である。1リッター換算すると200psオーバー。これはもうレーシングエンジンの世界である。

 さらに、駆動システムが凝っている。前後の駆動トルクを可変する。最大フロント100:リア0から50:50までの領域で自在にオートコントロールするのだ。

 後輪の左右輪への駆動トルクも自在に変化する。左右の可変領域は最大で100:0、つまり後輪の片輪だけに、駆動トルクのすべてを伝えることもできるのだ。

 たとえば、激しく走行中に、ハンドルを切り込んでも曲がりづらい状況に陥ったとする。そんな場面では、フロントタイヤの駆動トルク量を後輪に分け与え、フロントタイヤが反応しやすくする。これで、たいがいアンダーステアは抑えられる。

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 だが、それでもまだ曲がりづらい状況から脱し得なかったとしよう。すると、さらに後輪の外輪の駆動トルクを増幅させ、旋回性を強調して曲がりやすくなるというわけだ。

 そしてさらに同車の真骨頂は、その状態で限界走行中、ドライバーがさらにアクセルペダルを踏み込んでいるのならば、後輪にLSD効果を発揮させる。内輪にも駆動トルクを伝え続け、テールスライドを誘い込むのである。これでドリフト状態に移行するというわけだ。まさに、強烈なパワーと、変幻自在の駆動配分技術が備わっているからできる芸当である。

 ちなみに、公道を穏やかに走っているときに突然、このドリフトモードに転じるわけではないから安心していただきたい。「AMG A45 S4マチック+」には、エンジン特性やステアリングのキレ味や、あるいは肝心の駆動力配分等を好みに設定可能な「AMGダイナミックセレクト」備わっている。穏やかな乗り味に適した「コンフォート」から、スポーツ走行に適した「スポーツ」があり、もっとも過激な「レース」モードがある。この過激な「レース」モードにアジャストした時にだけ、ドリフトモードが展開されるのである。

「レース」モードでサーキットを走り込むと、アンダーステアと感じる場面はほとんどない。いつでもフロントは鋭く反応し、テールスライド気味の挙動に陥るのだ。それでも覚悟を決めて攻めこむと、テールがスライドを始める。一般的に、4WDならばそこから安定姿勢、つまりテールスライドを厳しく規制して安定した挙動に戻ろうとするのだが、そうはならない。激しいテールスライドをしながらコーナーを立ち上がったのである。

 ドリフトモード付きの市販車は、確かに存在していた。そしてそれは、完成度が高く本気で開発されたものであることを確認した。
(文=木下隆之/レーシングドライバー)

●木下隆之
プロレーシングドライバー、レーシングチームプリンシパル、クリエイティブディレクター、文筆業、自動車評論家、日本カーオブザイヤー選考委員、日本ボートオブザイヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員 「木下隆之のクルマ三昧」「木下隆之の試乗スケッチ」(いずれも産経新聞社)、「木下隆之のクルマ・スキ・トモニ」(TOYOTA GAZOO RACING)、「木下隆之のR’s百景」「木下隆之のハビタブルゾーン」(いずれも交通タイムス社)、「木下隆之の人生いつでもREDZONE」(ネコ・パブリッシング)など連載を多数抱える。

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