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ジャーナリズム

日比谷高ですら合格者流出…東京、都立高の凋落、上位私立校志向が鮮明に 無償化の影響

文=島野清志/評論家
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都立日比谷高校(「Wikipedia」より/Rs1421)

「明治時代以来」と銘打った大学入試システムの大幅な改変が頓挫して、政府及び当局は面目を失った。事情はどうであれ、当事者である受験生や各高校の関係者に不要な混乱と負荷を与えたことは明らかで、拙速な立案と導入に携わった関係者すべてに猛省を促したいところだ。ただ、その一方で、望ましい施策も実行されようとしていることも指摘しておくべきだろう。全国で導入される私立高校授業料の実質的な無償化である。

 私立校への進学希望を家庭の事情で泣く泣く諦める、連綿と続いていた“15の春”の残酷な選択が、この救済措置によって相当な部分、解消されることになるのだろう。教育基本法にも明記されている、学びの大前提である機会均等の点からも喜ばしいことだ。何より長い景気回復局面が懐には反映せず、日々教育費の捻出に頭を悩ませていた、数多くの保護者は歓迎するのではないか。

 しかし、いかに優れた施策であっても、新しい制度の導入は光と影、それを追い風にする者と、むしろ逆風を受ける者を生むことも確かだ。私立校の授業料無償化によって、割を食う形になっているのは首都圏の公立校、特に同じエリアの私立校と激しい競合関係にある東京の都立高校であり、すでにその影響は表面化している。

 東京都では国に先駆けて2017(平成29)年度から私立校の授業料無償化を進めており、所得制限も段階的に緩和している。同時に進行しているのが、受験生及びその保護者の私立志向、公立離れだ。無償化が決定し導入された翌年には、多数の都立高校が定員割れに追い込まれ、自他ともに認める国内の公立トップ進学校である日比谷でも、併願校に想定上の以上の合格者が流出して追加募集を余儀なくされた。

 増加を続けていた受験者数も減少に転じている。今年1月7日に東京都教育委員会から発表された都立高校全日制志望予定調査によれば、今年度の志望予定者数は4万9445人であり、直近のピークであった平成29年度に比べて約1割も少なくなり、3年連続の減少は避けられない見通しだ。

「トレンドは変わったように感じる」と語るのは都内の学習塾関係者だ。

「この10年ほどは家計への負担が少なく、進学の実績もあげている都立校の人気が高まる一方で、トップクラスを除く私立校は敬遠されるようになっていた。しかし無償化が始まって以降、保護者の私立校への関心は高くなっている」

 それまで多かった都立第一志望、私立滑り止めのから、ワンランク上の私立を目指して都立を滑り止めにするパターンが増えているともいう。こうした趨勢を受けて、都立校受験を主眼にしたコースに力を入れていた予備校や学習塾でも、路線の修正に動いているところもあるようだ。

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