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くら寿司、バイトテロからの復活の兆しに水…なぜ回転寿司は他の外食業より打撃少ない?

文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント
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くら寿司の店舗(「Wikipedia」より)

 新型コロナウイルスは、不振に陥っていた大手回転ずしチェーンの復活をも妨げている。販売不振に陥っていたくら寿司は、3月の既存店売上高が前年同月比15.5%減だった。12.2%増と大幅プラスだった2月から一転、大幅マイナスとなった。同じく販売不振の「かっぱ寿司」を展開するカッパ・クリエイトは、2月の既存店売上高は8.0%増だったが、3月は23.1%減と大幅マイナスだった。両社とも販売不振から脱却しつつあったが、新型コロナがそれを妨げている。

 くら寿司は、長らく客離れに苦しんでいた。既存店の客数は2019年10月期まで3年連続で前年を下回っていた。既存店売上高は19年10月期が前年を下回った。19年10月期は客数が12カ月すべてでマイナスとなり、売上高は11カ月がマイナスだった。

 19年10月期の不振は19年2月に世間を賑わせた「バイトテロ」の影響が大きい。アルバイト従業員がゴミ箱に捨てた魚をまな板に戻して調理しようとする様子が映った動画が拡散されて大問題となり、その後は客数と売上高が大きく落ち込むようになった。

 それが今期に入ってからは、既存店売上高のプラスが目立つようになった。19年11月が1.1%増、20年1月が4.8%増、2月が12.2%増だった。客数は依然としてマイナス傾向にあるが、客単価が大きく上昇し売り上げを押し上げているのだ。客単価は19年4月~20年2月までの11カ月すべての月がプラスだ。

 くら寿司は「1皿100円」という低価格を売りとしているが、19年3月から単価が高い旬の高級魚を使ったすしを期間限定で提供する「旬の極みシリーズ」を始めている。第1弾には高級魚として知られるクエのすし「国産天然くえ」(税別200円)を発売した。その後、同シリーズの名のもとに高単価のすしを毎月のように提供している。最近では4月10日から「厚切り桜鯛」(同200円)と「特大生サーモン」(同200円)を販売している。

 単価が高い商品の投入は、これだけではない。19年9月から販売を始めた高級スイーツブランド「KURA ROYAL(クラ ロワイヤル)」も高単価だ。第1弾として期間限定で発売した「たっぷり 完熟マンゴーパフェ」と「黒糖タピオカミルクティー」は518円(税込み)と、くら寿司としては高単価だ。最近では4月10日から「まるごとマンゴーパフェ」を528円(同)で発売している。こうした高単価のスイーツを2~3週に1度のペースで投入している。

 高単価商品を積極的に投入したこともあり客単価が上昇し、売り上げを底上げしている。また、新規出店効果もあり、くら寿司の19年11月~20年1月期の連結売上高は前年同期比7.2%増の359億円と、大きく伸びている。

 このように、くら寿司は業績が回復基調にあったわけだが、新型コロナの感染拡大で外出自粛が広がったことが影響し、3月の既存店売上高は大きく落ち込んだ。

回転寿司チェーン各社に大打撃

 かっぱ寿司も新型コロナに復活を妨げられている。くら寿司と同様に、最近は不振から脱しつつあった。 かっぱ寿司は「すしがまずい」とのイメージから客離れが起きていた。既存店客数は19年3月期まで5期連続マイナスで、それに合わせて既存店売上高も長らく通期ベースでマイナスが続いていた。それが、ようやく19年3月期に既存店売上高が0.1%増と、わずかながらもプラスを確保することができた。

 すしの品質向上が功を奏した。すしネタの加工を、従来は工場で一括して行っていたのを店舗で行うように改めたほか、注文を受けてから調理して新鮮なすしを提供するフルオーダー型の店舗への転換を進め、すしの品質向上を図った。こうしたことが功を奏し、客足が徐々に回復するようになった。

 20年3月期は特に好調だった。既存店売上高は今年2月までの11カ月間のうち10カ月が前年を上回っていた。プラス幅も大きく、増加率が5%以上の月が5カ月もあった。こうしたことから、通期での大幅プラスが予想されていた。だが、新型コロナの影響で3月は23.1%減と大幅マイナスになった。これが影響し、通期は0.6%増の微増にとどまっている。

 新型コロナは、回転ずしチェーン王者「スシロー」にも大打撃を与えている。運営会社のスシローグローバルホールディングスは、3月の既存店売上高が13.7%減だったと発表した。2月まで28 カ月連続で前年を上回っていたが、連続記録はストップしてしまった。増加率は高い水準で推移しており、19年11月が10.0%、12月が7.0%、20年1月が7.0%、2月が12.0%と大幅増収を達成していた。しかし、ここにきて一気に沈んでしまった。

 元気寿司も好調だった業績に急ブレーキがかかっている。ここ数年の既存店売上高はプラスの月が大半だった。今年1月は6.9%増、2月が10.0%増と大きく伸びていた。ところが、3月は17.4%減と、大きく落ち込んでしまった。

 このように、大手回転ずしチェーンは新型コロナの影響で3月の売り上げが大きく落ち込んでいる。もちろん、各チェーンとも対策は講じてきた。

 はま寿司は新型コロナの感染拡大を受け、3月3日から回転レーンでの提供を中止し、タッチパネルで注文を受けた商品だけ提供する方式に切り替えた。その後、かっぱ寿司や元気寿司でも同様の対応を講じている。こうすることで、利用客に安全性をアピールしてきた。各社ともなんらかの対策を打ち出してはいるが、大きな流れを変えるには至ってない。

 外食店はどこも厳しい状況にあり、回転ずしチェーンも例外ではない。ただ、回転ずしチェーンは、まだマシなほうだろう。3月の既存店売上高で20%以上落ち込んだ外食チェーンが少なくないなか、既存店売上高を発表した前述の4チェーンのうち3チェーンは10%台の減少にとどまっている。それは、この4チェーンは固定客が多い郊外店が大半を占めているためだ。とはいえ、厳しい状況に変わりはない。こうした難局に各社がどう対処するのか、視線が集まる。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に勤務。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。

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