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ディズニーR、純利益は622億円!コロナ禍で大幅減益も無類の強さ証明、課題は顧客満足度

文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント
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東京ディズニーリゾート(「Wikipedia」より)

 東京ディズニーリゾート(TDR)を運営するオリエンタルランドが、無類の強さを見せつけている。2020年3月期決算は、連結純利益が前期比31.1%減の622億円だった。

 新型コロナウイルスの感染拡大で2月末から東京ディズニーランド(TDL)と東京ディズニーシー(TDS)を臨時休園とし来園者数が減ったことに加え、休園期間の人件費などの固定費や商品などの廃棄損を含めた特別損失92億円を計上したことが響いた。大幅減益のため、一見すると深刻なようにも見えるが、むしろ大幅減益でも622億円もの純利益を稼ぎ出せる強さがあると評価すべきだろう。

 連結売上高は11.6%減の4644億円、営業利益は25.1%減の968億円だった。テーマパークの入園者数が減ったことに加え、入園者1人当たりの売上高が減ったことが響いた。入園者数は前期比10.9%減の2900万8000人と、3000万人を割った。前期まで6年連続、3000万人台で推移していた。入園者1 人当たりの売上高は1.8%減の1万1606円だった。前期にTDR開業35周年イベントで関連商品の販売が増えた反動が出た。この結果、テーマパーク事業の売上高は12.2%減の3840億円、営業利益は25.7%減の796億円だった。

 新型コロナで臨時休園する前までは好調だった。新アトラクション「ソアリン」が好評だったことなどで20年3月期上期(19年4~9月)の入園者数は1573万人と、過去最高を記録した。こうした状況を受け昨年10月、通期の入園者数が従来予想から150万人上振れて3150万人になると発表。連結業績も上方修正し、売上高は従来予想より246億円多い5038億円(前期比4.1%減)、純利益が109億円多い762億円(同15.6%減)になるとしていた。また、今年1月末時点では、昨年10月発表予想をさらに上回る業績を見込んでいた。

 しかし、新型コロナの影響で2月29日から臨時休園を余儀なくされ、それに伴い業績は落ち込んでしまった。ただ、業績は悪化したものの、それでも622億円もの純利益を稼ぎ出せている。新型コロナの影響で深刻な状況に陥った企業は少なくないので、そうしたことを考えれば、オリエンタルランドの減益決算は大したことではないだろう。たとえば、百貨店大手の三越伊勢丹ホール ディングス(HD)は4月27日、20年3月期の連結純損益が110億円の赤字(前期は134億円の黒 字)に転落する見通しを発表している。また、紳士服大手の青山商事が3月11日、20年3月期の連結純損益が203億円の赤字(同57億円の黒字)に転落する見通しを発表している。こうした企業と比べると、オリエンタルランドはだいぶマシだろう。

 オリエンタルランドは財務基盤も盤石だ。20年3月末時点の現預金は2611億円で1年前から1163億円減ったが、それでも十分な額を保持している。現預金だけで有利子負債(870億円)の額を大幅に上回っており、実質的に無借金経営をしている。休園が長引いた場合、保有する豊富な現預金や19年に再設定した地震リスク対応型ファイナンスの借入枠1500億円でまかなうほか、新たな資金調達枠も検討している。財務基盤が盤石で将来性もあるオリエンタルランドであれば、貸し手はあまただろう。そのため、当面の資金繰りは問題なさそうだ。

 このように、オリエンタルランドはコロナ禍において強さを見せつけている。とはいえ、無尽蔵に資金調達ができるわけではない。また、後述する大規模開発で巨額の資金が必要になる。さらに、成長に向けて課題も横たわっている。そのため油断はできない。最大の課題は集客と高い顧客満足度を両立させて業績を上向かせることだ。集客に関しては新型コロナ前までは問題はなかった。同社の想定を上回るペースで入園者数が増加し、先述したとおり、20年3月期上期の入園者数は過去最高を記録している。ただ、今後は新型コロナの影響で予断を許さない。

顧客満足度の向上が課題

 一方、高い顧客満足度を実現することが大きな課題だ。TDRは入園者数の増加に伴う混雑などが要因となって、顧客満足度が大きく低下している。日本生産性本部・サービス産業生産性協議会がまとめた「日本版顧客満足度指数(JCSI)」の「顧客満足」の順位は14年度までは1~2位を維持していたが、15年度は11位に急落、16年度は27位に、17年度は36位に後退している。スコアも低下傾向にあった。ただ、18年度は8位、19年度は6位と上昇している。スコアも上昇が続いている。このようにV字回復している。とはいえ、これで満足はできないだろう。さらなる顧客満足度の向上が期待される。

 オリエンタルランドは14年に発表した経営計画「2023ありたい姿」において、2023年までに、高い満足度を伴った入園者数を恒常的に3000万人レベルにすることを目標に掲げている。その実現のため、この10年間で5000億円、年換算で500億円の投資を実施する方針を示している。それにより、新規のアトラクションを開発したり各種施設を改良したりし、集客と顧客満足度の向上を実現したい考えだ。

 20年3月期は約180億円投じて「ソアリン」をTDSに開業した。集客に貢献したほか、入園者の滞留箇所が分散し、快適さが向上したという。今後は映画『美女と野獣』をテーマにした新エリアの開業が目玉となる。大型アトラクション「美女と野獣”魔法のものがたり”」や屋内シアター「ファンタジーランド・フォレストシアター」などがオープンする。総事業費は約750億円でTDLとTDSが開園して以来最大規模の投資となり、注目されている。もっとも、4月15日を予定していた開業は新型コロナの影響で延期となった。5月中旬以降の開業を予定しているが、不透明な状況にある。24年3月期にはTDSを拡張して映画『アナと雪の女王』のアトラクションなどを新設する計画もある。2500億円も投じる大型プロジェクトだ。この2つの大規模開発で集客を図るほか、入園者の滞留箇所分散で快適さを向上させたい考えだ。

 もっとも、こうした施策も新型コロナの影響で先行きは不透明だ。場合によっては、計画が大きく狂う可能性もある。綿密な対応が求められそうだ。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に勤務。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。

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