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石原結實「医療の常識を疑え!病気にならないための生き方」

安倍首相罹患の潰瘍性大腸炎、悪化すると大腸全摘出も…「ストレス」の恐ろしさ

文=石原結實/イシハラクリニック院長、医学博士
安倍首相罹患の潰瘍性大腸炎、悪化すると大腸全摘出も…「ストレス」の恐ろしさの画像1
首相官邸のHPより

 8月28日、安倍晋三首相が退陣を表明された。2007(平成19)年の第一次安倍政権の退陣時と同じく「潰瘍性大腸炎」の悪化が理由である。

 2012(平成24)年12月に発足した第二次安倍政権は、2008(平成20)年のリーマンショック以来のデフレでどん底にあった日本の経済状態(株価)を、「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「企業の成長戦略」という3本の矢、「アベノミクス」を掲げて急速に回復させ、戦後2番目に長い「71カ月」もの景気拡大期をもたらした。これまでの内閣がやりたくてもやれなかった「集団的自衛権を容認する憲法解釈変更」「特定秘密保護法制定」のほか、「インバウンド需要の創出:外国人旅行者の4倍増」「外国人労働者の受け入れ増加」などを果断に実行に移した。

 また、米国のトランプ大統領との親密さは知られているが、であるが、欧州やアジア諸国の首脳からも信頼され、G7他の会合でも国際社会の中心に立つことができた「日本で初めての総理」といってもよい。

「北朝鮮による日本人拉致」「北方領土問題」の解決や「憲法改正」の悲願は、潰瘍性大腸炎の再発によって断たれた。まさに「断腸の思い」であられただろう。

 潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜に炎症が起こってただれ、びらんや潰瘍が起こる病気で、症状は、

(1)下血を伴う軟便や下痢

(2)腹痛

などで、一日に何度もトイレに駆け込むような人もいる。重症化すると「発熱」「体重減少」「貧血」が起きることもある。厚生労働省が指定する「難病」で、現在日本には約22万人の患者がいるとされる。とはいっても発病率は米国の半分以下。原因は不明とされるが、

(1)食生活の欧米化

(2)腸内細菌叢の変化(善玉菌の減少、悪玉菌の増加)

(3)免疫の異常

などの関与が挙げられている。しかし、その発症、悪化、再発には「ストレス」が大いに関係していることは、すべての専門家が認めるところである。安倍首相の持病の悪化も、半年以上も続く「コロナウイルス禍」への対応によるストレスが起因になったのは想像に難くない。治療としては、以下のとおり。

(1)5-ASA(アミノサリチル酸)薬の経口または直腸投与

「サラゾピリン」(サラゾスルファピリジン)は、大部分が小腸で吸収されてしまい、有効成分を大腸まで十分に届けることができない。この点を改善してつくられた薬が、「ペンタサ」や「アサコール」(メサラジン)である。

「5-ASA」による十分な効果がない場合、以下などが使用される。

(2)副腎皮質ステロイド剤の「プレドニン」(経口摂取または静脈注射)

(3)免疫抑制剤(アザチオプリン=イムラン)の経口投与

(4)抗TNFα受容体拮抗薬(インフリキシマブ=レミケード、アダリムマブ=ヒュミラ)の注射

 こうした療法でも十分な効果が発現しない場合、

(5)GCAP(顆粒球除去療法)

が行われる。これは血液を体外へ取り出して、異常に活性化した顆粒球と単球(図表)を選択的に除去する装置に通し、その後、血液を体内に戻す、という療法。(1)~(5)の内科的治療で治癒せず、大量の出血や穿孔(大腸壁に穴があく)が生じた場合、

(6)外科的手法(大腸全摘術)

が行われる。

万病の一大要因が「ストレス」

 世界的な免疫学者で新潟大学医学部の教授・名誉教授を歴任された故・安保徹博士(2016年12月逝去)は、膨大な研究に基づき「ほとんどすべての病気の原因はストレスである」と主張された。心身への負担(ストレス)がかかると、自律神経のうちの「緊張の神経」あるいは「戦いの神経」といわれる交感神経が優位に働き、副腎より「アドレナリン」や「コーチゾール」が分泌されて血管が収縮して血圧が上がる。またリンパ球が減少して免疫力が低下する。

 そのほか、「顆粒球」(図表)が増加して顆粒から活性酸素が大量発生し、人体60兆個の細胞膜や遺伝子を傷害して、「炎症」「血管壁の硬化」「腫瘍」「細胞の変性」「老化」など、ありとあらゆる病気の下地をつくるというのが、安保博士のご高説であった。物理学用語であった「ストレス(stress)」を初めて医学用語として用いたカナダのハンス・セリエ博士も、「ストレスがあらゆる病気に大いに関与している」と喝破した大医学者であった。

 日本では昔から「病気」は「気の病」、「病半分、気半分」といわれる。英語の“disease”(病気)も「dis」=(反対の意を示す接頭語)+「ease」(安楽)より来ている。洋の東西を問わず、昔の人々は病気の発症要因として「気持ち」「精神」「ストレス」が大きく関与していることを経験から知悉していたわけである。「小さいストレスは忘れろ」「大きいストレスからは逃げよ」といわれるが、ストレス解消法としては以下があげられる。

(1)休息、睡眠を十分にとる

(2)音楽や絵画の鑑賞、書道やカラオケなどの自分の好きな趣味に没頭する

(3)親しい友人や家族との語らい、会食を行う

(4)ウォーキング、ゴルフ、テニス、水泳など、競争を伴わない、やってみて「気分の良い」運動を行う

(5)入浴、温泉、サウナ、岩盤浴などで体を温めるなどして、リラックスの神経「副交感神経」を優位に働かせる

(6)生姜やシソの葉を料理に大いに用いる

 漢方では2000年も前から生姜やシソの葉には「気を開く」(ストレスを取る)作用があるとされてきた。すりおろし生姜をみそ汁、納豆、豆腐、うどん、そば、煮物などに加えたり、熱い紅茶や白湯にすりおろし生姜と黒糖かハチミツを「うまい」と思う量を入れた生姜紅茶(生姜湯)を一日2~4杯愛飲する。シソの葉をみそ汁に入れたり、天ぷらにして食べる。

 できるものを1つでも2つでも励行されるとよい。

(文=石原結實/イシハラクリニック院長、医学博士)

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石原結實/イシハラクリニック院長、医学博士

石原結實/イシハラクリニック院長、医学博士

1948年長崎市生まれ。長崎大学医学部を卒業後、血液内科を専攻。「白血球の働きと食物・運動の関係」について研究し、同大学大学院博士課程修了。スイスの自然療法病院B・ベンナー・クリニックや、モスクワの断食療法病院でガンをはじめとする種々の病気、自然療法を勉強。コーカサス地方(ジョージア共和国)の長寿村にも長寿食の研究に5回赴く。現在は東京で漢方薬処方をするクリニックを開く傍ら、伊豆で健康増進を目的とする保養所、ヒポクラティック・サナトリウムを運営。著書はベストセラーとなった『生姜力』(主婦と生活社)、『「食べない」健康法』(PHP文庫)、『「体を温める」と病気は必ず治る』(三笠書房)、石原慎太郎氏との共著『老いを生きる自信』(PHP文庫)、『コロナは恐くない 怖いのはあなたの「血の汚れ」だ』など、330冊以上にのぼる。著書は韓国、中国、台湾、アメリカ、ロシア、ドイツ、フランス、タイなど世界各国で合計100冊以上翻訳出版されている。1995~2008年まで、日本テレビ系「おもいッきりテレビ」へのレギュラー出演など、テレビ、ラジオ、講演などでも活躍中。先祖は代々、鉄砲伝来で有名な種子島藩の御殿医。

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