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住宅ジャーナリスト・山下和之の目

新築マンション、来年も価格高止まりか、購入は再来年まで待つべき?中古は来年下落予想

文=山下和之/住宅ジャーナリスト
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「Getty Images」より

 2020年も残り少なくなってきました。新型コロナウイルス感染症で明け暮れた1年で、住宅・不動産業界もコロナ禍でさまざまな影響を受けました。21年は、そのコロナ禍も収束して、普段通りの日常を取り戻せることを祈りたいものですが、住宅購入環境はどうなるのでしょうか。例年以上に不確定要素が多いのですが、さまざまなデータを駆使して可能な限り予測してみましょう。まずは、住宅の価格動向、供給見通しについて――。

上昇傾向だった地価が一転して下落に向かい始める

 新築マンションはコロナ禍でも高値が続いています。不動産経済研究所の調べによると、2019年の首都圏新築マンションの平均価格は5980万円だったのが、20年度上半期(20年4月~9月)の平均価格は6085万円と、コロナ禍でもむしろ上がっています。この価格、21年はどうなるのでしょうか。

 新築分譲住宅の価格は、基本的には土地の仕入れ代金、建築費に分譲会社の経費・利益を加え、その総額を戸数で割って決定されます。ですから、地価や建築費が上がれば新築価格は上がり、反対に地価や建築費が下がれば、価格も下がるというのが市場原理です。

 実際には、そのときどきの不動産会社の戦略、思惑などにも大きく左右されますが、原則的には地価と建築費の動向が大きく影響します。

 その点からすると、2021年は値下がりを示唆する要素が多くなりそうです。地価に関しては、これまで上がり続けてきたのが、コロナ禍で様相が一変しました。20年9月に公表された『令和2年都道府県地価調査(基準地価)』では、全国全用途平均で前年比0.7%のダウンでした。三大都市圏でも0.3%の下落で、潮目が大きく変化しています。

業界関係者の4割近くが来年も地価下落の予想

 国土交通省の『地価LOOKレポート』は、全国の地価動向の先行指標ともいえる調査ですが、2019年までは100の調査地点のほとんどが上昇傾向だったのが、19年第3四半期には、「上昇」は1地点だけに減少し、「横ばい」が54地区、「下落」が45地区と激変しました。このまま進むと、この下落傾向が全国に広がっていくのではないかとみられます。

 実際、地価下落を予測する業界関係者が増えています。全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)では、四半期に一度、加盟不動産会社を対象に、不動産価格や供給動向に関するアンケート調査を実施していますが、図表1にあるように、多くが地価下落を予想しています。

 20年10月の調査時点現在では、「大きく上昇している」「やや上昇している」を合わせた上昇の合計は7.9%で、「下落している」「やや下落している」の下落の合計は23.2%でした。それが、3カ月後、21年1月の予想に関しては、上昇の合計は6.1%に減少し、下落の合計が38.2%に増えています。4割近くの業界関係者が、地価が下がるとみています。

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建築費も上昇傾向に歯止めがかかりつつある

 建築費も近年は上昇が続いていましたが、ここへきてそれにも変化がみられるようになってきました。建設物価調査会によると、鉄筋工事の市場単価はジワジワと低下し、先安感も出始めているそうです。ただ、鋼材などの単価は依然として高水準なので、建築費が低下するまでには至っていませんが、そろそろ頭打ちとなって、下がり始めるのではないかという見方もあります。

 国土交通省の建設工事費デフレーターでは、2010年を100とした指数は図表2のように推移しています。鉄筋コンクリート造などの非木造住宅は19年末には116.5まで上がったのが、20年7月、8月は112.2まで下がっています。木造住宅についてもほぼ同様の動きといっていいでしょう。

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新築マンション価格が下がるのは22年以降か

 地価が下がり、建築費も上昇に歯止めがかかるとなれば、新築マンションなど、住宅価格低下が期待されますが、ことはそう簡単ではありません。特に、新築マンションに関しては土地の仕入れから販売までには通常は1年程度かかり、大規模物件だと2年、3年かかります。つまり、地価が下がった段階で仕入れた土地の上の建つマンションの分譲が始まるのは、少なくとも1年先、2年先以降ということです。

 残念ながら、21年早々の分譲価格の値下がりを期待することは難しいのが現実のようです。新築の値下がりを期待するなら22年以降ということになりそうです。しかも、首都圏の新築マンション市場では、マンション分譲大手7社のシェアが4割を超えています。経営基盤が強固なので、マンションが多少売れなくなっても、あわてて値下げする必要はありません。利益の出る価格に据え置いて、売れるまでジックリ待つだけの体力が備わっています。

 大手不動産会社の影響力が大きく、人気の高い都心部やその周辺の価格は簡単には下がらないでしょう。

価格の下落が始まるとすれば中古住宅からか

 ですから、新築価格が下がるとすれば、郊外の中堅以下の不動産会社が分譲するマンションからということになります。それも21年というよりは、22年以降になるのかもしれません。それよりは、中古マンションなどの中古住宅価格の動きのほうが早いのではないでしょうか。

 というのも、中古住宅の売主は基本的には個人の消費者です。大手不動産会社のように泰然と構えているわけにはいきません。転勤などの事情で売却や買い替えが必要になったときには、市場の動向とは関係なく一定期間内に売らなければならないのです。

 現実の動きをみると、首都圏を中心にコロナ禍でも、20年後半の中古住宅市場は比較的堅調に推移しています。20年春には先行き不安から売り急ぐケースもあって成約価格は一時的に下がったのですが、後半には持ち直しています。

 たとえば、東日本不動産流通機構の調査によると、首都圏の中古マンションの成約価格は20年6月から10月まで、5カ月連続して前年同月比5%以上の上昇となっています。

業界関係者も中古マンションは「下がる」とみている

 しかし、それがいつまでも続くとは限りません。コロナ禍がなかなか収束できないため、消費者の先行き不安は強まっています。住宅ローンの返済を行っている人たちのなかには、返済が苦しくなり、「このままではローン破綻に陥りかねない。そうなる前に売却したほうがいいのではないか」と考える人が増えているといわれます。収入減や先行き不安のなかで、売却を急ぐ人が増えてくれば、価格が下がる可能性が高まります。

 一方、買い手が収入や先行きに自信を持てない状況が続けば、需要も鈍化します。市場に買い手が少なくなれば、それも価格低下の要因になるでしょう。そのため、先の全宅連の調査でも、中古マンションの価格は下がるとみる企業が多くなっています。図表4にあるように、20年10月段階の現状の見方でも、「上昇」の合計は7.8%で、「下落」の合計が28.3%と下落のほうが多くなっています。さらに、そこから3カ月先の21年1月見通しとしては、「下落」が大幅に増えて、4割近くに達しているのです。

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分譲住宅の発売戸数は先細り傾向が続く可能性

 こうした価格見通しのなかで、供給がどうなるのかといえば、先細り感は否めません。人口の減少が始まっており、やがて世帯数も減っていく上に、空家が増加しているのですから、新築住宅を求める人は減っていかざるを得ません。それに、コロナ禍が拍車をかけることなるでしょう。

 たとえば、建設経済研究所では、19年度の新設住宅着工戸数88.4万戸に対して、20年度の見通しとしては79.7万戸に減少するとし、21年度もほぼ同じ水準が続くとみています。図表5にある通りです。新築マンションは着工後しばらくしてから、新築一戸建ては着工して数カ月後の竣工前後に売りに出されるのがふつうですから、これだけ着工戸数が減るということは、21年度の新規発売が減っていくであろうことを意味します。

 持家、貸家、分譲住宅の利用形態別にみると、いずれも減少見通しであることは変わらないのですが、分譲住宅は26.0万戸から24.3万戸に減るとみています。

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価格高が続いて供給は先細りになるのか

 不動産経済研究所の調査では、19年の首都圏の新築マンション発売戸数は3万1238戸でしたが、20年は10月までの累計で1万7084戸にとどまっており、20年1年間を通しての発売戸数が3万戸割れになるのは間違いなさそうです。

 21年は、コロナ禍がいつ収束するのかにもかかってきますが、再び3万戸台に回復できるかどうかということになって、急速な増加は期待できそうもありません。21年に新築マンション探しを考えている人にとっては、価格は依然として高い状態であり、供給数も限定されるので、あまり恵まれた環境とはいえない状態になりそうです。

(文=山下和之/住宅ジャーナリスト)

山下和之/住宅ジャーナリスト

山下和之/住宅ジャーナリスト

1952年生まれ。住宅・不動産分野を中心に、新聞・雑誌・単行本・ポータルサイトの取材・原稿制作のほか、各種講演・メディア出演など広範に活動。主な著書に『マイホーム購入トクする資金プランと税金対策』(執筆監修・学研プラス)などがある。日刊ゲンダイ編集で、山下が執筆した講談社ムック『はじめてのマンション購入 成功させる完全ガイド』が2021年5月11日に発売された。


はじめてのマンション購入 成功させる完全ガイド2021~22


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