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コロナ禍のタクシードライバーはつらいよ…「窓、閉めろ!」と怒号、マスクなしの元感染者

文=後藤豊/ライター兼タクシードライバー
コロナ禍のタクシードライバーはつらいよ…「窓、閉めろ!」と怒号、マスクなしの元感染者の画像1
「gettyimages」より

 新型コロナウイルスの第3波が到来し、全国の感染者数と重症者数が過去最多を更新していることもあり、東京都内の人出は格段に減っている。人出が減るとダメージを受けるのがタクシー業界であり、ボーナス特需が見込める師走にも関わらず、多くのドライバーが売り上げ減に頭を抱えている。

 感染を防ぐため、タクシー業界は「マスクを着けていない客の乗車拒否」を可能としたが、今はワンメーターの乗客でもありがたく、乗車拒否などできないほど売り上げは厳しい。

 とはいえ、不特定多数の乗客と接するタクシー運転手は、新型コロナに感染する可能性が比較的高い業種といえる。そこで、感染の恐怖と戦うタクシー運転手の声を集めてみた。

「寒いよ!」と換気させてくれない若者

「先週の土曜日に嫌な思いをしました」と語るのは、東京・錦糸町を走る50歳のドライバーだ。

「住吉駅まで、という客を乗せました。すぐ近くで料金は420円です。それはかまわないのですが、乗った直後に『寒いよ、窓を閉めろ!』と命令口調で言ってくるんです。カチンときましたが、『すいません、換気を良くするため仕方ないんです』と言っても『客が寒いって言ってるんだから閉めろ、ボケ!』と。この野郎、という気持ちを抑え、渋々窓を閉めました。若い客に言われて反論できない自分が情けなくなりましたよ」

 寒さが増してきた12月。時速60キロほどで走るタクシーだけに、窓の開け閉めをめぐるトラブルは増えそうだ。

 また、他のドライバーからはこんな話も聞こえてきた。

「多くの会社は後部座席と運転席の間にパーテーションやビニールシートを設置していますが、うちの会社は通常のままです。私のように持病を持っている運転手が『ビニールシートを置いてくれ』と言っても、会社は動いてくれません。というのも、うちはローカル(中央区や千代田区、港区、新宿区などのオフィス街や高級住宅街ではない区域)で、社長は『客との触れ合いを大切にしろ』と言っています。そのため、運転席の後ろに装着する防犯板さえないんですが、コロナは別ですよね。何といっても、ウイルスは姿が見えないんですから……。しまいには『そんなにパーテーションをしたいなら、よその会社へ行け』と言われてしまいました」

 乗客のみならず、タクシー運転手には会社とのトラブルも存在するようだ。

マスクなしの酔客が「陽性だった」と告白

「コロナに感染した客を乗せた」というドライバーの話も聞いてみよう。

「マスクをしていない酔客が、コロナについてベラベラ話を始めました。そして、『3カ月前にPCR検査を受けたら陽性だった』と言うんです。その瞬間、私はゆっくりと窓を開けました。聞けば無症状だったらしいんですが、それでも何となく不安になりましたよ。酔っている上に、唾が飛びそうな話し方をしているんですから。

 極めつけは、降りるときです。料金は3000円だったのですが、何と人差し指に唾をつけて1000円札を数え始めたんです。料金トレイに置かれたままの1000円札を、急いで除菌用のナプキンで拭きまくりました」

 乗務後、冷静になったこのドライバーは「慌てることはなかった」と振り返る。

「今はPCR検査で陰性だったそうですし、だからこそ社会復帰しているわけですからね。感染した芸能人が陰性になった後にテレビに復帰していることも考えると、私もあの乗客から感染する可能性はないと言えそうです」

 ただし、「とっさのことだけに怖かったし、何せ密室の車内ですからね」というドライバーの気持ちも理解できる。

 今や街ゆく人のマスク装着率は100%に近いが、酒を飲んで気分が良くなると外す若者も少なくない。心情はわからないでもないが、新型コロナは無症状の感染者が多いという点が厄介だ。タクシーに乗る際はどうかマスクをしてほしいと、多くのドライバーが願っている。

(文=後藤豊/ライター兼タクシードライバー)

後藤豊/ライター兼タクシードライバー

後藤豊/ライター兼タクシードライバー

1966年千葉県生まれ。東京都内の中小会社でタクシードライバーを兼務するライター。競馬と野球をメインに、雑誌や書籍で執筆をしている。主な著書に『テイエムオペラオー伝説』『競馬 伝説の名勝負 GⅠベストレース』(ともに星海社、共著)などがある。

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