ビジネスジャーナル > 社会ニュース > 宇城市のツタヤ図書館、ドス黒すぎる
NEW

ツタヤ図書館&美術館、熊本県宇城市がドス黒すぎる!不透明な選考過程、異常に安すぎる家賃

文=日向咲嗣/ジャーナリスト
ツタヤ図書館&美術館、熊本県宇城市がドス黒すぎる!不透明な選考過程、異常に安すぎる家賃の画像1
不知火文化プラザ(「熊本県宇城市HP」より)

 熊本県宇城市は、市立図書館と美術館の指定管理者を承認する議案を、12月10日の市議会本会議で可決した。選定されたのは、レンタル大手TSUTAYAを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)。

 図書館と美術館が併設された複合施設「不知火文化プラザ」を改修して、運営を民間に移管。カフェ等の民業店舗を設置してCCCに運営委託することで、来館者を現在の10倍超となる70万人に増やす計画だという。

 全国で6つの自治体で公共図書館を運営しているCCCだが、美術館の運営は初めて。「不知火文化プラザ」は、独特の建築デザインと敷地内に整備された遊歩道の美しい景観で知られており、宇城市のみならず熊本県民の貴重な財産。その運営を「CCCに丸投げするなんてとんでもない」という声が、早くも市民から上がっている。

 当サイトでは、2020年6月にオープンした和歌山市のツタヤ図書館に関して、“出来レース疑惑”等を繰り返し報じているように、CCC周辺では不祥事や黒い疑惑が後を絶たない。2019年2月には、同社の基幹事業TSUTAYA(2020年4月から蔦屋書店に社名変更)が景品表示法違反で1億1753万円の課徴金を課せられている。以来、同社のアピールする受託実績には、信憑性に大きな疑問符が付く。いったい宇城市は、CCCの何を高く評価して選定したのだろうか。

 宇城市がCCCを図書館と美術館の指定管理者に選定したとの情報を筆者がキャッチしたのは、11月29日のこと。市が発表したのは「下記のとおり候補者を選定しました」として、CCCの社名と所在地を明記した一文のみ。

 市のサイトをいくら探しても、他の自治体では当たり前のように掲載している選定までの経緯をはじめ、応募した事業者の選定時の審査内容、採点等についての情報はどこにも見当たらない。指定管理者の募集要項だけは残っていたものの、それすら数日後に消去された。市民が大切な図書館と美術館の運営者が、どのようにして決まったのかを知るすべはまったくないのだ。

 そこで、担当部署に問い合わせてみると、
(1)期日までに応募があったのは2社
(2)7人の審査委員(うち5人は市職員、2名は外部有識者)が採点
(3)12月議会の承認を経て正式決定となる
以上3点が判明。応募した残り1社はどこか、採点結果の詳細は、審査委員は誰かなどについても質問したが、それらには一切答えられないとのこと。過去にCCCを誘致した自治体でも、ここまで情報をシャットアウトした例はなく、宇城市はとんでもない“暗黒行政”に思える。

 宇城市指定管理者の募集要項などの資料を詳しく見てみたところ、いくつか不可解な点が見つかった。

不可解すぎるツタヤ図書館&美術館誘致の過程

 第1に選定スケジュール。9月議会で指定管理者制度導入が決まった直後の10月から募集スタート。11月16日に応募企業のプレゼンテーションを実施して、CCCを選定。市長が会見を開いて正式発表したのが12月1日。指定管理導入の決定後、たった3カ月で“ツタヤ図書館&美術館”の誘致を決めている。

 宇城市同様に、市民に反対運動させる間隙を与えないために駆け足でCCCを選定したといわれている和歌山市ですら、指定管理者制度導入は6月議会だった。和歌山市では、応募事業者名を事前に発表して、その提案内容を競うプレゼンテーションを市民に公開するなどの配慮はあったが、宇城市ではそれもなし。

 また、これまでのツタヤ図書館にあったような、施設の改修や新築についての基本構想や基本計画も一切発表されていない。「中規模改修を予定」としているだけで、その予算規模すら「まだ何も決まっていない」という。それなのに、指定管理者だけは大急ぎで決めているのだ。

 市民に重要なことは一切知らせず、突然、選定事業者名だけを発表したかたちだ。コロナ禍のどさくさに紛れて、それほどまで秘密裏に超特急で進めなければならなかったのは、なぜなのだろうか。

 募集時に担当課のサイトに掲載されていた募集要項や仕様書を読んでも、指定管理者制度を導入したメリットが見えてこない。図書館と美術館の運営を民間委託することで運営コストを削減しつつサービス向上を図るというのだが、利用者が得られるメリットとしては、休館日をなくして開館時間を、従来の午前10時~午後6時までから、午前9時~午後9時までに伸ばしたくらい。

 中央図書館と分館3館、美術館の指定管理料は、1年当たり1億5700万円。議会の反対討論で判明したのは、現在の運営費は1億1400万円。つまり、年間にして約5000万円も費用は高くなる。中規模改修の「費用は未定」と回答していたが、議会の反対討論では「4億円規模の改修が予定」されていることも判明した。

 さらにおかしいのは、募集要項には市が設置を求めている「カフェ等」の民業部分の賃料について、こう書かれていたことだ。

「1平米当たり年間700円」

ツタヤ図書館&美術館、熊本県宇城市がドス黒すぎる!不透明な選考過程、異常に安すぎる家賃の画像2

 別紙で「カフェ等」の営業可能面積は「おおむね100平米」と明記されていることから、民業部分の年間賃料総額は7万円になる計算。一月当たりに直すと5833円だ。つまり、CCCが直営するスターバックスと蔦屋書店の家賃は、毎月6000円にも満たない額である。

CCCに対する利益供与か

 さすがに、これは何かの間違いではないかと思い、担当部署に確認したところ、条例で定められているこの金額で間違いないとの回答だった。同施設の近隣にある同じくらいの広さのテナントの家賃を調べてみたところ、それよりも築年数は10年古い物件でも月20万円で募集されていた。年間70万人の来館者を想定している施設の店舗が、たった5833円の賃料というのは、「特定事業者に対する常識外れの優遇」ではないだろうか。

 さらに驚かされるのが、「工事については、市が設計し、費用も負担します」とあり、内装工事費用まで市が負担することが明記されている。ここにいたっては、民間企業に対する、あからさまな利益供与の様相を呈してきた。指定管理者に独占して与えられる「利権」ではないのか。

 市議会で波乱が起きたのが12月3日の本会議だった。質疑のなかで、共産党の五嶋映司議員が、CCCの100%子会社が昨年2月に、消費者庁から景品表示法違反で1億円もの課徴金を課せられていることを指摘し、指定管理者としての適性を問いただした。これに対して、守田憲史市長が色をなして反論した。

「TSUTAYAグループ200社あるなかの1社がやったと、それをもってツタヤのすべてに課徴金の違反があったとか。追徴金も払って、すべてが片付いたあとですので、それが入札だうんぬんのときに、入札停止うんぬんのときにたいへんなことになります」

 守田市長の反論は説得力がない。基幹事業であるTSUTAYAの代表権は当時、増田宗昭CCC社長が保持していた。それにもかかわらず、増田社長が表に出てきてTSUTAYAの不祥事について正式な謝罪すらしていないことについては、なんの説明もなかった。CCC指定管理が最終的に議会承認された12月10日の市議会本会議ではもうひとり、立憲民主党の中山弘幸議員が反対討論のなかで、こう問題点を指摘した。

「今回提案されている、カルチュア・コンビニエンス・クラブ並びにそのグループ企業にとっては、顧客の囲い込みになり、その利益は莫大で計り知れません。加えて、今回指定管理を導入するにあたって、カルチュア・コンビニエンス・クラブの要望にそうかたちで、カフェの整備を含め約4億円規模の改修が予定されております。このようなことを断じて見過ごすことはできません。

 さらには、年間の運営費が、現在の1億1400万円から1億6500万円になり、年間で5100万円も大きく上がることになります。今の宇城市にそのような余裕があるのか、疑問があります。本年度予算では、今回の補正も含め約30億円も財政調整基金を取り崩さなければ予算が組めない現状。おそらく来年度も、それに近いくらい基金を取り崩さなければ予算が組めないのではないかと推察できます」

 さすがに、ここまで不透明な事業者選定となると、議会も大荒れになるのではないかと思っていたが、12月10日の市議会本会議でCCCを指定管理者とする法案は、賛成多数(賛成16対反対5)であっさり可決した。翌日の地元メディアは「美術館と図書館の指定管理にツタヤを選定」と報じたが、不透明な選定課程について触れた記事はなかった。

 果たして、このような不透明な経緯で、大切な美術館と図書館の運営者をCCCに決定したことを、市民はすんなり受け入れられるのだろうか。

 なお、筆者が宇城市に対して「CCC選定プロセスがわかる文書」を開示請求したところ、12月27日に回答があり、審査会の委員は全員、肩書もなく匿名(黒塗り)で、誰が審査したかすらわからないようになっていた。
(文=日向咲嗣/ジャーナリスト)

ツタヤ図書館&美術館、熊本県宇城市がドス黒すぎる!不透明な選考過程、異常に安すぎる家賃の画像3
開示されたCCC選定プロセスがわかる文書の採点シート。審査委員の肩書はなく、 名前はもちろん、合計点を除いて項目別の得点もすべて黒塗りされていた

日向咲嗣/ジャーナリスト

日向咲嗣/ジャーナリスト

1959年、愛媛県生まれ。大学卒業後、新聞社・編集プロダクションを経てフリーに。「転職」「独立」「失業」問題など職業生活全般をテーマに著作多数。2015年から図書館の民間委託問題についてのレポートを始め、その詳細な取材ブロセスはブログ『ほぼ月刊ツタヤ図書館』でも随時発表している。2018年「貧困ジャーナリズム賞」受賞。

ツタヤ図書館&美術館、熊本県宇城市がドス黒すぎる!不透明な選考過程、異常に安すぎる家賃のページです。ビジネスジャーナルは、社会、, , , , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!