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小林敦志「自動車大激変!」

アルファード“激売れ”の裏で加速するクラウン離れの実態…エスティマからの乗り替えも

文=小林敦志/フリー編集記者
アルファード激売れの裏で加速するクラウン離れの実態…エスティマからの乗り替えもの画像1
トヨタ アルファード | トヨタ自動車WEBサイト」より

 世の中では、トヨタ自動車の「アルファード」がよく売れているのが話題となっている。軽自動車も含む総合ランキングでは、2020年暦年締め年間販売台数でもホンダ「N-BOX」がトップとなり、N-BOXは最近単月では「ヤリス」に抜かれたりもしているが、まだまだ“日本一売れているクルマ”というイメージが強い。

 2020年暦年締めでのN-BOXの年間販売台数は19万5984台。そのN-BOXに対し、10万台ほど販売台数は少ないものの(9万748台)、総合ランキングで9位に入っているのがアルファードとなる。N-BOXのメーカーウェブサイトを見ると、FFでの最高車両本体価格は、カスタムEXターボで201万9600円、対するアルファードはエグゼクティブラウンジで726万9000円となる(筆者調べ)。10万台差がついているものの、上級グレード比でN-BOXの約3.6倍もの価格になるアルファードが10万台近く売れているのは、確かにインパクトが大きい。

 気になるのは、2020年9月以降、それまでの2倍ほど売れだしているのだが、アルファードへの代替え(乗り替え)ユーザーがどこからきているかである。もちろん、トヨタ以外のメーカー製ミニバンのユーザーや、比較的短期間に代替えを繰り返すアルファードユーザーなど、アルファード購入客は多岐にわたるのだが、軽自動車ほどセカンドカーニーズも期待できないので、やはり気になる。

“クラウン離れ”が加速する要因とは

 グラフは、アルファードと「クラウン」の暦年締めでの年間販売台数の推移を表したもの。

アルファード激売れの裏で加速するクラウン離れの実態…エスティマからの乗り替えもの画像2

 現行クラウンは2018年6月末にデビューしている。グラフを見ていただければ一目瞭然なのだが、クラウンが2018年、2019年、2020年と右肩下がりに販売台数を落としているのに対し、アルファードは右肩上がりに推移している。実は、クラウンからアルファードへの代替えも、昨今のアルファードの“激売れ”状況を支えているといえるのだ。

 アルファードは、一部を除いたトヨタ車すべてが全店舗で併売されるまではトヨペット店の専売であった。先代あたりから、クラウンユーザーより「アルファードに乗り替えたい」といった声が目立っていた。しかし、当時クラウンを専売していたトヨタ店では、そのままアルファードへの乗り替えはできないので、「それじゃクラウンにしておくか」ということで、ある程度はアルファードへの代替えを抑え込むことができた。

 バブル経済の頃は、セールスマンが「クラウンの新型出ますよ」と主に企業経営者のクラウンユーザー(お得意様)のところへ行けば、「そっか、じゃあ最上級グレードにフルオプションで注文入れておいてくれ」といったやりとりで受注成立というのが珍しくなかった。

 一部ディーラーでは“クラウン班”というものが編成され、そのクラウン班が代々クラウンを乗り継いでいる得意客をまわり、新車を売る“得意先営業”がメインであった。店頭でフリーのお客に売るというスタイルはほとんどなく、新規の購入客についても、身元をしっかり把握するという意味もあり、得意客からの“紹介”がほとんどであった。

 ただ、そのような得意客についても、会社経営を後継者に引き継ぎリタイアすることで、クラウン以外のクルマに乗る人も多くなり、特に昨今では“免許を自主返納”する得意客も増え、マイカー自体を手放す人も増えてきているようだ。そして、新たに会社を引き継いだ後継経営者はクラウンにこだわることなく、ドイツ系高級ブランド車などに乗る人も多くなった。さらに、クラウン自体がそのようなドイツ系高級ブランド車に近いキャラクターを目指すようになったことも、ある意味“クラウン離れ”を加速させていったものと考える。

 そして、現行モデルでは今までのような“ロイヤルサルーン”や“アスリート”といったものがなくなり、さらに、従来に比べてかなりアクの強さが目立つようになった。そこへきて、2020年5月に全店併売化が実施されたことで、クラウンからアルファードへの代替えパターンが顕在化しているようである。

 アルファードは兄弟車の「ヴェルファイア」に比べれば、ユーザー年齢はもともと高かった。特に「孫たちも含め、親子三代でドライブに行きたい」とか、「気の合う仲間とゴルフに行きたい」など、プライベートでもアクティブに動きたい年配の富裕層がアルファードに興味を示していた。テレビニュースを見ていると、政治家の中にもアルファードを移動車として利用しているのが目立つ。アルファードは一般的なミニバンとは異なり、“クラウン的ミニバン”というキャラクターを持つことで、従来のクラウンユーザーも何の抵抗もなく使うことができるようである。

エスティマからアルファードへの乗り替えも

 アルファード人気を支えるもうひとつの動きとしては、「エスティマ」からの代替えである。エスティマはトヨタ店とカローラ店での扱いだったが、2019年に惜しまれつつ生産終了となっている。

 エスティマは1990年の初代デビュー以降、人気ミニバンとして君臨していた。そもそも、対米輸出を主眼に初代が開発されたこともあり、現役子育て世代以外、たとえば、クラウンのような高級感では少々満足できない富裕層や企業経営者なども好んで購入していた。見た目はかなり異なるものの、アルファードとある種“同じ匂い”のするクルマであった。トヨタ店やカローラ店では、生産終了後も大量に抱えるエスティマの既納ユーザーに勧める代替え車不在に頭を抱えていた。全店併売化まではトヨタ店とカローラ店はアルファードを扱っていなかったので、まさに“お手上げ”だったのである。

 しかし、2020年5月以降にアルファードを扱うようになると、「エスティマのお客様の多くが、『待っていました』とばかりにアルファードへのお乗り替えを希望するようになりました」と現場のセールスマンから聞いたことがある。

 もちろん、“アンチアルファード”としてエスティマを購入した人もいるので、全員をアルファードへ乗り替えさせるのはなかなか難しいが、「3列シートで多人数乗車というミニバン特有の利便性はありませんが、ハリアーも扱うようになったので、ハリアーへ乗り替えられるお客様もいますよ」とは現場のセールスマン。

 トヨタの全店併売化による成功事例のひとつが、まさにアルファードの現状での“激売れ”なのである(ハリアーも成功事例といえるだろう)。「それではクラウンは?」となるが、そのあたりの事情については次回に詳述したい。

(文=小林敦志/フリー編集記者)

小林敦志/フリー編集記者

小林敦志/フリー編集記者

1967年北海道生まれ。新車ディーラーのセールスマンを社会人スタートとし、その後新車購入情報誌編集長などを経て2011年よりフリーとなる。

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