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山梨県知事が激白、“歓送迎会”発言の真意、富士急行への県有地賃料値上げ要求の狙い

構成=編集部
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山梨県の長崎幸太郎知事

「政府がやるべきことは、田舎の歓送迎会にいちいち口出しすることではなくて、もっと大きなことに気を配っていただきたい」――。

 仲間内での飲食が新型コロナウイルス感染症拡大の要因と指摘されるなか、山梨県長崎幸太郎知事の発言が物議を醸した。

 事の発端は3月10日の臨時記者会見。長崎知事は会見で「送別会、歓迎会あるいはお花見について、現在山梨は感染状況が収まっているので、ぜひ大いに行っていただきたい」と県民にメッセージを出した。地域経済が疲弊しかねないとの思いから、感染防止対策を徹底した上で行えば問題ないとの認識だ。

 この発言に対し、加藤勝信官房長官は翌11日の記者会見で、政府が2月末に宴会などを控えるよう求める通知を発出したことに触れ、「こうした中身を踏まえた対応を引き続きお願いしたい」と苦言を呈した。長崎知事はすぐさま反応。知事は12日の全国放送の民放番組で「政府がやるべきことは田舎の歓送迎会にいちいち口出しすることではなくて、もっと大きなことに気を配ってもらいたい。そもそも感染防止策の最前線の責任は知事にある。注意をしながらやることは差し支えない。そういう話をするのはどこが悪いんだ」と語気を強めた。

 確かに知事が言っていることはもっともだ。都道府県ごとに感染状況が異なるなか、政府は一律の対応しか行えないなど無策ぶりを発揮している状況に自治体は苛立っている。しかも、山梨県は各飲食店を調査した上で認証を与える独自の制度を導入するなど、きめ細かい感染症対策を実施している。

 一方、東京出身の知事が山梨を「田舎」と形容することについては、「謙虚さが欠けている」(県政界関係者)。「知事職を腰掛け程度にしか思っていなく、いつかは国政に復帰する」(県幹部)との厳しい声があるのも事実だ。

 長崎知事といえば、長年睨み合ってきた自民党山梨県連と手を握り、知事の座を射止めたことでも知られているが、山梨県は現在、その県連のバックにいる富士急行と県有地の賃料をめぐり法廷闘争を展開。富士急行は県有地を別荘地として開発し、県に支払っている賃料は年間約3億円。県はこれを20億円に引き上げることが妥当と主張し、落とし所が見えない状況になっている。県内の金融関係者は「いくらなんでも行き過ぎだ。富士急行の経営が揺らぐ」と困惑する。

 そこで今回、県有地問題に端を発し県議会の自民党会派が3分裂するなど県政が揺れるなか、「歓送迎会は大いに行っていただきたい」発言の真意や山梨県のコロナ対策、富士急行との問題などについて、長崎知事にインタビュー取材を行った。

「超感染症社会」を目指す

――政府が国民に宴会自粛を呼び掛けているなか、長崎知事は3月、「送別会、歓迎会あるいはお花見について、山梨は感染状況が収まっているので、ぜひ大いに行っていただきたい」「政府がやるべきことは田舎の歓送迎会にいちいち口出しすることではない」とご発言されておられます。これが全国的にクローズアップされ、一部で批判を呼んでいますが、このご発言の真意をお聞かせいただけますでしょうか。

長崎知事 山梨は日本での新型コロナの患者発生前から一貫して、コロナ禍にあっても生活と経済活動が持続できるための「超感染症社会」を目指してきました。今回の新型コロナが仮に克服されたとしても、その後も発生が予想できる新しい感染症にさえも耐えうる山梨県という社会はどうあるべきか、そのためにはどのように制度設計すべきか、ということを、すでに最初の緊急事態宣言のときから考え、準備してきました。

 それが、「グリーン・ゾーン構想」です。単なる感染症対策ではなく、これは経済戦略でもあります。ワイドショーが盛んに東京や大阪といった大都市での感染傾向と対策にしぼって報道していた影響からか、これまでの政府の感染症対策は、どうしても大都市での傾向と対策を日本全体に適用するかのような「一律対策」であるように見えます。しかしながら、山梨では、地域の生活事情や経済事情に応じた、山梨という場所に適した「オーダーメード」の感染症対策を進め、そのための制度を構築してきたのです。

 山梨は、そうした地方ならではの、地域ならではの努力を県民一体となって進めてきた、そういう「誇りうる場所」「誇らしい地域」です。大都市ばかりが注目される中で、地道に、県民自身が地域事情に適した感染症対策に務めてきたという意味での「誇るべき田舎」です。都会に対する誇りある場所という「田舎」という表現は決して卑下すべき意味ではありません。むしろ、マンパワーも乏しい、資源も限られている地方でもできることが、都会でできないはずはない、そういう思いもあります。

 実際、東京や神奈川といった首都圏に隣接しながらも、感染者の発生は首都圏ではもっとも遅く、さらに現段階でも幸いに、感染者数が極めて低く抑えられる「感染制御」がきわめて効いた状態を維持できています。

 これは政策全般にも当てはまるかもしれませんが、特に感染症対策にあっては、偶然や国民・県民の我慢といった精神的なものだけに依存していては、遠からず限界を迎えることは自明の理です。それを見越したうえで、社会の「システム」として感染症下にあってもより日常に近い生活空間の確保を実現すべく施策を積み重ねることが必要と考え、メリハリをつけた予算を投入し、第二波、第三波、その先に備えてきたのです。

 山梨県の予算はおよそ5000億円規模で、東京都の8兆円規模にくらべればどれだけ小さく、限られたものかわかります。そうした地方自治体にとっては、予算の活用は、対症療法であったとしてもその先の根治療法に「積みあがっていく」ものという発想をもっていなければ、あらゆる施策や政策の持続と効果は確保できません。

 インフルエンザも同様ですが、人間の社会にあっては、感染症は常に向き合わなければならないものです。この感染症の脅威に対して、社会経済活動の「オンかオフか」といった施策展開も大切な場合はありますが、それだけでは幾度も押し寄せるであろう感染の波に対応できません。それは、あたかも「賽の河原の石積み」のごとしです。社会経済活動を「オフ」にし感染拡大が鎮静化している期間にこそ、次の波に備えた防壁を構築する必要があるのではないでしょうか。山梨県は、その方策として「グリーン・ゾーン構想」を打ち出し、地域社会全体が感染症下にあっても社会経済活動を維持できるような体質をもった社会=「超感染症社会」に「脱皮・進化」する途を選び、これをコツコツと積み重ねてきたのです。

 もちろん、感染症対策は、政府が総司令部となって日本全体で取り組むべき課題です。ただ、日本全体という観点で考えるならばこそ、それぞれの地域事情に照らした視点で「感染制御」を確立すべきだと考えます。また、それこそが、地方自治体に現場の責任と権限を付与した「特別措置法」の趣旨にも適うのではないでしょうか。

 日本全体を一律にとらえてきた従来の発想では、当然、イベントの時期になれば日本全体であれはダメ、これもダメ、というしかない。でも、そうならないための制度を築いてきた山梨県だからこそ、「経済活動、社会活動はゼロにする必要はありませんよ」といえるわけです。

 とはいえもちろん、コロナ禍にあってこれだけは守らなければ、ご自身や周囲の健康に不安が生じるといったこともわかってきています。その最低限のルールや知見は日々更新され、上書きされているわけですから、そこにはあくまでも敏感に、アンテナを最高感度に維持することが行政の責任です。

 こうした観点から、山梨県では、今年4月に山梨県感染症対策センター(Y-CDC)を設立しました。国内外の感染症の専門家の先生に参加頂くグローバルアドバイザリーボードも設置し、県自らが積極的に最新の情報・知見を入手し、地域の感染症対策に活用できるような取組みも進めているのです。そのうえで、感染制御が維持されたなかで社会活動を展開する。この発想がなければ、個人の生活、社会の生活というのはこれから先も、新しい感染症が発生したときに崩壊してしまう。

 現在のコロナ禍が収束する前に、次の脅威的な感染症が世界のどこかで、もうすでに発生しているかもしれません。だからこそ、場当たりではない「超感染症社会」への戦略が求められていたはずなんです。

 富士山という、世界でも著名な観光地を抱える山梨県では、だからこそ、グリーン・ゾーン構想を進めてきたのです。経済と同様に、感染症対策でも、鳥瞰と虫瞰の視点と発想の交流が大事ではないでしょうか。

 世界全体を眺めても、あまりの唐突さに、その対策のすべてを国や政府といった中枢機関に丸投げしてしまいがちですが、地域事情と個別事情から、どう生活環境に合った感染症対策を構築するかという観点を失ってしまうようなことがあってはならないと考えています。そして、山梨県では、地域事情から感染症対策を構築しようと取組んできましたし、その結果として、現在でもなお、首都圏でも圧倒的に感染制御が効いた状態を維持できています

すべての県民資産を活かす

――富士急行は県有地の賃借料として年間約3億円を支払っていますが、県はこれを20億円に引き上げることが妥当と主張し、法廷闘争に発展しています。これについては県議会からも反対の声も上がっていますが、県が値上げを要求している理由・狙いをお聞かせいただけますでしょうか。

長崎知事 県が値上げを要求している、というとらえ方は一面的です。県が当初から求めているのは「適正な賃料の設定」です。そもそも議論の出発点として、「値上げありき」は公有財産のあり方としても、また、法律の趣旨からしても不適切であると考えています。すなわち、地方自治法は県有地も含めた公共財産の貸し出しについて「適正な対価で」ということを明確に定めているのです。

 我々は、この県有地を適切に扱う先に、山梨という地が「山梨で事業をしてみたい、山梨という場所で活躍してみたい」と考えるすべての人々にとって開かれ、そして、「期待に応えられる、可能性に挑戦できる」場所になることができる、そう考えています。

 そのために、県有地のみならず、すべての県民資産を活かすことが必要ですが、その際に一番大切なのは「誰もが納得できる、透明で公正で公平なルール」です。このルールなくしては、事業や投資は成り立ちえません。

「誰もが納得するルール」に現在の県有地の貸付契約も組み込んでいく、その一つが富士急行との間で現在話題となっている山中湖畔県有地であって、富士急行への貸し付けを値上げするため、といったような単純で乱暴な議論ではまったくありません。ましてや値上げありきではありません。

 たとえば、この山中湖畔県有地に関していえば、これまで、どれだけ道路などの公共インフラが税金によって整備され、また、故横内正明知事をはじめとする多くの官民の関係者の努力により富士山世界文化遺産が認められたことを契機に大勢の国内外の観光客が訪れる地になったとしても、賃料の設定は、90年以上にもわたり、「開発前の素地」すなわち、開発前の山林原野の状態を前提とした価格を計算の出発点として算定されて続けてきました。換言すれば、これらの公の努力(時に「血税」の投入)による収益力の増加・価値の増加があったとしても、増加分が県民に賃料という形でダイレクトに還元されることはありませんでした。

 このように90年以上にもわたり開発前の山林原野の状態を基礎として賃料を算出してきたことが、公有財産の借手の営利企業と究極の持ち主である県民との間での利益分配ルールとして、果たして、「誰もが納得できる公平・公正なルール」なのかどうか、ということです。

 まして、過去には副知事が天下り、県の担当者が天下っていた企業だけに、県民や国民の理解を得られるでしょうか。

 たとえば、自治体が駅前に駐輪場を設けたとします。ここで自転車を整理する方を雇用して、頑張ってもらうことにします。この方は一生懸命頑張ってくれて、利用者からも評判もよくて、皆さんに愛される仕事をしてくれている。しかし、その結果、頑張ってくれたからといって、この方が仕事をやめた後、感謝の気持ちとお目こぼしから、この方が駐輪場を長期間無料で利用していた場合、これはやはりすべての県民が納得するとは限りません。もちろん、最初から、そのことが明示・明記された契約ならば別でしょう。こういう条件でこれだけの期間頑張ってくれた方には、その先もこれだけの特典と優遇がありますよ、という雇用条件として最初から明示・明記されていれば、それは「定められたルール」であることになります。

 やはり、皆のもの、公共のものというのは、誰がどう利用するときにも平等に公平に扱われるべきものなのです。

 山中湖畔の県有地で富士急さんが一定の貢献と努力をされてこられたことは否定できませんし、その貢献分については賃料設定においても客観的に「公正に評価」されてしかるべきです。しかし、だからといって、この先も未来永劫に、「開発前の山林原野」を前提として算出した賃料で貸し付け続けることを行政としては、あらかじめの前提とすることはできませんよね。

 しかも、地方自治法は「適正な対価で」と定めている。それであれば、常に行政は、時代の変化のなかで「適正な価格」を算定していかなければならない。それに基づいて契約しなければなりません。貢献しているから、頑張っているのは、富士急さんだけでなく、県内の公共用地で頑張ってくださっているすべての事業者さんや個人も同じです。

 県有地のなかには、住民の方に貸して住居として利用くださっておられる方々もおります。こうした人々も日常の生活を通じて、山梨という地域と土地に、その生活を通じて魅力を創出し、貢献してくださっていると、考えています。

 ルールを明確にして、こういう貢献を積み上げていただいた場合には、たとえば賃料をどれだけの期間、賃料を据え置きますよ、どれだけの一定条件で利用していただくことができますよ、ということもできるでしょう。住宅ローンなどでもそうではないでしょうか。固定金利なのか変動金利なのか、やはり契約の一番初めに条件が定められているからこそ、皆さん、苦しいときも納得して払い続けるわけです。

 残念ながら、これまで山梨にはこの「誰にとっても納得できる公正・公平・透明なルール」が欠如していたのです。

 これは実は、県民自身にとって、事業や投資を呼び込めないといった話以上に切実な不利益だと思います。山梨のあの土地を使いたい、でも、どのような条件でどのようにすれば借りることができるのかわからない、もしかしたら政治家の口添えや有力者のコネがなければなかなか山梨ではうまく事業展開できないのではないか、公共財産を活用できないのではないかと、そんなイメージを持たれてしまえば、山梨全体の活力がそがれて、それこそ起業意欲、投資意欲が減退、後退してしまいかねません。誰でも、一定の条件を満たせば、平等に優遇措置も受けられるし、安心して長期間にわたって腰をすえて投資もできる、事業もできる。それが県民資産の高度化であるべきです。

 可能性が開かれた山梨にすることは、富士急だけでなく、山梨県内で事業を展開するすべての事業者、それは大きな企業だけでなく、これからスタートアップを考えている、個人や企業家の、それこそ、希望、期待、起業マインドという「ドリーム3K」を志す人々に歓迎されるのではないでしょうか。

 山梨にはリニア甲府駅もできます。品川からわずか20分の往来圏になります。中部横断自動車道が全面開通すると、太平洋と日本海側もつながります。両方の海の幸が山梨の山の幸とコラボして、美食王国、グルメやまなしなど、食王国にもなります。富士山登山鉄道によって、世界有数の登山鉄道が世界でもっとも美しい稜線を走り抜けることになります。

 山梨が持つすべての可能性を、意欲のある方すべてに解き放つ。そのために、県民資産創造会議をまもなくスタートさせ、ここでルール作り、県が持つ有形の資産だけでなく、水力発電や水素燃料など、山梨県が持つノウハウといった無形の資産もさらに高度化できるようにする。

 可能性の扉を開く第一歩が県有地の話であるにすぎません。何か、富士急さんとの話だけに焦点が当たっていますが、富士急さんもそうしたルールのなかで一緒にやることで、将来には必ずメリットが生まれると信じています。私は、富士急さんにはそう呼び掛けたい。

「ハイクオリティやまなし」

――長崎知事は05年の衆院選で、郵政民営化に反対していた堀内光雄衆院議員(当時)=富士急行社主=に対する刺客として、自民党公認で山梨2区から出馬され、堀内氏にわずかに及ばず、比例復活を遂げられました。その後も、光雄氏の地盤を継いだ義理の娘である詔子氏と激しい対立を繰り広げ、いまだに県内市町村長選で別々の候補を応援するなど雪解けに至っていないといわれています。そのため、山梨県と富士急行の間で争われている、県有地の賃料値上げをめぐる問題について、地元関係者からは「長崎知事による富士急行への意趣返し」との声も聞かれますが、そうした声につきまして、ご見解をご教示いただけますでしょうか。

長崎知事 そうした指摘を展開するメディアもあることを承知しておりますが、それはむしろ堀内代議士に失礼なのではないかと思います。そもそも、堀内代議士は、選挙区のすべての有権者や住民を代表し、かつ、責任を持つ衆議院議員であり、富士急行株式会社という一企業の代理人ではありません。今回の話は、あくまでも山梨県と富士急行との間のビジネスのありかたについての議論です。

 そこにおいて堀内代議士と私とがかつて選挙区で争ったことをもって、堀内代議士を、富士急行という一営利企業の代理者であるかのように引き合いに出すこと、出されることは、誰よりも堀内さん御本人が不本意に思われているのではないでしょうか。堀内代議士は、政府の高官としても、一営利企業の利益の代弁などではなく、全県民、国民のために汗をかいておられるわけです。

 法律上の扱いをめぐる議論と、選挙の話を結び付けたがる方々がいるとすれば、これはそうした法律上の議論や争点から、私的な怨恨まがいの話に、話をおとしめることで目先をそらそうとしたい意図があるのではないかとさえ感じます。

 今回の話はもともと、県有地の賃料を最初から「値上げする」という結論ありきのものではありません。地方自治法が定める「適正な対価」とは何かという問題です。適正な対価を導きだす過程にあるわけです。その結果が絶対にすべての賃貸契約が値上がりするという結論ありきの議論ではありません。誰の目から見ても公正で平等な、透明なルールにのっとって県民の資産を扱うための最初の一歩です。

 そのうえで、富士急行も含め、あらゆる契約者さんとともに県内が潤い、地域が潤い、頑張ってくださる企業も潤う、そういうトリプル・ウィンな未来、誰も決して損をすることのない未来志向の関係を築いていくことこそが、山梨県知事としての私の狙いです。

 これからの話でいえば、山梨は今年、「美食王国やまなし」を始めます。それは観光にきて宿泊や飲食で地元にお金を落としてもらうという、いままでの観光地の発想ではありません。主と従であれば、これまでは観光に来て、そして何を食べようか、となる。

 でも、「美食王国やまなし」では、あれを食べに山梨に行こう、という逆の楽しみかたです。あれを食べる、これも食べる、そして山梨ではあそこで遊ぶ、ここを巡る。そうした新しい流れのなかで、それこそ富士急ハイランドや県内観光施設の魅力もまた、再発見されることもできるのではないでしょうか。

 大切なことは、「あそこだけ、ここだけ」の個性と魅力を磨くと同時に、「全体の魅力」をいかに底上げし、発信していくかだと考えています。それが、私の考える、あらゆる部分での高付加価値化を追い求める山梨県のあり方、すなわち「ハイクオリティやまなし」です。

 そのなかに富士急さんも当然、県内の魅力の主要なひとつとしてあるわけで、この取り組みを私怨だ、怨恨だの話に貶めようとする人々は、これは富士急さんをも貶めていると、こういうことになってしまいます。

教育・介護基盤整備基金を立ち上げ

――もし富士急行への県有地の賃借料値上げが実現した場合、新しい財源をどのようにされるご予定でしょうか。

長崎知事 すでに昨年から打ち出していますが、教育・介護基盤整備基金を立ち上げました。山梨の未来を担うのは若者、さらには青年、壮年期の脂の乗った世代だと考えています。山梨県では、今年4月から、日本で初めての「25人学級」を小学校1年生から始めたところです。来年には1年生と2年生で実施します。その後についても段階的に学年を拡大していきたいと考えています。

 加えて、数年後をメドに、介護施設への入居待機者をまずは総数においてゼロにしたいと考えています。

 これらは、いずれも、多くの学校の先生や介護に携わる方を必要としますので、当然ながら安定的かつ巨額の「追加財源」を必要とします。これをどう確保するか。私は、県民資産の価値向上にともなう増収分を、この教育と介護に全額投入します。県有地の適正賃料の設定に応じていただいた場合には、県民の誰もが喜ぶ、教育と介護に充てることで、富士急さんの山梨県民に対する御貢献として評価されるべきだと思います。

 県有地を貸し出し、かつ、県とともにその価値向上プログラムに参加して頂くことで、借りている企業も収益を上げ、さらにその利益は県民にも見えるかたちで還元され、このことがまた、富士急さんをはじめとする企業側のプラス評価にもつながっていく好循環をつくる、これこそが望ましいあるべき姿だと思います。

 教育は未来を創る。それは誰にもわかりやすい部分です。同時に、介護もまた未来を創るのです。それは、これまで人生で苦労されてこられた世代の方々をねぎらい、慈しむためという介護の目的を充実させることに加えて、自宅内で介護せざるをえないために、御自身の夢の実現や就労をあきらめざるをえなかった方々、犠牲にせざるをえなかった人々を、自宅介護の負担から救うことになります。それが、御自身や御子様のために時間を割くという「新しい余力」を生むことにつながるはずです。だから、山梨という社会にあっては、教育と介護は、未来に向かう「基礎条件」と、こう私は言い続けています。

 富士急さんだけでなく、県民資産創造というプロセスを経て県民資産を高度活用することで、こうした企業さんにとっても自由で新しい事業展開が可能になりますし、それが県の増収になれば、それは県民の身近なところに活かされて、企業さんによる県民への貢献というかたちになる。企業と県と県民という、オール山梨での好循環が生まれると思います。そこに反対する者や勢力があるとすれば、それは決して県民のことを考えていないということになるのではないでしょうか。

 我田引水がすべての発想は、もう終わりにしなければいけません。この発想でやっている限り、山梨は沈みゆく一方となることは明らかです。富士急さんと一緒に、山梨に新しい時代を拓いていきますよ。

(構成=編集部)

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