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市長室に女性用ガラス張りシャワー室設置の市川市長、私設秘書が逮捕…市の業務に介入か

文=編集部
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市川市長・ 村越祐民氏の後援会事務所(撮影=編集部)

「テスラ公用車」「市長室にガラス張りシャワー室」――独特の政治センスで世間の注目を集めてきた千葉県・市川市の村越祐民市長。その市長の私設秘書が逮捕されたという報道に衝撃が走っている。朝日新聞デジタルが2日、記事『市川市長の私設秘書を逮捕 法務局に虚偽書類提出の疑い』でスクープしたのだ。村越市長は1日の定例会見で、件の「ガラス張りシャワー室」に関し、「撤去せずに災害時に自身と女性職員が利用する」という方針を示し、物議を醸したばかりだった。

 村越市長の周囲で何が起こり、何が問題となっているのか。一連の騒動を振り返るとともに、困惑する関係者の声を聞き、その施策の疑問点を整理した。

前代未聞の再選挙の末に当選

 前出の朝日新聞記事は以下のように報じる。

「千葉県警が、法務局に虚偽の書類を提出したなどとして、自動車レンタル会社社長の押切裕雄容疑者(51)を電磁的公正証書原本不実記録・同供用の疑いで逮捕していたことが捜査関係者への取材でわかった。否認しているという。

 関係者によると、押切容疑者は同県市川市の村越祐民市長の私設秘書」(原文ママ)

 市議会関係者は押切氏の逮捕に声をひそめる。

「先月末、押切容疑者の出入り先でもあった村越市長の後援会事務所にも千葉県警の家宅捜索が入ったようです。かつて市長を推した会派に衝撃が走っているようですね。

 押切氏は市長の下で運転手とか金庫番をしていた。市長の名代として、昨年まで市役所にも出入りしていて市の業務にも介入していました。“押し出し”が強くて職員に恐れられていましたよ。報道にもあるように、もともと立憲民主党の平野博文元官房長官の秘書をしていたことがあり、『平野さんに厳しく鍛えられた』と自慢にしていました。シャワー室の問題に加えて、この件は市長には大きな打撃でしょう。もともと市長選自体が前代未聞の事態でしたし、市政はまた混沌としそうです」

 “前代未聞の事態”というのは2017年11月の市長選のことだ。村越氏を含む5人の立候補者が法定得票数に届かず、18年4月に再選挙となったのだ。

 村越市長は民主党(当時)政権時の野田第3次改造内閣で外務政務官だったことを生かし、陣営は改めて野党共闘を模索。村越市長は無所属新人で再出馬し、立憲民主党、民進党(当時)、共産党、自由党、社民党から推薦を取り付けた。そのうえで、無所属新人で再出馬の元衆院議員田中甲氏(61)、元県議坂下茂樹氏(43)を破り初当選した。市選挙管理委員会の資料によると、投票率は33.97%、次点の田中氏との票差は3212票だった。

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新築された市川市役所第1庁舎。完成後、市長室のシャワーが増設された。(撮影=編集部)

テスラ公用車と市長室のガラス張りシャワー室で全国ニュースに

 そんな村越市長が最初に注目されたのは、2019年7月のこと。環境保護施策として、市長と副市長が使用する公用車2台に関し、米・電気自動車のテスラを導入すると発表したことだった。市長自ら二酸化炭素の排出抑制をPRするという趣旨だったのだが、1台1000万円をくだらないテスラの価格に対して住民や市議会から疑問の声があがった。

「税金の無駄遣い」などと各メディアに取り上げられ批判は激化の一途をたどり、早くも11月には導入を断念。以前通りの国産車を公用車と使うことになった。市関係者は「市長は『政策が逆行した』と憤懣やるかたない雰囲気でした。市内外から批判の声がたくさん寄せられていて、致し方なかったとは思うのですが……」と振り返る。

 一方、同市の自営業男性は次のように当時の心境を語る。

「電気自動車を公用車にするのはいいけれど、テスラである必要性がまったくわからない。あの車、時速300キロくらい出るんでしょう?いったいそんな高速走行でどこに行こうとしていたのか。正直、あまりにも突飛な発想でびっくりしたというのが偽らざる本音です。批判というより、疑問しかなかった」

 しばらくの間、表面上はなにも起らなかったが20年10月、再び村越市長の名前は全国に響き渡ることになった。前出の「市長室のガラス張りのシャワー室」が設置されたのだ。

 市は17年6月から市役所第1庁舎(新庁舎)の建設を開始。20年7月に完成した。鉄骨造地上7階地下1階、延床面積3万480平方メートルの一部吹き抜け構造で、多目的スペースも有する壮大な庁舎だ。

 新庁舎は8月に部分開庁し、業務を開始したのだが、工事はまだ終わっていなかった。“市長や職員が使用するための災害時専用のシャワー室”の設置工事がちょうどそのころ始まっていたのだ。シャワー室はガラス張りで、市長室内のトイレの隅にあり、どうやっても市長室の中央を通らないと入れない配置になっていた。ちなみに同庁舎内には別の場所にシャワー室が3つある。

 なぜ外部から中が見えるガラス張りなのか。また災害時専用のシャワー室を、広大な市庁舎の中からあえて市長室に新設したのか。再び「税金の無駄遣い」との批判やシャワー室の“用途”に関する疑念の声があがり、多くのメディアに取り上げられたのだった。市議会3月定例会では、シャワー室の撤去と、設置・撤去に関わる費用分を市長報酬から減額することを求める決議が可決された。

 市広報室秘書課によると、今年6月1日の定例会見で、村越市長は以下の点を強調したという。

・災害時に市長室を休憩室として開放する

・シャワー室は女性職員が利用するが、専用ではなく、自らも使う。

・必要な施設と考えているので活用する。女性用に開放すれば気を楽にして使ってもらえる

・災害時は災害対策本部や庁舎内の情報集関連部署に詰めるので市長室にはいない。

・普段から市長室は整理しているので情報漏洩などない。

・休憩室として利用するのは、災害が発生し、市職員が2~3日役所に詰めなければならないような緊急事態に限り、仮眠室のように使う。

 そのうえで、同課の担当者は「新庁舎はオープンスペース構造になっていて、そもそも“部屋”が少なく、秘書課と市長室は最もセキュリティの高い場所でもあります。そのため、市長室が女性用休憩室として適しているということです」と補足説明した。

女性職員の親「感情的に受け入れられないものがある」

 一方で、住民からはやはり疑問の声が上がっている。独身の市職員の娘を持つ60代の住民女性は次のように話す。

「公の施設・部屋とは言え、男性上司の執務室で娘がシャワーを浴びるというのは生理的な不安感があります。感情的に受け入れられないというか……変な邪推して大変申し訳ないのですが、女性職員がそういう疑念を抱いたり、不安を感じたりしなくて済むようにしていただくことはできなかったのでしょうか。税金を無駄にせず、公共施設の有効利用という意図はよくわかりますが、シャワーは女子更衣室の近くに作るとか、他にもやりようはあったのではないでしょうか」

 また工事に関し、誰も疑問を挟まなかったのかという疑問も乗じる。もしくは職員側から「女性用休憩室設置の要望」があったのか。元市職員の男性は次のように話す。

市長室のシャワー室の追加工事の件は、現役職員は“あれ?”と思っても口を出せない雰囲気だったようですね。村越市長は良い意味でも悪い意味でも“曲げない人”ですから」

災害時に市長室のガラス張りシャワーは有用なのか

 実際、村越市長の主張する「市長室を臨時の女子休憩室に活用する」「シャワー室を設ける」というプランは有事にどの程度有効なのだろうか。東日本大震災の津波で、町役場が流された岩手県大槌町の建設業男性は語る。

市川市さんの庁舎を拝見する限り、基本的に吹き抜けで構造の庁舎なので、災害時の女性用休憩室のような『部屋』がなかなか確保できないという事情もあるのかな、と思いました。内陸に位置する市川市さんの市役所が大津波で流されることはないかもしれませんが、大災害の時には我が町の役場のように施設そのものが使えなくなる想定外の事態は起こり得るのです。どれほど立派な建物でもリスクはあります。

 最近では東日本大震災時の教訓を生かし、多くの自治体がパーテーションを活用してプライバシーがしっかり守れる女性用スペースを構築する手法を導入しています。体育館でも多目的スペースでも、場所を選ばず設置できます。災害時の職員は住民支援のため各避難所や被害地区を飛び回ることになるので、そういうスペースは機動的に運用できるものの方が良いと思いますよ。

 シャワー室も災害時専用で準備するのであればプラスチックコンテナの可搬式のものの方が、職員のみならず住民用としても活用できますし、避難所間で融通もできます。お湯ではなく水しか出ませんが、使い勝手は良いと思います。なにより外からも中は見えませんしね」

 今年3月30日、村越市長は自身の公式Twitterアカウントに唐突に以下のような投稿をしている。

 メディアスクラムやインターネット上の誹謗中傷が問題視されて久しい。村越市長の言うように、批判する側が“汚れている”という場合もあるのかもしれない。しかし一連の施策や私設秘書の逮捕に関し、“純粋な疑問”が尽きないのは住民だけではないはずだ。

(文=編集部)

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