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コロナ、武漢ウイルス研究所・流出説、世界で再び再燃…米国政府、本格調査に着手

取材・文=相馬勝/ジャーナリスト
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WHOのサイトより

 新型コロナウイルスは中国人民解放軍が生物兵器として開発したもので、それが誤って中国湖北省武漢市内の中国国立の中国科学院武漢ウイルス研究所から漏えいしたとの説が再燃している。米共和党議員らが漏えいの可能性を含む同ウイルスの起源の完全な調査を米政府に求めているほか、ブリンケン米国務長官に対して、漏えい説に関する政府の機密調査報告を公開するよう要求していることが明らかになった。

 これを受けて、バイデン米大統領は5月26日、情報機関に対して、90日以内にウイルスの発生源をめぐる追加調査を命じたほか、トランプ前大統領も5日、南部ノースカロライナ州で開かれた共和党の集会で演説し、新型コロナウイルスについて、「中国共産党は中国ウイルスで16兆ドル(約1750兆円)もの打撃を与えた。あらゆる国は中国にこの損害を補償させる法案作りに協力すべきだ」などと指摘して、中国のウイルス拡大の責任を厳しく追及するなど、新旧の米大統領がそろって中国批判を展開するなど異例の展開となっている。

米国務省の報告書

 米国務省は最近、中国の科学者らが2015年からこれまで、第3次世界大戦に備えて、新型コロナウイルスなどを含むウイルスを生物兵器として開発する研究を進めてきており、こうした生物兵器が戦争で勝利するため重要になるという主張とともに、これを使用するための完璧な条件と、敵国の医療システムに及ぼす影響まで詳細に記録していたとの報告書を作成した。

 報告書によると、中国人民解放軍の科学者らが第1次世界大戦は「化学戦争」、第2次世界大戦は「核戦争」だったが、第3次世界大戦は「生物戦争」になると主張して、中国共産党指導部の指示によって、生物兵器の開発を進めているという。新型コロナウイルスは軍の直轄下に置かれた武漢研究所が総力を挙げて研究開発したものだと指摘している。

 一方、米ウォールストリート・ジャーナルは「武漢研究所の研究員3人が2019年11月、病院で治療が必要となるほど体調を悪化させていた」と報じている。これについて、共和党のジョニ・エルンスト上院議員は、「中国共産党は、新型コロナウイルスの起源の解明について、全面的な協力を拒否している」と批判し、「世界は答えを求めるべきであり、それには武漢ウイルス研究所が起源であるかどうかを明らかにすることも含まれる」と主張。キャシー・マクモリス・ロジャース下院議員らもブリンケン国務長官宛に書簡を送り、国務省が機密文書扱いにしている新型コロナウイルスに関する機密研究調査報告書に関して「機密解除」するよう求めている。

中国は猛反発

 さらに、米国では感染症の最高研究機関である米国立アレルギー・感染症研究所のファウチ所長が英フィナンシャル・タイムズのインタビューに応じて、発生源である動物から人に感染し、武漢のウイルス研究所から流出した可能性が取り沙汰されていると語った。「発生源の解明が進めば、新たなパンデミック(世界的大流行)防止につながるとの期待が出てくる」と指摘するとともに、「2019年に病気になったとされる3人の医療記録が見たい。本当に病気になったのか、もしそうならどんな病気だったのか」と強い関心を示した。

 これら一連の中国疑惑説について、中国外務省の趙立堅副報道局長は「中国科学院武漢ウイルス研究所からの漏洩は不可能だという結論は世界保健機関(WHO)の調査でもはっきりとしている。これが正式で科学的な結論だ」と語り、武漢研究所からのウイルス漏洩を強く否定している。

 しかし、サキ米大統領報道官は「中国が調査に建設的に関わろうとしていないのは明らかだ」と不満を表明。また、WHOの現地調査に加わった各国の研究員らからも「調査は不十分だった」との懸念が出ており、中国が調査に関わろうとしない頑なな態度を崩さないことで、逆に疑惑が強まる結果となっている。バイデン大統領は情報機関の追加調査の期限を「90日以内」としており、8月下旬までに、どのような調査結果が出てくるのかに注目が集まっている。

(取材・文=相馬勝/ジャーナリスト)

相馬勝/ジャーナリスト

相馬勝/ジャーナリスト

1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。

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