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町田・小学校いじめ自殺:隠蔽疑惑報道の元校長、東京都下の教育長に栄転…取材を拒否

文・構成=編集部
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「Getty images」より

 結局、何が起こったのか。「PRESIDENT Online」が15日に公開を開始した連載記事『【告発スクープ】小6女子をいじめ自殺に追い込んだ「一人一台端末」の恐怖』は、現場となった小学校を抱える東京都町田市をはじめ、日本全国に大きな衝撃を与えた。当編集部は、報道はどこまでが事実なのか、いじめの舞台となった小学校の元校長や同市教育委員会の関係者に、当時どのような対応をしていたのかについて改めて取材を試みた。

政府「GIGAスクール構想」中心人物の小学校で起きた惨事

「PRESIDENT」の同連載は次のような書き出しで始まっている。一部引用する。

「子供たちに『一人一台端末』を配る国の『GIGAスクール構想』の被害者が出た。昨年、全国に先駆けて端末を配った東京都町田市のICT推進校で、小6の女の子がいじめを苦に自殺したのだ。配布端末のIDは出席番号、パスワードは全員「123456789」で、なりすまし被害が横行していた。当時の校長は、20年以上前からICTを学校教育に取り入れてきた先駆者で、GIGAスクール構想の旗振り役として知られる人物だった――」

 萩生田光一文部科学相らが強力に推進している学校の一大ICT化事業が「GIGAスクール構想」だ。児童生徒1人に1台ずつ端末を配布し、授業や課外学習、コロナ禍での在宅学習など多様な場面でタブレットを使った教育を行うというもので、今回、女児が亡くなった学校は「町田発未来型教育モデル校」に選定されていた。

 連載では、その立役者である同校校長のA氏の人物像を次のように記している。

「現在のGIGAスクール構想につながる『学校教育の情報化に関する懇談会』(2010年~2013年、座長・安西祐一郎氏)に第一回から参加。ほかにも文科省の『教育の情報化に関する手引』作成委員(2009年)、『学びのイノベーション推進協議会』委員(2011~2014年)を務めるなど、日本のICT教育推進の旗振り役として知られている」

 政府政策に関与するICT教育の第1人者であるA氏だったが、「子供の自主性に任せて、失敗のなかで学ばせる」方針を取ったためか、実際の現場は混乱していたようだ。パスワードが全端末共有で、容易に成りすましが可能であったり、使い方を規制しなかったため、児童らが授業中に配布タブレットで暴力動画の閲覧やゲームを楽しんだりする状況が生まれてしまったという。

 そうした混乱の中で、昨年11月30日、チャットで悪口を書かれた同小6年の女子児童が自ら命を絶ったのだという。ところが、学校はここから不可解な対応を取り始めたようだ。

同級生がショックを受けないよう自殺を隠していたことが裏目に

「PRESIDENT」の第2回連載『「小6女子いじめ自殺」チャットに書かれた誹謗中傷はなぜ消されていたのか』では、亡くなった女子児童の両親が学校側にいじめの調査を依頼した後に直面した事態を詳述している。

 両親は他の子どもたちにショックを与えないように、娘が亡くなったことを他の児童に伝えないようにいじめ調査することを学校に依頼した。ところが学校側の調査結果は、「9月にいじめは解決していた」とのものだった。つまり、女子児童が11月に命を絶ったことと直接関係はないということだ。

 不信を持った両親は校長に「年明けにも自殺を公表してほしい」と依頼したところ、次のように言ったという。

「とんでもない。加害者が後追い自殺する危険性があります。後追い自殺って本当にあるので、公表はできません」

 また連載記事ではA校長が、「いじめ防止対策推進法」にもとづき教育委員会などへ「重大事態」の発生を適切に報告しなかった点などに関しても懸念を示している。

町田市教委「まったく取材もなく、ものすごい分量を書かれた」

 自身が進める「GIGAスクール構想」が絡むだけに、萩生田文科相は14日の閣議後会見で、児童に配布されたタブレットが悪口を書き込むことに使われたことに触れ、「極めて残念」と述べた。これと同時に文科省も異例のスピードで動き、同日、市教委などに事実確認をした上で、いじめ防止対策推進法に基づいて「重大事態」の認定が行われたかどうかを確認するよう直接指導したのだという。

 町田市役所関係者は話す。

「この問題、萩生田文科相の腹心のひとりも対応にあたることになったそうです。もともとA校長は文科省、経産省とのつながりも強いので、文科省は大騒ぎのようです。もはや市レベルの問題では済まない事態になりつつあります」

 ところで、一連の問題の中心人物になっているA校長は今年3月、同校から東京都区内の某自治体の教育委員会の教育長に栄転していた。当編集部は当該自治体の教育委員会に対して、一連の報道の真偽を確認するため取材を申し込んだところ、担当者から次のような応対を受けた。

「私どももこの件は報道で存じていますが、なにぶんA氏の前任地の自治体でのことですので、対応することはできません。今のところ苦情の電話などもありません」。

 一方、町田市教育委員会教育総務課の担当者は次のように語った。

「私どもは、(『PRESIDENT』から)何一つ取材を受けていません。私どもはまったくこの記事に関与していません。この記事についてはコメントを差し控えさせていただきます」(発言ママ、以下同)

 連載記事に対する市教委の感想を求めているわけではなく、「この記事が提示している事実の確認をしたい」と再度取材の趣旨説明をしたのだが、同担当者は以下のように感情的に回答するのみだった。

「まったく取材を受けていない中で、ものすごい分量を書かれてしまった。これに対しては調査中ですのでお答えできません」

「PRESIDENT」が行政への“当て取材”をしないで記事が書いたことが目下の大問題で不快感を示しているような口ぶりだが、市内の小学校で女子児童の命が失われてしまったこと以上に深刻で痛ましいことはないだろう。それとも行政に取材をしていれば、「記事内容が変わる可能性があった」ということなのだろうか。

 仮にもし記事に虚偽の内容があるのなら、そのように説明するべきではないのか。いずれにせよ怒るべきなのは、今回の事態を引き起こした教育行政のあり方であって、マスコミを通じて伝えられた遺族の声ではないはずだ。

(文・構成=編集部)

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