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大崎孝徳「なにが正しいのやら?」

丸亀製麺、海外進出が成功できた理由…10カ国200店超、日本とはまるで別の店

文=大﨑孝徳/神奈川大学経営学部国際経営学科教授
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中国・上海の丸亀製麺の店舗(「Wikipedia」より)

 うどんが食べたいわけではなかったが、丸亀製麺が発売している弁当とはどのようなものか、試してみたくなり購入してみた。実際、食された方も多いだろうが、たとえば、もっとも安い390円の「2種の天ぷらと定番おかずのうどん弁当」では、うどんの上に竹輪と野菜の天ぷらに加え、玉子焼きときんぴらごぼうが載っている。これに冷たい出汁をかけて食べる、いわゆる「ぶっかけうどん」というスタイルである。ボリューム、味ともに申し分なく、今年4月に発売後、1200万食を超える大ヒットとなっている状況も頷ける。

 ちなみに、温かいうどんを好む筆者は、これまで「ぶっかけうどん」を食する機会はなかったが、今後は店内飲食の際もオーダーしてもよいと思っている。このように、うどん弁当は単なるコロナ禍に対する緊急対策という次元を超え、新たなニーズの掘り起こし、価値の提供に見事に成功しているように思われる。

丸亀製麺の海外進出

 街のいたるところで見かけるようになった丸亀製麺の店舗数を改めて調べると、9月末時点で国内844店にまで成長している(トリドールホールディングス月次売上高レポート)。さらに驚くのは、海外10の国と地域に進出し、226店舗を展開していることである。ちなみに進出先は、イギリス、アメリカ、フィリピン、カンボジア、ベトナム、台湾、インドネシア、ロシア、中国、香港となっている。

 筆者が初めて海外で丸亀製麺を目にしたのはハワイだった。ずいぶん昔のことではあるが、メインの通りを歩いていた際、見覚えのある看板が目に入ったことを今でもよく覚えている。メニューを見ると、日本とあまり変わらない内容であったと記憶している。

 しかし、その後、上海のフードコートにある店を通りかかった際は大変驚いた。いかにも辛そうな赤い色をした(もはや出汁とは呼べない)スープのうどんなど、日本の丸亀製麺とはまったく別の店という印象だった。

 また、フィリピンの店の前を通り過ぎようとした際、準備していたスタッフと少し話したこともあった。アルバイトではなく、店長に準じる責任ある立場である彼はインドネシア人で、「店の立ち上げに伴い、赴任してきた」とのこと。日本の丸亀製麺がフィリピンに出店し、インドネシア人が働いている――、グローバルな社会とはこういうことかと大変驚いた記憶が残っている。ちなみに、メニューは上海同様、日本とは大きく異なっていた。また、店はBGCというマニラ近郊の高級エリアの一等地に立地していた。

飲食業の海外進出

 製造業であれば、たとえば日本で良い商品を生産し、輸出すればOKという場合も少なくはない。しかし、飲食業など多くのサービス業においては、現地で店を運営していかなければならない。異国における、立地の確保、店舗の建設、人材の採用・訓練、商品開発、プロモーションなど、どのプロセスも極めて複雑で困難なように思われる。

 たとえば、丸亀製麺は今年7月にイギリスに進出して大きな成功を収めているが、以前、立ち上げようとした際には、出店場所の確保すらできずに断念したという苦い過去があるようだ。今回の進出は、丸亀製麺を運営するトリドールホールディングスが2015年に買収した欧州の飲食チェーン「Wok to Walk」のノウハウ、経験、人材などをうまく活用することにより成功させているとのこと。

 こうした事例を見ると、もちろん、市場の相違に着目した商品の現地への適応化などは大切ではあるものの、とりわけサービス業の海外進出においては現地パートナーとの関係性構築などがより重要となるのかもしれない。
(文=大﨑孝徳/神奈川大学経営学部国際経営学科教授)

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