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マルイも東急ハンズも閉店、遊びに行く埼玉県民が減少?「池袋衰退説」は本当か

文=鶉野珠子/清談社
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池袋駅西口(「Wikipedia」より)

 新宿、渋谷と並び、東京を代表する繁華街のひとつに数えられる「池袋」。そんな池袋では最近、名物施設が続々と閉店している。

 たとえば、今年8月29日には、西口のシンボルといわれ44年も営業してきた池袋マルイが惜しまれながら閉店した。翌月の9月20日にはサンシャイン60通りのセガ池袋GiGOが28年間の営業を終了。10月31日には、サンシャインシティに隣接する東急ハンズ池袋店が37年の歴史に幕を下した。

閉店ラッシュとコロナショックは無関係?

 コロナ禍以降、感染拡大や緊急事態宣言の影響で減収となり、閉店に追い込まれた店舗や商業ビルは数えきれない。しかし、前述した店舗の閉店理由は、ビルの老朽化による建て替えや定期借家契約の満了のため、などと説明されている。

「あくまでも予想ですが、池袋マルイは立地があまり良くなく、人ももともとそこまで入りはよくなかった。店じまいは経営合理化の一環だと思います。池袋の西口は、飲食店は多いですが、サンシャイン60側に大きく広がりのある東口ほどショッピング施設はありませんから、集客は難しかったのではないでしょうか。東急ハンズも、かつての大店舗主義から一変し、近年は『ハンズ ビー』など小回りの効く業態を増やしています。今回、池袋エリアで相次ぐ閉店は、各企業それぞれの経営方針に基づくもの、そしてビルの建て替えやテナント契約満了のタイミングが偶然にも重なってしまった結果なのだと思います」

 そう解説するのは、全国各地の市町村を訪ねる「まち探訪家」の鳴海侑氏。パンデミックは数ある理由のうちのひとつにすぎず、「感染拡大=閉店」と直結するわけではないと分析する。

 しかし、ネット上では池袋のランドマーク的施設の相次ぐ閉店を受け、「池袋は繁華街として衰退している」と指摘する声も少なくない。鳴海氏いわく「認知の問題で衰退はしていない」とのことだが、「認知の問題」とはどういう意味なのだろうか。

「池袋以外の都市でも、経営方針転換や業態自体の陳腐化で閉店する例は増えています。ただ、池袋のマルイやセガは大規模で歴史もあり、かつ閉店の時期が近かったので、特に話題になっただけのこと。『池袋の○○が閉店』というニュースを立て続けに目にしたために、『こんなに次々に店が閉まっていくなんて、池袋って衰退しているのかも』と捉えてしまう人が多くいたのではないでしょうか。閉店跡に何も店舗が入らなければ衰退と言えると思いますが、おそらくは新しくお店が入るでしょう。衰退というよりも『新陳代謝』と言ったほうが正しいと思います」(鳴海氏)

 池袋という街の「新陳代謝」は、コロナ禍以前から進んでいる。コロナショックと撤退のタイミングが重なったために、あたかも感染拡大により閉店する店が多いように見えたというわけだ。

「池袋は埼玉県民が集まる街」が変貌?

 また、池袋というと「埼玉県民が集まる場所」というイメージを持っている人も多いだろう。確かに池袋は、西武池袋線、東武東上線、JR埼京線、JR湘南新宿ライン、東京メトロ有楽町線、東京メトロ副都心線が乗り入れ、埼玉各地からのアクセスがしやすい。1980年代くらいから、池袋は埼玉県在住の若者が遊ぶ街として発展してきた。

 しかし、今、埼玉県民が県境を越えて池袋に訪れる機会が減少しているという。この現象に対しても「衰退している池袋より郊外のほうが魅力的なので、人が流れている」という見方があるが、池袋が衰退していないとなると、なぜ埼玉県民は池袋に行かなくなったのだろうか。

「確かに、埼玉県民が池袋に行く機会は減っていると思います。一方で、埼玉県でも東京に近いエリアは人口が増えているので、来街者はトータルでは変わりません。昔ならば埼玉県内のショッピング施設も少なかったですが、今は越谷レイクタウンをはじめとして、郊外にもショッピングモールが増えてきました。加えて、コロナ禍においては『近場なら感染対策的にも安心』という心理も手伝い、わざわざ池袋まで出る埼玉県民は減ったのかもしれません。

 今後気になるのは、テレワークが続いていくことです。埼玉県から東京に通勤していた人の中には通勤で池袋を通過する人も多く、定期券の圏内である池袋は気軽に立ち寄りやすい場所でした。それが、テレワークが始まって出社の機会が減ると定期券も持たなくなり、池袋へ行くためには交通費がかかるようになった。すると、より安く移動できる県内の繁華街で用事を済ませようと思うはずです。池袋の真価が問われるのは、むしろこれからでしょう」(同)

 コロナ禍が収まっても在宅勤務が続いていけば、客足はこれまで以上に減ってしまうことが予想される。アフターコロナの社会で高い交通費をかけてでも訪れたくなる街にするためには、新陳代謝を起こす必要があるのだ。

「今はどの繁華街でも、駅直結の商業施設が好まれる傾向があります。現在、池袋の駅に直結している商業施設というと、西武や東武といった百貨店がメインで、若者には少し敷居が高い。そのため、サンシャイン60通りを通って、遠くサンシャインシティまで足を延ばす人が多かったのです。しかし、今後駅ナカの施設や地下街に若者向けの敷居が低い店が増えていけば『遠くまで歩かなくてもいいよね』と、駅周辺で用事を済ませるようになり、池袋に行くハードルが少し下がるかもしれません」(同)

豊島区全体のイメージアップ戦略とは

 横浜を例にすると、15年ほど前までは駅からショッピング施設が少し離れており、広範囲を歩き回らないとすべての用事が終わらなかった。しかし、今や駅直結の施設で、買い物、食事、さらには映画などのレジャーまで楽しめる。同様に、池袋も駅を起点にすべてが完結する利便性の高い街に進化していくかもしれない。

「駅周辺がメインになっていくであろう流れは、駅ナカの百貨店内にニトリやユニクロといった量販店が出店してきていることからも感じられます」(同)

 西口やサンシャイン60通りで閉店が相次いでいる一方、駅周辺では、これまでに見かけなかったような店舗が店を構え始めた。街全体で、さまざまな新陳代謝が起きているのだ。

 さらに、新オープンといえば、ここ数年で新たな映画館や劇場が多く誕生していることも見逃せない。サンシャイン通り沿いには大型シネコン「TOHOシネマズ池袋」がオープンし、歌舞伎やミュージカルなど多種多様な演目に対応できる劇場「東京建物Brillia HALL」も登場した。反対側の西口に目を向けると、ドラマの舞台にもなった池袋西口公園が大幅にリニューアルされ、「野外劇場 グローバルリングシアター」が新設された。

「アート・カルチャー分野の発展に力を入れているのは、池袋を含んだ豊島区全体のイメージアップ戦略です。豊島区は2014年に23区内で唯一の『消滅可能性都市』として名前が挙がりました。それを契機に、さまざまな施策を立てており、そのうちのひとつに『豊島区国際アート・カルチャー都市構想』があります。映画館や劇場のオープンはその構想に沿ったものです」(同)

 豊島区の構想も踏まえると、マルイやセガ、東急ハンズの跡地にも、アートやカルチャーが楽しめる施設が入ってくるかもしれない。また、駅ナカの百貨店に進出し始めたような勢いのある量販店が進出する可能性もあるだろう。閉店した店の跡地にはどんなテナントが入り、どんな新陳代謝が起きるのか。池袋の今後に期待が高まる。

(文=鶉野珠子/清談社)

清談社

清談社

せいだんしゃ/紙媒体、WEBメディアの企画、編集、原稿執筆などを手がける編集プロダクション。特徴はオフィスに猫が4匹いること。
株式会社清談社

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