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松本人志、オミクロン株は怖くない発言、上昌広医師「概ね賛成」…間違っている点も

文=編集部、協力=上昌広/血液内科医、医療ガバナンス研究所理事長
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松本人志
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 タレントの松本人志(ダウンタウン)が16日放送の情報番組『ワイドナショー』(フジテレビ系)内で「オミクロンは正直怖いと思っていなくて」と発言し、議論を呼んでいる。

 全国的に新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」への感染者拡大が続くなか、政府は19日、東京など1都12県に「まん延防止等重点措置」を適用することを正式に決定(適用期間は21日~2月13日)。すでに重点措置適用地域である沖縄、山口、広島の3県を含め、16都県に適用されることになる。

 20日には東京都の一日当たりの新規感染者が過去最多となる8638人に上り、都は20日に開いたモニタリング会議で感染状況について4段階で最高位の「大規模な感染拡大が継続している」とするなど、警戒が広まっている。

 そうしたなか、松本は『ワイドナショー』内で次のように発言し、さまざまな意見が寄せられている。

「僕は2カ月近く前に、『オミクロンは正直怖いと思っていなくて、緊急事態宣言になることが怖い』という話をしたと思うんですけど、基本的に変わっていない。悪いシナリオにどんどん行ってしまっているなと思う」

「岸田(文雄首相)さんとか小池(百合子東京都知事)さんも立場がおありですから、緩いことを言えないのはわかるんですけど、正直、高齢の方、基礎疾患がある方、理由があってワクチン打てない方を守ることだけ考えれば、それ以外の人たちは『集団免疫つくる』くらいの気持ちで大丈夫だと思っています」

「(コロナワクチンの3回目接種について)別にこれ、オミクロン用のワクチンじゃないですから。副反応のほうがオミクロンよりきついと思うんですよ。3回目のワクチン打とうって前向きな人って、どれくらいいるのかなって」

 オミクロン株をめぐっては以前から、感染力は高い一方で重症化リスクは高くないという指摘も識者から出ていたが、今回の松本の発言をどうとらえるべきなのか。血液内科医で元東京大学医科学研究所特任教授の特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長、上昌広氏に解説してもらった。

上氏の解説

 松本さんのオミクロン株に対する発言が話題になっている。医学的な観点からみて、部分的には間違いもあるが、私は概ね、彼の意見に賛成だ。

 まずは、「オミクロンは正直怖いと思っていなくて、緊急事態宣言になることが怖い」という発言だ。私も同じ意見である。図1をご覧いただきたい。

松本人志、オミクロン株は怖くない発言、上昌広医師「概ね賛成」…間違っている点もの画像2
図1

 経済協力開発機構(OECD)加盟国38カ国の1月17日の感染者数(人口100万人あたり、1週間平均)を示す。日本の感染者は149人で、ニュージーランド(12人)、韓国(82人)に次いで少ない。もっとも多いイスラエル(4,444人)の30分の1、英(1,447人)、米(2,104人)と比べても、10分の1、14分の1だ。このような国では、日本のような厳格な措置は実施されていない。12月27日に米バイデン大統領は「備えはできている。学校と経済は動かし続ける」と、1月4日に英ジョンソン大統領は「学校と企業活動を継続させ、コロナと共に生きていく方法を見いだす」とそれぞれ発言している。

 なぜ、彼らは冷静でいられるのか。それはオミクロン株の毒性が低いことがわかっているからだ。すでに複数のグループから、オミクロン株の毒性についての研究が報告されている。例えば、12月23日、英保健安全保障庁の研究チームは、英国でのオミクロン株感染者5万6,066人の転帰を分析し、デルタ株と比較し、重症化リスク(入院リスク)は62%低いと報告している。

 このことは、日本でも確認されている。1月18日、国内の新規感染者は3万2,197人と、過去最高を記録した昨年8月20日(2万5,990人)を上回った。ただ、重症者は261人で、8月20日の約7分の1だ。昨夏の病床利用率のピークは8月25日で62%だったが、1月12日現在、16%にすぎない。

 オミクロン株対策を考える上で、規制強化が健康にも悪影響を及ぼすことを忘れてはならない。高齢化が進んだ日本では、その影響は深刻だ。

 コロナ流行下で日本での死亡数は増加している。医療ガバナンス研究所の山下えりかの調査によれば、2017~19年の死亡数と比較し、20、21年の5月は、1.25倍、1.37倍、8月は1.29倍、1.35倍、さらにに21年の1月には1.19倍死亡者数が増えていた。コロナが流行するたびに死亡が増加していることがわかる。この増加は自然変動では説明がつかず、国立感染症研究所は「超過死亡」を認定している。

「超過死亡」はコロナ感染による死亡が増えたためではない。21年1月には過去3年間と比べて、2万4,748人死者が増えているが、この時期にコロナによる死亡が認定されたのは、2,261人にすぎない。コロナの流行時期に合わせて、多数のコロナ関連死が生じていたと考えるのが妥当だ。

 昨年12月24日、スポーツ庁は全国の小学5年生と中学2年生を対象とした21年度の全国体力テストで、男女とも全8種目の合計点の平均値が調査開始以来最低であったと発表した。小中学生の体力がこれだけ落ちるのだから、高齢者の健康が害されるのも宜なるかだ。

 このような状況を総合的に考えれば、松本氏の発言は合理的といっていい。

ワクチンの追加接種は有効

 では、彼の発言で何が問題か。「別にこれ、オミクロン用のワクチンじゃないですから。副反応のほうがオミクロンよりきついと思うんですよ。3回目のワクチン打とうって前向きな人ってどれくらいいるのかなって……」など、ワクチンの追加接種を否定していることだ。

 これは医学的には適切ではない。それは、日本以外のすべての先進国で、オミクロン株流行前に高齢者は追加接種をほぼ終了しているからだ。図2をご覧いただきたい。1月17日現在の追加接種終了率は1.18%。OECD加盟38国中、36カ国が接種率を公表しているが、日本は断トツの最下位である。追加接種なしで、オミクロン株が流行した場合、どの程度、重症化するかはわからない。

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図2

 追加接種を推し進めたイスラエルでの感染拡大を根拠に、その有効性を疑問視する人もいるが、これも短絡的だ。イスラエルで感染が急拡大したのは、今年に入ってからだ。実は、イスラエルは昨年8月末までに、国民の4分の1の追加接種を終えていた。接種から4カ月以上が経ち、効果が低減していた可能性がある。現在の同国の追加接種完了率は53%だから、国民の過半で免疫が低下していたと見なすことも可能だ。

 追加接種の有効性は、実験室レベルでは、すでに証明されている。昨年12月11日、イスラエルのシェバ・メディカルセンターと同国保健省の中央ウイルス学研究所は、追加接種により、オミクロン株への中和活性が100倍高まったと報告している。同様の研究は、昨年12月23日、米マサチューセッツ総合病院の研究グループが、米「セル」誌に報告している。

 今後、オミクロン株に対するワクチンの開発が進むだろうが、まずはイスラエル、そして米国で始まり、日本に入るのは、かなり後だ。現時点では、総合的に判断して既存のワクチンの3回目接種が望ましい。

(文=編集部、協力=上昌広/血液内科医、医療ガバナンス研究所理事長)

●上昌広/特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長

1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の診療・研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(後に先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。2016年3月退職。4月より現職。

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