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高安雄一「指標でみる韓国経済の今」

韓国で一部の物価が高騰している理由…「消費者物価指数」の正しい読み方

文=高安雄一/大東文化大学教授
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「gettyimages」より

 韓国では物価が高まっている。物価を測る指標のうち最も代表的なものが消費者物価指数である。消費者物価指数は、日常の生活で消費者が購入する財やサービスの価格の動きを総合したものであり、消費者が日常購入する食料品、衣料品、電気製品などの財の価格の動きのほか、家賃、電話代、授業料などサービスの価格も反映される。今回は物価を測るための代表的な指標である消費者物価指数について、韓国ではどのように作成されているのか解説したうえで、最近の動きについても説明する。

 消費者物価指数は、複数の財やサービスの動きをひとつの指数にまとめて作成する。複数の財やサービスの価格から総合的な動きを把握する指標は、財やサービスの価格を基準年の価格を100とした指数にして、これを基準年における財やサービスのウェイトで加重平均することで求める。基準年のウェイトで個別の指標を加重平均することでひとつの指標にまとめるやり方は、ラスパイレス方式と呼ばれる。

 消費者物価指数に反映される財やサービスの数は460であり、基準年(現在は2015年)における「家計動向調査」で把握される月平均の消費額が、総消費支出額の1万分の1以上であるものが選定されている。460種類の財やサービスについては、その価格を、標本として選ばれたデパート、大型マート、コンビニ、伝統市場などの全国で2万5000カ所の小売店において、統計庁の調査職員が直接訪問あるいは電話で調査している。調査地域は全国の38都市であり、人口や商圏などが考慮され選定されている。ちなみに、郵便料金、テレビ受信料、金融手数料、行政手数料などは地域に関係なく全国で同じ価格であるので、地域別ではなく一括して価格情報を収集している。

2022年は適温ともいえる物価上昇率

 ここで2021年12月31日に公表された「2021年12月および年間 消費者物価動向」から、韓国の最新の消費者物価指数の動きを見てみよう。

 まず2021年12月の消費者物価指数は前年同月比で3.7%となった。韓国では韓国銀行がインフレターゲット制を導入しており、消費者物価指数の前年同月比で2.5%が目標値となっている。韓国では2021年4月に消費者物価指数の上昇率が2.5%となって以降、一時的に2.5%を下回った月はあったものの、総じて2.5%を超える水準で推移し、10月からは3か月連続で3%を超えた。よって、現在では物価上昇率は高いと判断することができる。

 消費者物価指数を引き上げている品目は、主に農畜産物と石油類である。農畜産物については、農産物が7.8%、畜産物が14.7%高まっている。農産物については、野菜が10.0%高まっているが、なかでも、白菜が55.6%、キュウリが47.4%、カボチャが29.5%、それぞれ上昇している。畜産物については、鶏卵の上昇率が33.2%となったほか、輸入牛肉が22.2%、豚肉が14.7%上昇している。

 石油類についても消費者物価指数を引き上げている。ドバイ産の原油価格が、9月には1バレル72.6ドルと前年同月と比較して74.9%上昇していたが、10月には81.6ドルにまで上昇し100.5%上昇と昨年の同じ月の2倍を超えてしまった。その後、12月には72.8ドルに若干低下したが、原油価格が高水準であることには変わりがない。これを受けて12月には石油類の価格の上昇率が前年同月比で24.6%となった。なかでも、自動車用LPGが36.5%、灯油が32.4%、揮発油が33.4%、軽油が26.6%、揮発油が21.0%、それぞれ上昇した。

 以上のように農畜産物と石油類を中心に物価は上昇しているが、2022年の物価上昇率は少し落ち着いてくるだろう。農畜産物の物価上昇は一時的なものであるし、石油類については原油価格の上昇が頭打ちとなっており、石油類の価格の上昇率は低下することが見込まれるからである。

 ただし農畜産物や石油類以外の品目もじわじわと価格を上げている。農畜産物と石油類を除外した消費者物価指数の前年同月比は、2021年1月には1.2%の上昇と低水準であったが、10月には2.8%となり、12月は若干低下したものの2.7%の上昇となっている。よって2022年の物価上昇率は、2%台半ば程度で推移すると考えられる。韓国の消費者物価上昇率の目標値は2.5%であるので、2022年は適温ともいえる物価上昇率となるのではないだろうか。

(文=高安雄一/大東文化大学教授)

高安雄一/大東文化大学教授

高安雄一/大東文化大学教授

大東文化大学経済学部教授。1966年広島県生まれ。1990年一橋大学商学部卒、2010年九州大学経済学府博士後期課程単位修得満期退学。博士(経済学)。1990年経済企画庁(現内閣府)に入庁。調査局、人事院長期在外研究員(ケルン大学)、在大韓民国日本国大使館一等書記官、国民生活局総務課調査室長、筑波大学システム情報工学研究科准教授などを経て、2013年より現職。著書に『やってみよう景気判断』『隣の国の真実 韓国・北朝鮮篇』など。
大東文化大学経済学部高安雄一プロフィールページ

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