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岡田正彦「歪められた現代医療のエビデンス:正しい健康法はこれだ!」

運動、体重を減らすなら朝、血糖値を低下させるなら夕方が効果的…研究結果

文=岡田正彦/新潟大学名誉教授
運動、体重を減らすなら朝、血糖値を低下させるなら夕方が効果的…研究結の画像1
「gettyimages」より

 運動をしていますか? 健康のために行う運動は、朝がいいのでしょうか、それとも夕方にしたほうがよいのでしょうか。

 米国で興味深い研究が行われ、その答えがわかりました。肥満体BMI25以上)のボランティア88人を募り、4つのグループに分けて、運動をする時間帯と体重減少との関係を調べる実験が行われたのです【注1】。

 運動の時間帯は、1つ目のグループが朝(7:00~11:59)、2つ目は夕方(15:00~17:00)、3つ目は時間を決めずに自由に、そして4つ目のグループは、いっさい運動をしないことにしました。10カ月後、明らかな違いが認められました。体重が一番減っていたのは午前中に運動をした人たちで、夕方に運動をした人たちの体重減少はわずかだったのです。ただし両者の差は、それほど大きなものではなく5パーセントほどでした。

 ところが、なぜか逆の結論を出した研究も多く、夕方のほうが効果的だとしています。それらの研究結果には共通点があり、夕方の運動で減少するのは体重でなく、血糖値のほうだというのです。太っているからといって、必ずしも血糖値が高いわけではありません。痩せていて血糖値が高い人もいれば、逆に太っていながら血糖値が低い人もいます。したがって、研究結果が一致していなくても不思議はないのですが、それにしても、なぜなのでしょうか。

 実験動物のマウスを使った米国での研究から、その答えもわかってきました【注2】。マウスを回転かごに入れ、1時間ほど走らせたあと、解剖して血液、筋肉、肝臓、脳、白色脂肪、褐色脂肪細胞などから数百に及ぶホルモンや体内物質を抽出しました。さらにいくつかの遺伝子も調べるという本格的なものでした。

 ラットは2つのグループに分け、一方は目覚めたあとすぐに運動させ、他方は眠る直前に運動をさせました。比べる相手は、回転かごをロックして、運動できないように飼育したラットです。わかったことのひとつは、時間にかかわらずラットに運動をさせると、数百に及ぶ体内物質が増えたり減ったりすることです。筋肉、肝臓、脂肪組織などの無数ともいえる物質が、互いに連携し合うかのように、いっせいに反応していました。

 さらに詳しく見ると、ラットが目覚めたすぐあとに運動をさせると、脂肪を燃焼させる一連の物質がシステムとして作動していることがわかりました。一方、眠りに入る前に運動をさせると、糖質を燃焼させるように一連の物質が変化していたのです。

 これらは、あくまで実験動物での話です。人間とは、もちろん同じではありませんが、両者で認められた反応が同じだったことから、朝と夕方の運動効果を考えるヒントになっているのではないか、と著者らは考察しています。

目安になるのは脈拍数

 ここまでの話をまとめると以下のようになります。

 ・朝の運動は体重を減らす効果がある

 ・夕方の運動は血糖値を改善する効果がある

 これらの研究結果について、第三者としての意見を求められた米国ミネソタ大学の専門家は、「運動は自分ができるときにするのがベスト」と、答えています【注3】。まさに、そのとおりで、とにかく「健康のために運動をする」という習慣をまず身につけるのが最優先です。

 健康寿命を延ばすことが証明されている唯一の生活習慣が、朝夕にかかわらず日常的に運動することなのです。運動の効果については、すでに膨大な研究が行われていて、以下のことが実証されています。

「健康のための運動は、1回30分程度で週に3回以上、できれば5回行うこと。運動の種目は問わず、ウォーキング、ジョギング、ヨガ、太極拳、水泳など何でも構わない。ただし少しきつめの運動が必要で、その目安になるのは脈拍数」

 具体的には、

・(220-年齢)×0.6

という計算を行い、運動中の脈拍数がこの値になるべく近く、かつ超えないようにするのが、安全で有効な運動の仕方です。たとえば50歳の人なら1分間102回です。脈拍数は、手首内側の親指側に触れて数えます。運動中なら、15秒数えて4倍してもよいでしょう。

 1回当たりの運動時間はなるべく短くし、1週間当たりの回数をなるべく多くすることが、長く続ける秘訣です。
(文=岡田正彦/新潟大学名誉教授)

参考文献
【1】   Willis EA, et al., The effects of exercise session timing on weight loss and components of energy balance: Midwest exercise trial 2. Int J Obesity, July 9, 2019.
【2】   Sato S, et al., Atlas of exercise metabolism reveals time-dependent signatures of metabolic homeostasis. Cell Metab, Feb 1, 2022.
【3】   Reynolds G, Is it better to exercise in the morning or evening? New York Times, Jan 19, 2022.

岡田正彦/新潟大学名誉教授

岡田正彦/新潟大学名誉教授

医学博士。現・水野介護老人保健施設長。1946年京都府に生まれる。1972年新潟大学医学部卒業、1990年より同大学医学部教授。1981年新潟日報文化賞、2001年臨床病理学研究振興基金「小酒井望賞」を受賞。専門は予防医療学、長寿科学。『人はなぜ太るのか-肥満を科学する』(岩波新書)など著書多数。


岡田正彦

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