高血糖は成人病のもと!血糖値を上げない生活習慣と、大切なインシュリンのお話
インシュリンは、すい臓から分泌され、主に血糖値をコントロールするホルモンです。具体的には、食事のあと増える血糖を各細胞に送りこむことで、血糖値を正常にしてくれます。それでも血糖が多い場合、脂肪細胞に合成された脂肪を蓄積するように働くので、食べ過ぎが太る原因のひとつとなるのです。また、肝臓や筋肉で余分な糖からつくられたグリコーゲンを蓄積したりする方向に働きます。
インシュリン抵抗性とは、私たちの身体が正常にインシュリンというホルモンに反応しづらくなる、もしくはしなくなってくることを示しています。メタボリックシンドローム、2型糖尿病など、さまざまな健康を損なう状態と関連していることが知られています。インシュリン抵抗性は、私たちが気づかないうちに成人病の前段階に至っていることを示す状態ともいえます。
これを改善するには、生活習慣を正すこと、つまり適度な運動、低グリセミック指数の食べ物を選択すること、食物繊維を豊富に摂ることを心掛けること、体重を適正に保つことが基本になります。
グリセミック指数とグリセミック負荷
グリセミック指数とは、トロント大学のジェンキンス博士が提唱した指数で、食べた後どれくらい早く血糖値が上昇するかに注目したものです。グリセミック指数の高い値の食べ物ほど、食後の血糖値やインスリンへの影響が大きいといえます。グリセミック指数が高いということは、その食べ物が体内へ取り込まれる際の粒子の大きさに依存しており、加工された食品、長時間調理された食品のほうが、グリセミック指数が高くなる傾向があります。
グリセミック指数は食品と血糖の関係を直感的にわかりやすく示した指数といえますが、実は炭水化物50g分を含むその食品を摂った時の値というただし書きがついており、摂取する量はその食品の炭水化物の含有量によってまちまちです。つまり、炭水化物の含有量が少なければたくさん食べなければならず、炭水化物の含有量の多い食品は少なくてよいということです。
このようにグリセミック指数は、日々の食事で標準的に食品として摂る量ということは考慮されていません。そのため近年、グリセミック負荷という考え方をとることも多いです。グリセミック負荷とは、食品の標準摂取量における炭水化物の量を考慮した値です。血糖値と炭水化物の量(糖質量)の両方を見ているものと考えます。
・グリセミック負荷=(グリセミック指数/100)×食品の標準摂取量当たりの炭水化物含有量(g)
グリセミック負荷を見ることで、食事ごとにどれくらいの炭水化物を摂っているかとともに、血糖値やインシュリンへの影響がどれほどか、ということが認識できるのです。血糖の急激な増加や高血糖の状態を減らすため、炭水化物をある程度制限する(極端な炭水化物制限は健康に弊害があると考えられています)こと、食べる順番を考えること、適度に運動する、よく噛んでゆっくり食べる、などが健康に寄与するという考えとともに、グリセミック負荷という考え方もよく用いられるようになってきています。
(文=飛田砂織/クリニックシュアー銀座院長、医師・医学博士)