和菓子の老舗「船橋屋」は9月28日、代表取締役社長・渡辺雅司氏から辞任の申し出があったと発表した。さらに、同社は「受理する方針」とし、一両日中にも退任する見込みだ。
渡辺社長の辞任申し出に先立って船橋屋は27日、「弊社代表取締役社長の交通事故に関するインターネット上での書き込みについて」と題するリリースを出し、「ご指摘を受けております通り、事故並びに現場での対応は概ね事実であり、弊社としても到底容認できるものではないと考えており、事故のお相手の方には深くお詫び申し上げます」と謝罪していた。
このリリースで言及している「交通事故」とは、渡辺社長が東京・半蔵門付近で赤信号を無視しての交差点内に侵入し、接触事故を起こしたものだ。その際、渡辺社長が被害者に対して激しく罵るなど恫喝した挙句、相手のクルマのドアを蹴るなどの行為におよび、そのドライブレコーダー映像がネット上で拡散された。すると、ネット上では船橋屋に対する批判の声があふれかえったが同社は1カ月、沈黙を貫いた。
リリースにおいて「事故並びに現場での対応は概ね事実」と発表されているものの、具体的な言及がなく、渡辺社長本人のコメントもないことから、炎上が鎮火する兆しは見えず、渡辺社長に関するリークも続々とネット上で告発される事態になっている。その真偽のほどは不確かであるため、Business Journal編集部は船橋屋に直接、質問を投げた。
――「事故並びに現場での対応は概ね事実」と表記されていますが、具体的にはどのような内容と把握していらっしゃるのでしょうか。
「2022年8月24日、半蔵門周辺にて赤信号に気づかず直進して方向転換したところ、右側から合流した車と接触しました。
事故発生直後、お相手の車に接触されたと思い激高し、動画のような行為に至ったとのことでございます。動画はお相手の方のドライブレコーダーの映像です。渡辺が100%過失を認めて示談・和解が成立しております。
尚、渡辺は、事故当日は管轄の警察署の現場検証を受け、その指示に従っておりますが、一部でご指摘のあるような別の事情聴取は受けておらず、現時点では被害届が出されたとの話も警察からは聞いていないとのことです。その点はご承知おき下さいませ。また、渡辺からは、お相手の方に誠心誠意の謝罪をし、示談が成立しております」
――この事故に関して、渡辺社長ご本人による会見等は行われないのでしょうか。また、事故後、社員たちの前でも釈明されていないとの情報もありますが、事実でしょうか。
「現段階で謝罪会見は予定しておりません。渡辺からは辞任の申し出がございましたのでホームページに掲載しております」
――事故動画がTwitter上で拡散された後、情報が拡散されないようにSEO業者等に依頼していたとの情報がありますが、事実でしょうか。
「広報として把握しておりません」
――事故が公になって以降、現社員・元社員とする方々から多くの情報が寄せられています。
(1) 社長は普段からパワハラまがいの言動が多く、社員を数多く恫喝して退職に追い込んでいるとの声があります。
(2) 業務中の事故で入院している社員をクビにして提訴されたことがあるとの情報があります。
(3) 亀戸天神の藤の花の開花を遅らせるために氷を撒いて、かえって花が咲かなくなったことがあるとの情報があります。
これらは事実でしょうか。
「3件の回答につきましては事情調査中です」
船橋屋は創業200年を超える和菓子の老舗で、くず餅などがテレビでたびたび紹介される。東京都内の百貨店などに出店し、ファンも多い。また、かつては数名の新卒採用募集に対して1万7000名が殺到するほどの人気企業となった。
だが、最近では離職率が高まっているとの情報もある。自らの過失で事故を起こしながら、被害者を恫喝するような社長のもとでは、仕事のモチベーションを保ちづらいと悲痛な声を上げる従業員に同情するしかない。
(文=Business Journal編集部)