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宝塚歌劇団ブランド失墜、トップスターが凄惨イジメ、文春報道…不祥事生む組織体質

文=編集部、協力=片田珠美/精神科医
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宝塚大劇場
宝塚大劇場(「Wikipedia」より

 11日発売の「週刊文春」(文藝春秋)記事は、宝塚歌劇団の宙組トップスター・真風涼帆(まかぜすずほ)が、宙組トップ娘役だった星風まどか(現花組トップ娘役)に侮蔑的な言葉を浴びせるなど陰湿なイジメを行っていたと報じた。宝塚歌劇団をめぐっては昨年12月発売の「文春」記事で、演出家・原田諒氏がトップスターや演出助手だった女性スタッフらにハラスメント行為を行っていたと報じられ、原田氏が退団するという出来事が起きたばかりだったが、たて続けに不祥事が発覚する宝塚歌劇団の内部で今、何が起こっているのだろうか――。

 一昨年の2021年に創立100周年を迎えた宝塚歌劇団は、「タカラジェンヌ」と呼ばれる劇団員が全員女性で、彼女たちが男役・女役を務め、花組・月組・雪組・星組・宙組の計5組と専科で構成されることが大きな特徴。歴代のトップスター、トップ娘役からは大地真央、黒木瞳、天海祐希、真矢ミキをはじめ今も第一線で活躍する女優が数多く生まれるなど、芸能界の貴重な人材育成機関としての顔も持つ。

「組それぞれカラーや特徴があり、公演も組ごとで行われる。たとえば宙組は真風涼帆のスタイルに象徴されるとおり、ステージでは長身のトップスターをはじめ男役たちがスリムなスーツを着こなす姿が印象的。また、月組は『芝居の月組』といわれ、女優の大地真央、黒木瞳、涼風真世、天海祐希、真琴つばさ、紫吹淳らを輩出してきた。ちなみに黒木はトップスターではなくトップ娘役だったが、トップスターとトップ娘役のコンビ内には厳しい上下関係があり、年次も基本的にはトップスターのほうが上。それが影響しているのかどうかは定かではないが、退団後に人気女優として息長く活躍するOGにはトップスター経験者が多い印象。

 また、団員は5年目までは宝塚歌劇団の正社員という扱いで、給料やボーナス、退職金も支払われるというのは日本の劇団では珍しく、これも大きな特徴といえる」(宝塚歌劇団に詳しい週刊誌記者)

トップスターとトップ娘役の関係性

 その宝塚歌劇団には今、試練が訪れている。今月に入り、関係者から新型コロナウイルス感染者が出た影響ですでに花組、星組、宙組の公演が中止に追い込まれるという不運に見舞われるなか、前述のとおり内部の不祥事がたて続けに発覚し、宝塚ブランドが失墜しかねない事態に陥っているのだ。

「劇場の最寄り駅である宝塚駅では、先輩が乗ろうとする電車に後輩は乗らずに『お見送り』をしたり、宝塚線の線路沿いでは先輩が乗っていると思われる電車が通るだけで後輩が立ち止まって礼をしたり、宝塚音楽学校では上級生と下級生が班をつくって校舎の隅々まで完璧に掃除をするといった『鉄の掟』が有名だが、今ではそうしたルールはかなり緩和されている模様。それでも上下関係が厳しいのは確かだが、トップスターとトップ娘役の関係性というのは、コンビによってまちまち。

 トップスターは相手役のトップ娘役の指導係の役割も担うので、基本的には明確な上下関係が存在するが、大地真央と黒木瞳のように熱い師弟愛で結ばれているケースや、特に最近では友だち関係に近かいケース、逆に真風と星風のように険悪なケースもあると聞く。トップスターの性格や考え方による部分が大きいが、歌劇団に所属するタカラジェンヌは総勢で約400人おり、各組のトップスターはおおむね3~5年で交代していくので、一概に『こう』というのはいえない。もっとも、真風の例はかなりレアといえるだろう。稽古中などに大勢の劇団員やスタッフがいる前でトップスターがトップ娘役を叱るというのは珍しくはないが、真風のように容姿を批判したり演技ができないと言い出すような凄惨なイジメは聞いたことがない」(同)

渦巻く嫉妬

 そんな団員・スタッフたちが鉄壁の絆で結ばれているかにみえる宝塚歌劇団で、なぜイジメやハラスメントが起きているのだろうか。『自己正当化という病』の著者で精神科医の片田珠美氏はいう。

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「宝塚もそうですが、一般に閉鎖的な空間ほど不祥事が起きやすいのです。しかも、私自身も中学生の頃に『ベルばら』ブームを経験した影響で、宝塚に憧れていましたが、このように憧憬や羨望の対象になっている組織では、理不尽な仕打ちを受けても告発をためらう傾向が強くなります。なぜかといえば、その組織に入ることができ、所属していること自体にブランド価値がありますので、自分が排除されることへの恐怖ゆえに、声を上げにくいからです。

 ですから、最近宝塚の不祥事が『文春』によって立て続けに報じられていますが、必ずしもここ数年でとくに増えたというわけではないと思います。以前から同様の不祥事はあったものの、誰も声を上げることができなかっただけではないでしょうか。

 しかも、宝塚は『女の園』で同性の集まりですから、どうしても嫉妬が渦巻きやすくなります。おまけに、男役トップスター、あるいはトップ娘役の座を目指してしのぎを削る世界なので、嫉妬の炎が燃え上がるのは当然でしょう。上級生が、自分の立場を脅かしかねない下級生に嫉妬を抱き、陰湿ないじめを繰り返すことがあったとしても不思議ではありません。

 今回の報道で引っかかるのは、男役トップスターの真風涼帆さんが自分の相手役だったトップ娘役の星風まどかさんをいじめていたという点です。真風さんは男役で、星風さんは娘役ですから、普通に考えると星風さんが真風さんの立場を脅かす存在とはいえません。第一、真風さんは175センチと高身長のうえ端正な顔立ちであり、圧倒的な人気を誇っていますから、嫉妬する必要などないように思います。もっとも、それでも生まれてしまうのが嫉妬の怖いところで、星風さんの若さや歌唱力に嫉妬したのかもしれません。

 もう1つ考えられるのは、真風さんが同じようないじめを過去に受けていた可能性です。真風さんは、星風さんを幹部部屋に呼び出し、反省するよう1時間の正座を命じたと『文春』で報じられましたが、真風さん自身も同様の仕打ちを上級生から受けたことがあったのかもしれません。宝塚には『軍隊並み』と称されるほど厳しい上下関係があり、上級生の言葉は絶対ということですから、真風さんが同じように正座させられたことがあった可能性は十分考えられます。

 こういう場合、『自分も上級生からされたのだから、同じことを下級生にしてもいい』と自己正当化しやすくなります。また、『攻撃者との同一視』というメカニズムが働くことも少なくありません。

 これは、自分の胸中に不安や恐怖、怒りや無力感などをかき立てた人物の攻撃を模倣し、自身が攻撃者の立場に立つことによって、屈辱的な体験を乗り越えようとする防衛メカニズムです。フロイトの娘、アンナ・フロイトが見出しました。

 このメカニズムは、さまざまな場面で働きます。たとえば、学校の運動部で『鍛えるため』という名目で先輩からいじめに近い過酷なしごきを受けた人が、自分が先輩の立場になったとたん、今度は後輩に同じことを繰り返します。同様のことは職場でも起こります。お局様から陰湿な嫌がらせを受けた女性社員が、今度は女性の新入社員に同様の嫌がらせをするようになるわけです。 

 この『攻撃者との同一視』が宝塚では起きやすいように見えます。しかも、『舞台を素晴らしいものにするため』という口実があれば、正当化されやすいでしょう。ですから、同様の不祥事は実はいくらでもあり、今後も声を上げる人がいれば、表に出てくるのではないでしょうか」

 ちなみに当サイトは今回、複数の宝塚歌劇団元関係者や日頃からメディアを通じて宝塚に関する情報を発信している人々に取材を申し込んだが、軒並み拒否されてしまった。

「全国紙をはじめ主要メディア各社には宝塚の担当記者がいるほど、メディアとのつながりは深い。日本中に数多くの熱心な宝塚ファンがおり、宝塚はメディアにとっても強力なコンテンツの一つと化していることから友好な関係を築いている。さらに、宝塚関連の書籍や雑誌の特集なども多く、宝塚の元関係者であったり強いパイプを持っていたりすれば、それだけでいろいろな仕事につながるという人もおり、意外にも宝塚批判というのはタブー視されている面がある」(前出・週刊誌記者)

(文=編集部、協力=片田珠美/精神科医)

片田珠美/精神科医

片田珠美/精神科医

広島県生まれ。精神科医。大阪大学医学部卒業。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。人間・環境学博士(京都大学)。フランス政府給費留学生としてパリ第8大学精神分析学部でラカン派の精神分析を学ぶ。DEA(専門研究課程修了証書)取得。パリ第8大学博士課程中退。京都大学非常勤講師(2003年度~2016年度)。精神科医として臨床に携わり、臨床経験にもとづいて、犯罪心理や心の病の構造を分析。社会問題にも目を向け、社会の根底に潜む構造的な問題を精神分析学的視点から分析。

Twitter:@tamamineko

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