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日本の生産人口減少問題、カギは歯?口腔環境の改善で健康寿命が劇的に延びる?

文=林晋哉/歯科医師:外部執筆者
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日本の生産人口減少問題、カギは歯?
「Getty Images」より

 今回は拙著『歯・口・咀嚼の健康医学』(さくら舎)をもとに、日本の未来についてお話しさせていただきます。

日本の生産人口減少問題、カギは歯?口腔環境の改善で健康寿命が劇的に延びる?の画像2 現在、日本の出生率は減少の一途をたどっており、すでに未曽有の高齢化社会に突入しています。また、日本の人口ピラミッド図(総務省統計局・2021年10月1日現在)を見れば、この傾向はますます顕著となり、生産人口は明らかに減少していくことがわかっています。

 つまり近い将来、日本の国体を維持するための人とお金が明らかに不足していくことを示しており、2040年には高齢者のさらなる増加と生産人口の減少が同時に起こるとされています(2040年問題)。

 この動向は、すでにサービス業のみならず、さまざまな職種において深刻な人手不足を招いていることからもわかります。これを根本的に解消するためには、出生率が上がらなければなりませんが、現実的に難しいのが現状です。

 そこで実際に効果的なのは、外国労働者の受け入れを大幅増やすことでしょう。しかし、日本の風土や文化的風潮、また最近の円安傾向からみると速やかな受け入れはとても望めそうにありませんし、それができていればここまでの人手不足とはなっていないでしょう。

 結局は、国自体の衰退・衰弱を受け入れていかなければならないのが、日本の将来像です。

日本のコスト削減

 このように日本という国は、減っていく人口のまま国体を維持、またはバランス良く縮小しなければならないことになります。しかしながら、一度できた国体規模を縮小することは容易ではありませんし、現実的にできたとしても微々たるレベルでの縮小でしかないでしょう。

 では、生産人口の減少及びそれに伴う税収の減少に対して為すべきことは、コストの削減です。今、日本の国体運営の大きなコストとなっているものの一つが国民医療費です。

 国家予算は一般会計と特別会計の2つを合わせたものですが、重複分を除く国家予算としての純計が2019年、2020年ともに約240兆円となっています。その内、国民医療費は2019年で約44.4兆円、2020年で約43兆円です。

 このように、国民医療費は国家予算の約5分の1を占めるほど大きなものですから、これを削減することこそが、人口減少の続く日本が生き延びるために必須な事項となるのは明らかです。

 なかでも、国民医療費の高齢者に対する医療費の割合は約6割、約26兆円以上に上っており、もしこれが半減すれば一気に10兆円規模のコスト削減となりますし、さらに国民医療費の高齢者以外の年代においても2割でも削減できる術があれば、合わせて20兆円規模のコスト削減となります。

 しかし、この削減は単に医療費の自己負担を増やして達成されるものではあってはなりません。健康状態を長く維持することで、病気そのものにかからず、医療機関への受診が減ることによるものであれば、国・国民双方にとってこれほど良いことはありません。

生産人口の延命

 元来、“死ぬまで元気”が万人の願いだと思います。現在、日本の平均寿命は女性では90歳に届こうというところまで延びています。しかし、寿命が尽きる前の約10年間は「不健康期間」といわれ、程度の差はありますが介護なしの自立した生活ができない期間です。当然、そうなれば働くことはできません。そして、残念ながらいくら平均寿命は延びても、この期間は縮まっていないのが現状です。

 従って、この不健康期間を縮め、年をとっても長く働けることが、生産人口と税収の減少に対応する一番効果的な施策であり、また国民にとっても非常に良いことです。

 では、何歳まで働けばいいのでしょうか。

 現在の健康寿命は、男性72.68歳、女性75.38歳となっています(第16回健康日本21<第二次>推進専門委員会資料13-1健康寿命の令和元年値について「健康寿命の推移」)。もちろん長ければ長いほど良いのでしょうが、この値から考えれば、80歳前後まで働くことが当たり前の社会が実現すれば、国民医療費は激減し、生産人口と税収は維持されていくのではないでしょうか。

 元気に長く働けるような健康状態を維持するにはどうすればいいのでしょうか。

 それは、不健康期間を出来るだけ短くすることにほかなりません。もっと言えば、不健康にならない逞しい身体を持つことです。

 不健康期間は、身体が脆弱化するフレイルに陥ることから始まるといえます。このフレイルは口腔機能の低下が第一の指標となることから、全身のフレイルと区別して「オーラル(口腔)フレイル」という分野を設け、口を衰えさせない取り組みもすでに始まっています。

 この取り組みにより、寝たきりだった方が歩いて行動できるようになり要介護4→2まで下がった例があります。また、ベッドに寝たきりにさせず、車いすを使ってでもベッドを離れるようにすると、一日4時間の離床で嚥下機能(物を飲み込む力)の維持につながり、また6時間以上の離床で全身の筋肉量が保たれるということが報告されています。

 このように色々な方法を用いて、まずは口腔機能低下症に陥らないようにすることが健康寿命を延ばすための必須の第一歩だということです。

 しかし、不健康期間に一度足を踏み入れれば、自律した日常生活はできるように回復しても、働ける社会生活まで回復するのは難しいでしょう。

 従って、健康寿命の延長による生産人口の確保を真摯に求めるのであれば、わずかでも口腔機能を低下させないよう、普段から「口の健康」を維持する取り組みを国策として行う必要があります。

(文=林晋哉/歯科医師:外部執筆者)

林晋哉/歯科医師:外部執筆者

林晋哉/歯科医師:外部執筆者

1962年東京生まれ、88年日本大学歯学部卒業、勤務医を経て94年林歯科を開業(歯科医療研究センターを併設)、2014年千代田区平河町に診療所を移転。「自分が受けたい歯科治療」を追求し実践しています。著書は『いい歯医者 悪い歯医者』(講談社+α文庫)、『子どもの歯並びと噛み合わせはこうして育てる』(祥伝社)、『歯医者の言いなりになるな! 正しい歯科治療とインプラントの危険性』(新書判) 、『歯科医は今日も、やりたい放題』(三五館)、『入れ歯になった歯医者が語る「体験的入れ歯論」: -あなたもいつか歯を失う』(パブフル)など多数。

林歯科HP:http://www.exajp.com/hayashi/

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