「ロレックス」を専門に扱う東京・銀座の高級腕時計店「クォーク銀座888店」で起きた強盗事件。逮捕された容疑者4人が全員、10代であることから、もし店舗側が少年らに対し損賠賠償を求めて訴訟を起こした場合、実行犯の親に億単位の賠償負担が降りかかる可能性があるとの指摘もなされている。未成年者が犯罪を犯した場合に「加害者家族」におよぶ甚大な影響について、専門家に聞いた。
犯行は8日、まだ日が落ち切らず明るい午後6時過ぎ、多くの人が行き交う都心の繁華街・銀座で行われた。仮面をつけた犯行グループが高級腕時計店に押し入り、店員を刃物で脅し、ガラスのショーケースを破壊。70点あまり、約2億5000万円相当とされる腕時計を奪い車で逃走したが、その後、車を乗り捨て赤坂のマンションに侵入したところを追跡してきた警視庁の捜査員に取り押さえられ、逮捕された。
昨年から各地で相次いでいた広域強盗事件では、「ルフィ」などと名乗る指示役とみられる渡邉優樹容疑者ら4人が逮捕され、いったんは事件は収束をみせていた。だが、東京都内では今年に入り、上野・渋谷・池袋など繁華街の貴金属店や高級腕時計店を狙った強盗事件がたて続けに発生。一連の事件で逮捕された容疑者には10~20代の若者が多く、こうした実行犯たちが犯行におよぶきっかけとなったとされるのが、広域強盗事件と同様に「闇バイト」だ。InstagramなどのSNS上で高額な日給で募集されているアルバイトに、その仕事内容を十分に理解せずに応募し、蓋を開けてみれば仕事の内容が強盗だったという例が後を絶たない。
「数年前に頻発していた特殊詐欺では、若者がフィリピンなど海外リゾート地での高額な日給を謳うアルバイト募集に応募し、渡航してみたら実は特殊詐欺で電話をかける『かけ子』の仕事だったという例もあった。海外で指示役グループから監禁状態にされ、逃げることもできずに脅されて犯罪を手を染めざるを得ない状況に追い込まれる。今都内で多発している強盗事件の実行犯たちも闇バイトで集められたとされ、指示役から脅され、その恐怖から事の重大さを理解できないまま犯行に及んでいる可能性もある。今回逮捕された4人は警視庁の取り調べに対して、指示役に関する情報は黙秘している様子とのことなので、指示役の素性をバラすことによる報復に強い恐怖を抱いているのでは」(全国紙記者)
未成年を監督していなかった場合は損害賠償責任
今回逮捕された容疑者は、
・16歳:無職
・18歳:高校3年生
・19歳:職業不詳
・19歳:アルバイト
と全員が10代。そのため、もし被害に遭った腕時計店が実行犯に損害賠償を求めて提訴し、裁判で賠償が命じられた場合、その負担は親が背負うことになるのだろうか。また、高額におよぶ賠償の支払い能力がない場合は、どうなるのか。山岸純法律事務所代表の山岸純弁護士はいう。
「今日の朝のワイドショーでも取り上げられていましたが、『ちょっと強盗』などとファッショナブルに取り上げるから、バカが後を絶たないわけです。
さて、誰が損害賠償を追うかですが、民法改正により18歳が成人とされたので、3人は民事上の責任を負います。また、『16歳:無職』についても、『自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったとき』、すなわち『自分が悪いことをやっていると理解していないとき』ではない限り、この未成年も当然に民事上の責任を負います。
とはいえ、最高裁の判例などでは、未成年自身が責任を負う場合でも、親がしっかりこの未成年を監督していなかったような場合は、損害賠償責任を負います。なお、親に財産がない場合は払えませんが、親の勤め先の給与を差し押さえたり、実家が持ち家なら競売を申し立てたり、財産の在りかを強制的に説明させる法的手続などもありますので、それこそ“追い込む”ことはできるでしょう」
(文=Business Journal編集部/協力=山岸純弁護士/山岸純法律事務所代表)