日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収計画が、頓挫しかねない事態に陥った。トランプ次期米大統領がSNSに「完全に反対する。このような取引を阻止する」と投稿。計画を審査中の対米外国投資委員会(CFIUS)が年内にも判断を下すとみられていたが、トランプ氏は審査結果にかかわらず計画を認めない公算が大きい。日鉄は「剣が峰」に立たされた。
「USスチールを支え、成長させ、米国産業界ならびに米国国内のサプライチェーン(供給網)を強靱(きょうじん)化し、米国の国家安全保障を強化するものだ」。日鉄はトランプ氏の投稿を受けて3日に談話を発表。改めて買収計画の意義を訴え、総額27億ドル(約4050億円)以上の投資と技術提供、雇用維持の約束を果たす決意も示した。
買収計画は政治問題化したが、双方の経営陣は承認済みで、日鉄は手続き完了に向け、「必要なのはCFIUSと独禁法審査の承認だけだ」(森高弘副会長)との認識を示してきた。米大統領選の後は買収計画に反対する全米鉄鋼労組(USW)の影響力が弱まるとの目算もあり、バイデン政権下で計画が承認されれば、年内に買収を完了させるシナリオを描いていた。
11月下旬、石破茂首相がバイデン米大統領に買収計画の承認を求める書簡を送ったと報じられた際も、日鉄は「追い風になるはずだ。ありがたい」(幹部)と歓迎した。しかし、トランプ氏が買収阻止を表明したことで、今後は次善の策を用意する必要に迫られそうだ。
◇日本製鉄のUSスチール買収を巡る経緯
2023年12月 日本製鉄、USスチール買収で合意
全米鉄鋼労組(USW)が反対表明
米政府高官が対米外国投資委員会(CFIUS)での審査表明
24年 1月 トランプ前米大統領が買収を「即座に阻止」と表明
3月 日鉄の森高弘副社長、USW会長と初会談
4月 USスチール臨時株主総会で日鉄による買収承認
9月 ハリス米副大統領も日鉄による買収反対表明
森副会長が米政府高官と会談
日鉄、USスチール従業員に書簡送付。買収計画審査を再申請
11月 米大統領選でトランプ氏勝利
森副会長が訪米し、USスチール従業員らと面会
12月 トランプ次期米大統領、SNSで買収阻止を表明
(注)肩書は当時
(了)
(記事提供元=時事通信社)
(2024/12/03-19:31)