シャープのアキレス腱は液晶の1本足打法にある。堺工場の稼働率を高めるには、鴻海の外販力に頼るしかない。鴻海との交渉が難航し、提携先を次々に模索しているが、主導権は常に、相手に握られている。中小型液晶の生産拠点の亀山第2工場の稼働率を高めなければ、経営が破綻すると、足元を見透かされているのだ。鴻海に亀山第2工場に資本参加させるくらいの英断が欲しい。
■パナソニック
三洋電機の買収をはじめ、もろもろの施策が失敗だったことを率直に認めることだ。苦しい作業だが、過去の過ちを一つひとつ見直していかなければならない。
携帯電話事業では、02年に旧松下通信工業を完全子会社化して、松下本体と一体化を進めた。05年に海外事業からいったん撤退した。その後、スマートフォンが主流になるという変化を捉え、今年4月に再び欧州市場に参入したが、米アップル・韓国サムスン電子という2強に太刀打ちできず、今回、再び撤退する。国内生産も止める。腰がまったく定まっていない。4月に再参入して、10月末には撤退する。まったく展望がない。
携帯電話も電池も、それぞれ1000億円単位の巨費を使い完全子会社にした。将来の成長を期待したわけだが、経済環境の変化や競合他社の追い上げもあって次第に競争力を失った。家電とは異なる運営が求められたのに、それができる人がいなかった。敗戦の原因は経営陣の判断力と腕力が不足していたことに尽きる。
12年4~9月期に携帯電話と民生用リチウムイオン電池、太陽電池で2378億円にのぼるノレン代の減損処理をした。津賀社長は「投資判断の誤り、環境変化に対応できなかった」と率直に認めた。早期退職に伴う一時金など301億円の費用も計上し、年間の構造改革費用は4400億円になる。これも驚きなのだが、当初の見込みは410億円。10倍になったわけだ。
特に重要なのは、新たな成長分野と位置付けてきた電池事業がかんばしくないことだ。電気自動車(EV)は普及せず、パソコン向けのリチウムイオン電池は韓国勢に負けて赤字に転落した。電池事業が本格的に離陸するかどうか不透明である。
かつてパナソニックの顔だったテレビなどデジタル家電事業に対して津賀社長はあえて、「失われた20年」という言葉を使った。競争力が低下したデジタル家電事業は、当面、徹底的にスリム化すればいい。さて、次の4番バッターはというと見当たらない。4番バッターだけではない、切り込み隊長の1番バッターも、クリンナップを打つ3番、4番、5番の主要バッターが不在なのだ。撃つ弾がなければ戦争はできない。
パナソニックは事業会社としては最大規模の9300億円の社債を発行している(子会社を含む)。2年連続して巨額の赤字を計上するため社債市場で「パナソニック・ショックが起きた」。株式市場だけでなく社債市場でも「パナ・ショック」が起きたわけだ。金融市場に対するパナソニックの経営陣の責任は重い。米系格付け会社、S&Pはパナソニックの長期会社格付けを「シングルAマイナス」から2段階下げて「トリプルB」にした。資金調達する際の金利に影響が出る。ゼロ金利の時代なのにコストの高い資金を使わなければならなくなる。