「gumiに続いてグノシーが上場直後に業績下方修正する事態になれば、野村の信用が失墜することは避けられない」(アナリスト)
最初のハードルは、公開価格をいくらに設定するかだった。上場に際し350万株の公募を実施し、想定価格は1株1520円。「当初より3割程度、公開価格を下げた」(市場筋)といわれているが、市場からはそれでも高いと見なされた。野村としては、初値が公開価格を割る事態だけは絶対に避けなければならなかった。
上場当日の朝、野村はグノシーについて「これまで投下してきた広告宣伝費以上に売り上げが伸び、限界利益(変動費を除いた営業利益)が上昇する」とする紹介リポートを配信。15年5月期の営業利益は、会社側予想を上回る7000万円、来期営業利益は20億円、再来期は39億6000万円と驚異的な成長を予想したのだ。こうした野村の動きに対して市場関係者の間からは、「体のよい株価操作との疑惑を持たれても仕方ない」(アナリスト)という批判も出ている。
このレポートの効果もあってか、グノシーの初値は公開価格と同値の1520円を付け、直後から買いが集まり、終値は1620円。連休明けの5月7日には、一時上場来高値の2140円をつけた。終値は1803円。値動きは荒く、1744円まで下げた。
グノシーは上場で調達した48億円の資金を、テレビCMなどの広告宣伝費として17年5月期までに使い切る考えだ。3~5年以内に5000万人のユーザーの獲得を目指すが、果たしてグノシーは、野村が描く急成長をたどることができるのか。
金融庁が主幹事証券会社へ実態調査の可能性も
ここ最近、「上場ゴール」という言葉がよく聞かれる。上場ゴールとは、文字通り企業の創業者やベンチャーキャピタルが上場すること自体を目的として、将来性があるような業績予想数字を出して初値を高く吊り上げ、株式公開時点で莫大な利益を得ることをいう。上場後はおしなべて株価は急落し、高値づかみした個人投資家が損をする。
民主党の大久保勉・参議院議員は金融庁に対し、新規上場5銘柄に関して主幹事証券会社の審査体制などの実態調査を要請する意向だと報じられている。要請の対象として挙げているのは、gumi、ジャパンディスプレイ(共に東証1部)、OATアグリオ(東証2部)、ANAP(ジャスダック)、フルッタフルッタ(東証マザーズ)。調査が実施されれば、今後予定されている数多くの企業の上場に大きな影響を与える可能性も高い。
(文=編集部)