シャープ、その本当の危機 孕む暴走の芽 恐らく再建は難しいといえる3つの異常点
シャープが苦しんでいる。
2011年度(12年3月期)3760億円、12年度(13年同期)5453億円と2期連続の営業赤字、営業キャッシュフローも1433億円、811億円と赤字が続いた。マイナスの営業キャッシュフローは商売をすればするほど現金が減っていくということを意味する。危機感を覚えた経営陣は、大胆なリストラを実施した。とりわけ12年度のリストラはすさまじく、総資産は5264億円減少し、自己資本比率は24%から6%へと一気に低下した。
このリストラの効果はてきめんだった。翌13年度は予想営業利益800億円に対して1085億円の黒字。経営陣はこれで存続の危機から脱出したと判断したのであろう。続く14年度(15年3月期)の営業利益を500億円と予想した。
ところが、5月14日に公表された決算短信によれば、14年度の売上高は前年度比4.8%減の2兆7862億円、営業利益は480億円の赤字に転落した。販売価格の値崩れと在庫の評価損が足を引っ張ったのである。これは、とりもなおさず製品の価格競争力のなさを意味している。さらに、経常利益は965億円の赤字、当期純利益は2223億円の赤字と逆戻りした。主な理由は、主力液晶工場である亀山工場(三重)に対する1000億円の減損によるものである。社運をかけた液晶事業が、将来価値を生み出さないと判断したのである。
驚くべき事は赤字金額の大きさではない。業績がこれほどまでに悪化していたのに、最高責任者である社長、そしてお目付役としてメインバンク2行から派遣された取締役が、決算直前まで知らなかったという事実である。
「シャープが15年3月期に2期ぶりに赤字に転落することが明らかになったのは14年12月27日だ。毎週土曜日に開かれる恒例の経営会議に財務部門から報告された。2人の橋本【筆者注:メインバンクから派遣された取締役】には『青天のへきれき』。社長の高橋ですら『本当に赤字なのか』と肩を落としていた」(5月19日付日本経済新聞)
こうした事態を引き起こした原因は、経営トップからの責任追及を恐れるあまり、事業部が偽りの報告をしていたからだった、という。しかし、損益とキャッシュフローは会社の死活にかかわる最重要経営情報であるから、経営トップ自らが能動的に情報を収集すべきである。そうでなければマネジメントはできない。そのために企業は巨額の費用をかけて経営情報システム、特に管理会計システムを整備しているのである。ところが、シャープでは異常事態を迅速に察知し、経営者に警告を発するべき管理会計システムが、まったく機能していなかったのである。
3つの異常点
シャープの14年度の決算短信から容易に読み取れる異常点は3つある。