数多くの大企業のコンサルティングを手掛ける一方、どんなに複雑で難しいビジネス課題も、メカニズムを分解し単純化して説明できる特殊能力を生かして、「日経トレンディネット」の連載など、幅広いメディアで活動する鈴木貴博氏。そんな鈴木氏が、話題のニュースやトレンドなどの“仕組み”を、わかりやすく解説します。
世の中には、「夏限定」「冬限定」といった季節ビジネスがたくさんある。たとえが少々古いが、ほかのアーティストと違って主に夏に活動するTUBEなどは、その典型だろう。
季節限定のビジネスは、シーズン中の需要は大きいが、オフになると一気に収入が少なくなるのが難点だ。夏に海の家を経営し、それで1年分の収益を上げることができれば、冬は遊んで暮らすこともできるだろう。しかし、季節限定ビジネスを行っている多くの事業者は、シーズンオフに副業をしなければ、生活が成り立たないのが現状だ。
今回は、そういった点を上手に乗り越えるためのビジネスモデルの話をしたい。
カナダのバンクーバーの北に、国際的なリゾート地・ウィスラーがある。日本では、1980年代のスキーブームの時に冬の海外旅行先として人気だった、北米最大級のスキーリゾートだ。
世界最長のギネス記録を持つゴンドラに乗って山頂付近に行くと、6月上旬までは雪が残っており、スノーボードを楽しむことができる。冬のスポーツは、その時期で終わりになってしまうが、今のウィスラーは夏のレジャーでも多くの観光客を集めることに成功している。
実際、初夏のウィスラーを訪れると、アクティビティのメニューが多いことに驚かされる。冬スキーを楽しむ高低差のある山々は、夏には絶好のトレッキングポイントになる。このエリアには獰猛なハイイログマではなく、おとなしいブラックベアというツキノワグマの近隣種が多くみられ、熊を間近で観察するツアーも人気だ。
雪解け水で水量が増えた川でラフティングを楽しみ、近隣に点在する湖ではカヌーを楽しむことができる。リゾートの周囲にはいくつかのゴルフコースが作られていて、ゴルファーたちも大自然の中でのプレーを楽しんでいる。
夏はマウンテンバイクを楽しむ観光客
しかし、夏のウィスラーで一番多くのスポーツ人口を集めているのは、なんといってもスキー場を利用したマウンテンバイクだ。日本では、ウィスラーを見習って発展している北海道のニセコでも導入が始まっているようだが、スキー場利用のマウンテンバイクのダウンヒルとしては、ウィスラーは世界有数の集客に成功しているのだ。