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そのため、偶然というより必然なのだろうが、冬にスキーをコーチしている人たちは、夏はマウンテンバイクのコーチとして商売をしている。彼らに話を聞くと、「地球温暖化のおかげで、年々スキーシーズンが短くなっているが、昔と違って夏の間もずっとウィスラーでコーチの仕事ができるようになった」と喜んでいる。
そして、ウィスラー全村でみれば、かつては冬場だけ毎日5万人の観光客を集め、夏場はそれよりずっと少ない観光客が集まる場所だったところが、現在では通年で同じくらいの数の観光客でにぎわうリゾート地へと発展している。
つまり、マウンテンバイクを導入したことで、一般的な冬のリゾート地よりワンランク上の集客力を身につけ、二毛作という大きなビジネスチャンスが生まれたことになるわけだ。
とはいえ、これと同じことを日本で始めようとしたら、スポーツとしての競技人口の少なさが、ビジネスとしてはボトルネックになるだろう。逆にいえば、スキー人口の減少に悩むリゾート地がマウンテンバイクで村おこしをしようとしたら、ほかのスキー場に先駆けて大々的に始めることで、先行者利益(ファースト・ムーバーズ・アドバンテージ)を狙いにいく必要があるということだ。
最後に、ブラックな話をひとつ紹介しておこう。二毛作のおかげで、冬より夏のほうがはるかににぎわうようになった場所がウィスラーのビレッジにある。それは、麓にあるメディカルセンターで、スキー客よりはるかに多いマウンテンバイクの客がけがで運び込まれているそうだ。
(文=鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役)
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