メルペイは「他社にない強みがある」と宣伝しているが、両刃の剣となるリスクもある。メルカリ上でモノを売っておカネを得たユーザーは、そのおカネを使ってメルカリで買い物をする自己完結型だった。メルペイの登場によって、メルカリ以外の実店舗で決済ができるようになると、メルカリの中に落ちるカネが相対的に減る。そのため、“ドル箱”の国内メルカリ事業の売り上げが停滞するのでは、との懸念がある。
メルペイは、全国135万カ所で利用できる。先行するLINEペイは昨年末時点で133万カ所。利用店舗数の遅れを一気に取り戻すことができたのは、三井住友カードと組み全国90万カ所あるNTTドコモの非接触サービスiDに対応したからだ。メルペイはサービス開始から3月末までの63日間で登録者数が100万人を突破したという。19年中には200万カ所で利用できるようにするため、JCBやKDDIとも提携した。
LINEペイやペイペイは、中小店舗向けの手数料をゼロにして“ファミリーづくり”を優先させるが、メルペイは手数料を一律1.5%に設定した。さらに、4月からは残高がなくても5万円を上限にお金を使える後払いサービスを始めた。
時価総額は上場初日から半減
メルカリは6月19日、IPO(新規上場)から1年の節目を迎えた。上場1年目の最終取引(6月18日)の終値は2982円で、公開価格(3000円)を下回った。
この1年を振り返ってみよう。
人気先行で上場初日(18年6月)に6000円をつけたが、その後は下げ続け、18年12月26日には上場来安値の1704円を記録した。19年に入ってからは反転し、5月31日の終値は3200円。ようやく公開価格(3000円)を回復した。それ以降の株価は公開価格を挟んだ推移が続いている。
上場初日につけた時価総額は8000億円だが、6月18日は4000億円余。上場初日の半分強の水準にとどまる。
共同創業者の山田進太郎会長兼CEO(最高経営責任者)は「短期の収益性ではなく中長期の成長を見据えている」としているが、昨年9月末の上場来初の株主総会でも「黒字化の時期はいつか」との厳しい質問が飛んだ。
初の株主総会の時点でメルカリは、設立してからまだ5年半。先行投資が必要なのはわかるが、上場を機に新たに株主になった人々は、「早期の黒字化→株価の上昇」というシナリオを描く。市場は米国市場とメルペイで早く成果を出すよう求めている。
(文=編集部)