栗田は説明会で破たん理由について、本社社屋など担保にできるものをすべて売却したために、新たな融資を得られずに資金繰りが行き詰ったと説明していたようだ。
また、別の業界関係者も今回の再生スキームについて疑問を投げかける。
「栗田の民事再生の裏には、小学館、集英社、講談社の大手出版社3社が関与しているとみられている。栗田のスポンサー候補として出版共同流通の名が挙がっているが、この大手3社が同社に資金を出すというかたちを取るのではないか。3社は栗田支援の雰囲気を業界につくり上げようとしている。破たん当日には、トーハンや紀伊國屋書店に3社が自ら出向いて、状況を説明したと聞いています。こうした一部の大手出版社だけが裏で栗田支援の枠組みを決めていることが、返品問題も伴って他の出版社の不信をあおっている」
出版社離れ加速
さらに、ある取次関係者は言う。
「栗田は債権者説明会で、事態は最小限の混乱にとどめたといっていたが、現実には出版社は返品問題もあり、栗田への出荷を止めたり、返品を逆走したりしている。それも相当な数です。取次会社と関係を持つ一部の倉庫会社が、出版社に出荷の依頼をするなど栗田支援を働きかけ始めているが、こうした動きが出るのも、栗田帳合(栗田から商品を仕入れる書店)への商品供給が滞っているからだ。現に、栗田帳合の書店は、トーハンとダブル帳合の店が多いので、トーハンに書店が駆け込んでいるとも聞く。さらに日販のトラックが、栗田帳合の書店に荷物を運んでいるとも聞こえてきます。7月7日には大阪屋から改めて出版社へ出荷を求める通知が出されるほど、事態は深刻だ。このまま迷走を続けるならば、栗田の再建は危ういだろう」
さまざまな意見が飛び交っている最中だが、結局どれをとっても出版社に多重の苦しみを与える栗田再建策。その手法をトリッキーと評する出版社もいたが、このスキームを前提にした再建策は1歩目から躓いた。
ある出版社の営業幹部は、今後の成り行きを冷静に見据えている。
「栗田の再建にはある程度の金額がかかる。だが、実は半年後に大阪屋に統合されることになっているので、今の栗田とわざわざ取引を継続する必要はない。あえて火中の栗を拾う必要はないのです。いずれ、栗田帳合の書店も大阪屋帳合となる。商品が滞るならば、書店側も他の取次に帳合を変更すればいい。少なくとも私はいまの栗田と取引するつもりはありません」