市場や電機業界内では、東芝は半導体部門を分社化するとの見方が強まっている。原子力発電所関連事業を中心としたインフラ企業として存続し、他事業を手放すという観測だ。
東芝にとって半導体事業は、まさに屋台骨だ。昨年9月には三重県四日市市でNAND型フラッシュメモリ製造工場の新棟が稼働。不適切会計が明るみに出る前に公表した2015年3月期連結決算予想では、同事業を中心とする電子デバイス部門の営業利益は2260億円と、全社営業利益の約7割に達する。一般的には「東芝=原発企業」というイメージが強いが、市場筋の間では「半導体の会社」という認識も強い。
なかでも東芝のNAND型フラッシュメモリは競争力が高い。生産改善とウエハ上の回路線幅を細くして記憶容量を高める「微細化」技術と生産合理化で、世界を牽引。全量を国内で生産しながら、08年秋のリーマンショック以降の円高環境下でも韓国サムスン電子と世界首位をめぐりつばぜり合いを演じ続けた。
16年3月期は、半導体事業の存在感はさらに高まるはずだった。スマートフォンなどに搭載されるNAND型フラッシュメモリが堅調さを維持していることに加え、赤字に苦しんできたシステムLSIもようやく黒字化が見えてきていたからだ。こうした中、露見した不適切会計により、いくら屋台骨とはいえ半導体の事業計画の修正は免れないだろう。
最大の懸念は、財務状態の悪化によって半導体事業への投資負担が重くなることだろう。「今後も半導体関連事業で、毎年2000億円規模の設備投資を継続的に行っていく」と田中久雄前社長は語っていたが、半導体、特にメモリ産業は巨額投資が必要な産業だ。工場を新設すれば最低でも5000億円前後は要する。
そうしたなかで、競合の裏をかいて投資を行い一気に増産体制を敷いて供給量を増やすビジネスモデルだけに、博打の側面が強い。財務基盤が厚くなければ事業存続が難しい。
「いくら微細化で先行しているとはいえ、最新式の製造装置や量産装置など、現状の投資規模は世界首位を争うには絶対必要」(電機セクタの証券アナリスト)
米国企業や経産省の動き
では、財務の悪化を背景に、一部で報じられているように半導体の分社化や売却は始まるのか。