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しかし日本ではいまだ「熟成」について公式の定義はなく、味噌や醤油の熟成と勘違いしてしまったのか、時として鼻の曲がるような「臭い」肉を出されることもある。また、せっかくピーター・ルーガーやウルフギャングを研究したにもかかわらず、どこかピントの外れたステーキに堕してしまうケースも見られる。いくら熟成のフォーマットだけを真似しても、「どういうステーキを焼きたいのか」という確たるイメージがなければ、絵に描いた餅でしかない。要は、美味しくない。
こと肉食に関して西洋人は日本人よりもはるかに長い歴史とこだわりを持ち、日本の業界が学ぶべき点は多い。「霜降り」を尊ぶ日本の肉食文化は、決して優劣を付けるわけではないが、少なくとも世界的に見て独特だったのは疑いない。本質的な問題に目を向けなければ、かつての「屋台村」や「もつ鍋」と同じく一時的なブームで終わってしまいかねない。
とはいえ近年、赤身肉は着実にファンを増やしつつあり、例えば赤坂「ヴァッカロッサ」のように「土佐のあか牛」を薪で焼き上げて唸らせる店も登場している。
日本人はそもそも器用な上、世界に冠たる「日本食」を築き上げてきた国民である。20年の東京オリンピックまであと5年。「肉を食べないと食事をした気がしない」という西洋人観光客は多いであろうが、彼らが心底うまいと思うようなステーキが出せたら痛快ではないか。
(文=横川潤/文教大学准教授、食評論家)
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