証券業界関係者からは、「一度崩れた相場はどうしてももろくなりがちで、秋に向けて不安定な動きが続くのではないか」という指摘がある。過去の経験則から見ても、暴落は秋に発生しやすい傾向があり、気になるところだ。
一方で、荒れる相場を歓迎する投資家もいる。デイトレーダーに代表される、プロはだしの個人投資家たちだ。株式の運用額が億を超える首都圏の投資家は、「中国発の暴落は、これで終わりにはならない。今後、もっと大きいものが起きるはずだ」と予測し、「大暴落直後の急反発を狙う」と腕を撫している。
こうした個人投資家の間で人気が高いのは、東京電力の株だ。
同社は、2011年3月に発生した東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故により、存続の危機に瀕した。企業評価の即物的な指標である株価も、それを反映し、事故の翌年には“ゾンビ企業”の水準といわれる120円にまで暴落している。「解体すべき」との極論すらあった当時の空気を考えれば、無理もないといったところだろう。
しかし、存続の危機が薄らぎ、リストラも一巡し、さらに株式市場自体が好転した13年に入ると、一転して反発を始めた。そして、今年に入ると株価は震災後の高値を抜き、4ケタ目前の水準まで買われたのだ。
あらためて東電株の推移を見ると、ハイリターンを好む個人投資家の支持を集めているのもうなずける。年間の変化率(年初来高値÷年初来安値)が高いからだ。株価の本格的な回復が始まった13年は4.6倍、今年もすでに2.1倍になっている。
ちなみに、代表的な値がさ株(1単元当たりの株価の水準が高い銘柄)であるファーストリテイリングの今年の変化率は1.5倍、トヨタ自動車は1.3倍にとどまっており、「株式投資=投機」と割り切る投資家にとって、東電株はうってつけの銘柄といえる。
もはや、巨大な“仕手株”と呼んでも過言ではない東電株だが、今後の見通しを立てるのは難しい。終結からほど遠い原発事故の賠償や施設の処理のために業績は流動的であり、配当はおろかブランドイメージの復元は困難を極めている。