100万カ所から毎日3億件のデータが送信されてくる。そのデータは、加算だけではない。返品があれば減算データとして送られてくる。しかも、消費者からの問い合わせに答える必要があるので、その履歴は消費者に還付された後も保存しておかなければならない。
消費者は、正しく還付されたかどうかを確認したいということで、インターネット経由でセンターにアクセスすれば、少なくとも1年間の購入履歴を提示しなければならない。例えば、還付時期に1000万人の消費者が一斉にセンターにアクセスして購入履歴を照会したらどうなるのだろう。もちろん還付時期だけではない。消費者は、限度額に達したかどうか、センターに届いている情報が正しいかどうかを確認したくなる。常時、消費者からアクセスされることも想定しておかなければならない。
100万件以上の事業者と1億2000万人の消費者を相手にするシステムが簡易なわけがない。なんのシステム構築もしないで「簡易なシステムで費用も少ない」とどうして言えるのか。財務省案の提案責任者が、あまりにも根拠のない発言をすること自体、財務省案がいかに虚構の産物であるかという証である。
財務省は、軽減税率を潰したい
レジや事業者、消費者にとって財務省案の問題点はまだまだあるが、これだけでも事業者は財務省案をやりたくないだろう。ほかにも、想定対応費用や還付上限が4000~5000円では少なすぎるといった根本的な問題があるが、いずれにしても、財務省案が採用される可能性は極めて低いだろう。
実は、それを一番よくわかっているのが財務省であり国税庁だ。幹部は知らないかもしれないが、担当者はよく理解している。彼らは、財務省案が無謀であることを百も承知で出してきている。
では、なぜ出してきたのかというと「軽減税率を潰したい」からだ。財務省や自民党は、「軽減税率を実行するのは、マイナンバーカードシステムしかない。それがダメなら、軽減税率をやめて一律10%にするしかない」と言っているのだ。その証拠に、公明党幹部は「(軽減税率を)やるか、やらないか、どっちかだ。党内がだめと言うなら、軽減税率そのものが暗礁に乗り上げても仕方ない」(9月11日付朝日新聞)と語っている。公明党は、まさに財務省の術中にはまっている。