流通業(小売店や飲食店等)が最も避けたいことは、客(消費者)との接点での「煩雑さ、複雑さ、トラブル」である。その接点のほとんどが、金銭の受け渡し時(レジ等の支払い時)なのだ。ところが、マイナンバーカード利用案では、レジでのこのトリプルパンチが計り知れないほど流通業に大きな負担を与えることになる。
煩雑さがレジ待ち時間を長くする
レジで、客がマイナンバーカードを財布から出し、スキャナーに当てる行為は、簡単で時間もかからないように見えるが、意外と手間がかかる。駐車場から出る時に駐車料金が無料であっても駐車券をどこからか取り出し、読み取り機械に入れて遮断バーが上がるまでと同じようなものだ。
しかも今のレジでは、ポイントカードやクレジットカードなどのカードを読み取ることが多い。そこに、マイナンバーカードが1枚増えることになる。財布からマイナンバーカードを出すという作業は、そんなに簡単なことではない。
もちろん、レジ待ちの間に事前にカードを出して用意する人もいるが、大事なカードだから自分の番が回ってくるまでは財布の中に入れておきたいという人もいるだろう。レジの支払い時になって探す人も出てくる。複数枚のカードを取り出さなければならないので、誤ってカードを落とす人も出てくる。レジの時に探す人が10人のうち1人、マイナンバーに限らずなんらかのカードを落とす人が100人のうち1人いれば、そこで数秒間はレジ待ち時間が長くなる。数秒間で済まないこともある。
スキャンすることも意外と煩雑で複雑
客側がマイナンバーカードをスキャンする場合は、慣れない人だとスキャンしたかどうかがわかりづらく、何度もスキャンする人が出てくるだろう。客にスキャンさせるのは、店側も客にとっても時間がかかるので良い方法とはいえない。
では、店側がスキャンすれば簡単かというと、それでも結構時間がかかる。店側がスキャンする場合は、客からカードを受け取り、スキャンして客にカードを返すという行為をしなければならない。受け取りに1秒、スキャンに1秒、返却に1秒かかれば、それだけで3秒かかることになる。今までのレジ時間に、最低でもプラス3秒上乗せされることになる。
大切なカードだから、客が財布に収めるのも慎重になる。そこにクレジットカードなども利用すれば、カードを1枚ずつ財布から出し、1枚ずつ戻す行為は、さらに時間がかかる。客がカードを落とすようなことがあれば、拾う行為の時間もかかる。